「おーい、見つかったかあ?」
「ええ、いました。ううりです」
「どうだ?無事か?」
「いいえ……もう種付けされてます」
「……チッ」
ちょっとでも目を離すとこれだ
ううりの飼育の難しいところはちゃんと目を光らせておかないと
すぐにモブおじたちの餌食にされてしまうということだ
孕みやすいううりは一度種付けされるともう出荷できない
「あーあ…がっつり中出しされてる…」
「これも処分かあ」
「胸が痛いですね」
処分…それは出荷に出さずにモブおじの巣にこのまま捨てるということだ
モブおじの巣に捨てられたううりはどうなるかなんて考えたくもない
ううりたちはロシアに出荷されることを楽しみにしている
このううりも同じだ
「びくとる?」
「ああ…ヴィクトルのとこだよ」
ヴィクトルというのはよくわからないがううりたちの神かなにかのようだ
とにかくううりたちはロシアにヴィクトルというものがあると信じている
とりあえずこのううりはもう…
「あっちにまっすぐ行けばヴィクトルに会えるよ」
「ほんと?」
ぽてぽてとぷっくりした足でモブおじの巣へ歩いて行くううり
「さ、行くか」
「ええ」
ピギーという悲鳴が聞こえたがいつもどうり振り返らずにきた道を帰った