目的の場所に向かって真っすぐに歩いているつもりなのに、実際は同じ場所をぐるぐると回っている──。
まるで狐狸に化かされて山林で迷子になる人のようだが、同様に、実際は狭い室内で同じ場所をぐるぐる回っているだけなのに、どこまでも無限にまっすぐ歩き続けているように感じる体験を気軽にできる技術を、
東京大学とユニティ・テクノロジーズ・ジャパンの研究チームが開発した。

 ヴァーチャルリアリティ(VR)ヘッドセットを被り、実際に歩いて体験してみた。視界には、ヘッドセットを介してCGでつくられた世界が広がる。VR空間の中では、自分があたかも高いビルの壁面に沿って足場の上を歩いているような気分になった。

 VR映像で表示される壁は、現実にも存在している。手で現実の壁に触れながら、VR映像に従ってまっすぐ歩いて行った。しばらくまっすぐ歩き続け、ヘッドセットを外すと、まっすぐだと思っていた壁面は実は曲面で、大きな円の円周上を歩いていただけだったと気が付いた。

 仕組みはこうだ。半径2.5mの円周上に壁が立ててあり、その壁に沿ってヘッドセットを付けて歩く。周囲には12台のカメラがあり、歩いている人の位置を測定し、ヘッドセットに表示する映像をリアルタイムで補正している。
このときに、VR映像を本人が気付かない程度に回転させる。

 仕組みの説明を受けてから円形の壁のシステムを見た上で、ヘッドセットを被って体験したが、まっすぐ歩き続けている感じがして、自分が曲がって歩いているとはまったく感じられなかった。
たとえ仕組みを知っていたとしても、人の感覚は簡単にだまされる。

https://www.youtube.com/watch?v=THk92rev1VA

ヘッドセットを被ると、高所で足場を歩いている映像が表示される。
http://wired.jp/wp-content/uploads/2016/05/160520vr_01.jpg

実際は円形の壁に沿って曲がって歩いているが、あたかもまっすぐ歩き続けているように感じる。ヘッドセットに付いている角のような棒は、体験者の位置をカメラで追跡するためのマーカー。
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周囲の歩く通路を含めて7×8mのスペースがあれば、体験できる。
http://wired.jp/wp-content/uploads/2016/05/160520vr_03.jpg
http://wired.jp/2016/05/20/unilimited-corridor/