12日に初日を迎えた大相撲11月場所。本来なら先場所を制した大関貴景勝(27)の横綱昇進の話題で持ちきり──のところだが、週末から激変した気温と同じくらい綱とりムードは冷え切っている。

 12日発売のスポーツ紙6紙中、貴景勝の綱とりを相撲記事のメインとして扱ったのは半分の3紙のみ。それも楽観的なものはなく、例えば日刊スポーツは評論家の若乃花氏(元横綱)の意見として「最低14勝以上(の優勝)」と厳しい論調が目立った。他の3紙のうち、1紙はわずかに言及した程度、あとの2紙は貴景勝の「た」の字もなかった。

 初日は埼玉栄高の先輩、北勝富士を押し出して白星発進となったものの、周囲がしらけるのも無理はない。先場所は優勝といっても史上4度目の11勝4敗と低レベルだった上に、千秋楽の優勝決定戦ではまさかの立ち合い変化で勝利。これには八角理事長(元横綱北勝海)が「大関の責任は果たしたけど、ちょっとがっかり」と苦言を呈せば、佐渡ケ嶽審判部長(元関脇琴ノ若)も綱とりに関しては「(11月場所の)千秋楽まで見ないことには……」と歯切れが悪かった。

「11勝止まりという星数以上に、優勝決定戦での立ち合い変化の印象が悪すぎた。しかも、相手は21歳の平幕・熱海富士ですからね。熱海富士は先場所が返り入幕で、まだ幕内2場所目の新鋭。横綱を目指そうという大関が、そんな若手の挑戦から逃げ、からめ手で勝った。協会の中にはいまだに貴景勝を『あの貴乃花の弟子』と色眼鏡で見る親方もいますしね」(角界OB)

 貴景勝の相撲ぶりも不安を抱かせる一因だろう。突き押し専門で、四つに組んだら幕下どころか三段目以下。安定感に欠け、攻められたら弱いのは押し相撲の宿命ではあるが、過去の歴代横綱は押し相撲の力士であっても、ある程度は四つ相撲に対応できた。現役時代の八角理事長も相手に掴まれたまわしを切る技術は一流だった。

 押し相撲しかできない上に、印象は最悪。仮に今場所も11勝の優勝だったら昇進は見送りか。

「それはないでしょう。10勝だろうが11勝だろうが連覇したら昇進は決まりですよ。というのも、大相撲は前例主義。過去、連覇で昇進を見送られた大関は皆無ですからね。もし、星数を理由に貴景勝を昇進させなかった場合は、『低レベルの連覇は認めない』という、あやふやな基準ができてしまい、後々紛糾のタネになりかねません」(前出の角界OB)

 もちろん、ハイレベルな優勝ならば、言うことはないのだが……。

以下ソース
https://www.nikkan-gendai.com/articles/view/sports/331924