0729名無しさんと大人の出会い
2022/08/20(土) 11:43:11.29ID:XW2RSW5I0一人は窓側のベッドにいる桃と言う男。
もう一人はドア側のベッドの講釈と名告る男だった。
2人とも寝たきりの状態だったが、窓際のベッドの桃は
ドア側のベッドの講釈に窓の外の様子を話してあげていた。
「今日は雲一つない青空だ、昔ならこんないい天気な日は顔合わせ日和だったよな」
「桜の花がさいたよ、新入生の時期だな、今年はどんなJDが参入しているんだろう」
「ツバメが巣を作ったんだ、定期と楽しかった時期を思い出さないかい?」
そんな会話のおかげで死を間近に控えながらも2人は穏やかに過ごしていた。
ある晩、窓際のベッドの桃の様態が急変した。
自分でナースコールも出来ないようだ。
ドア側の講釈はナースコールに手を伸ばした。が、ボタンを押す手をとめた。
「もしあいつが死んだら、自分が窓からの景色を直接見る・・・」
どうせお互い先のない命、少しでも安らかな時をすごしたいと思ったドア側のベッドの講釈は、自分は眠っていたということにして、窓側のベッドの桃を見殺しにした。
窓側のベッドの桃はそのまま死亡した。
晴れて窓側のベッドに移動したドア側のベッドの講釈が窓の外に見たのは、打ちっ放しのコンクリートの壁だった。