ひどい二日酔いで目が覚めた(前回までのあらすじはコチラ)。外はしとしとと雨が降っている。昨夜、ヒトミの勤める福富町のスナックを出たのは何時だったろう。そうだ、もう空は青白んでいた。
ヒトミは正体不明に泥酔した私を放り出すように、目つきの鋭いやせぎすの中国人に預け、車で私のマンションまで送らせたのだ(ヒトミとの最初の出会いはコチラ)。
ヒトミのスナックでの会計を思い出しギクリとした。確か7万8千円だった筈だ。財布には千円札一枚と小銭が残っている。いや使ったのは7万8千円だけではない。ヒトミにプレゼントしたバッグ、
化粧品、それに食事代を合わせると一体 額はいくらだ。家を出るときは30万円近い現金を持っていたのだ。
今後のことをぼんやりと考える。
二日酔いの頭では どんなに思案したところで、良い考えが浮かぶ訳もない。
身体に力が入らなかった。
また眠ってしまったらしい。目が覚めると夕方だった。夜7時からはコールセンターでのアルバイトがある。時給千円で3時間、三千円の収入か。
呆けたように、昨夜 浪費した金と時間とを想う。
なんだかバカバカしくなってきてバイトはサボる事にする。
手元にある現金は全部合わせても一万円に満たない。月末はもうすぐだ。アルバイトの給料がいくらか入るとしても 家賃、人力車の駐車場代、そして例の消費者金融カード3枚分の支払い 
は追いつかない。昼間に人力車で稼ごうにも連日の梅雨空では、俥(くるま)を曳く事も出来ない。私は進退窮まった。