その後なにごともなく解散の時がきた。おれには追撃する度胸もなく、彼女もなんとなくよそよそしい。こうなったら望みは薄いと分かってもいた。
これで終わりか、と思っていた矢先、彼女がまたおれの名を呼んだ。
「◯◯くん、ありがとう、さよなら」
これが答えだと思った。おれの気持ちにケリがつくように敢えてそう言ったんだろう。優しい女だと思った。
その直後だった。理解できないことが起こった。彼女が手のひらでおれのほっぺたを触った。触ったところが燃えるように熱かった。一瞬のはずだが、長い長い時間に感じた。それが彼女との最後だった。
その後社会人になってそんな子供じみた恋愛を思い出す余裕もない時期が続いたが、何年か経って大学の同級生と飲み会をすることになった。
不必要なほどのバカ話の中で友人の1人が馴染み深い名前を言った。その子の名だ。