「あんな怖い思いをしたのは初めてです。もう2度と米国には行きたくありません。もっとも、行きたくても行けませんが……」

 と、こわばった表情で “恐怖体験” を語るのは都内に住むエステティシャンのA子さん。褐色の肌に堀の深い美しい顔立ちは、スペイン系フィリピン人の母と日本人の父から受け継いだものだ。

 冒頭の “恐怖体験” は、昨年6月に米ニューヨークの空港で起きた出来事だった。A子さんが続ける。

「コロナ禍で、私がもともと働いていたエステ店が休業してしまいました。そこで私はエステふうの風俗店で働いていたんです。

 そんななか、その風俗店を紹介してくれたスカウトから『いい稼ぎ場所があるよ』と誘われたんです。それが、米国への “出稼ぎ風俗” でした。

 当時米国は、入国前の3日以内におこなったPCR検査の陰性証明書と、海外渡航用のワクチン接種証明書があれば入国は可能でした。海外にも行きたかったし、挑戦してみようとしたんです」

 海外への “出稼ぎ風俗” とは、その名のとおり、海外の風俗店に一時的に所属し、お金をもらうというもの。

「数日から数カ月のあいだ、海外の風俗店に在籍します。あらかじめ定められた出勤日数や勤務時間をクリアすると、お客ごとに得られる取り分とは別に、“保証” と呼ばれるまとまったお金も得られます」(風俗業界関係者)

 A子さんが誘われたのは、ニューヨークのすぐ隣、東海岸に位置するニュージャジー州のアトランティックシティだったという。アトランティックシティといえば、ラスベガスに次ぐ規模のカジノ都市だが、そこにある娼館が “職場” になる予定だった。

「とある一軒家にママがいて、ほかに数人の日本人が働いているということでした。料金は60分で300ドル(約4万円)程度。チップもあるから、毎日2000ドルは稼げるという説明でした」(A子さん)

 だが、A子さんの “出稼ぎ” は水際で止められてしまった。

「強制送還されてしまったんです。入国審査で私の順番になった途端に、私の審査ブースが閉鎖になりました。オフィスに行けと言われ、そのまま別室に連れていかれ、ほかの人たちと一緒に審査を待ちました。

 職員のなかには、FBIという文字が書かれたジャンパーを着ている人が数人いました。オフィスにいたのは20人くらいで、日本人は私だけ。入国管理局の職員は、私に対して米国に滞在する理由を何度も訪ね、『観光です』と言ってもまったく聞き入れてくれませんでした。

 実際、到着した当日だけは本当にホテルに宿泊する予定でしたし、そのホテル名も告げました。でも、翌日以降はどうするつもりなのかと聞かれ、友人の家に泊まると言うと、『それは嘘だ。あなたは売春目的で米国に来た』とハッキリ言われました」

 何枚かの書類にサインさせられ、そのまま国外退去を宣告されたA子さんは、当日に日本に向かう飛行機のチケットが取れなかったため、留置施設に送られることになった。

 女性の保安職員の前で丸裸にされたA子さんは、事の重大さに初めて気がついたという。

「売春は不法行為なので、もう今後は米国に行くことはできません。米国ではすべての入国者のデータが管理されているそうですから……。米国にはトランジットでも入国できないので、つらいです」

続く

以下ソース
https://smart-flash.jp/sociopolitics/189929/1

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