暖かさと弾力性にあふれ、あのように肌触りのよい乳房――。
母乳を吸う乳児にとどまらず、私を含めた成人男性にとっても、まさに神秘的とさえいえる、抑えがたい魅力をたたえた女性の象徴だ。
今回は、この乳房にまつわる不思議を取りあげてみたい。

まず、乳房の機能上の本体である「乳腺」について考えてみよう。
当然のことではあるが、乳腺が本質的に機能する、すなわち、生理的な分泌が生じるのは、授乳期に限られる。
つまり、乳腺という外分泌腺は「腺であって腺でない」、言い換えれば、普段は冬眠状態にある、人体で唯一特殊な<腺組織>なのである。

一方、さる本に記されていたのだが、「体長に対する乳房の大きさ」という点で見ると、ヒトの乳房は他の哺乳動物に比して、ずいぶんと大きいのだそうだ
(もっとも、男性のペニスも動物の中では異様に大きいらしいが)。

どうして、ヒトという哺乳動物はかくも立派な乳房を持つ必要があったのだろうか?
高名な動物行動学者である日高敏隆氏(京都大学名誉教授)のエッセイ集『人間についての寓話』(平凡社ライブラリー、1994年刊)を読んで、思わずうなってしまった。
本書の第一話「ホモサピエンスは反逆する」によると、ヒト以外の哺乳動物で、オスがメスの乳房に魅力を感じることはないのだそうだ。

そもそも四足歩行の動物では、乳房は隠れて見えないし、それ以上に、授乳中にメスは決して発情しない。
授乳のための器官である乳房とセックスは相反する関係にあるといえる。
つまり、乳房は本来、セックスとは対立するものなのである。

四足歩行の動物では「セックスは後方から」が原則である。
メスザルの尻が赤いのは、「後向きの性」の表われといえるのだそうだ。
赤い尻を持つという性的信号の発信者に対しては、攻撃的行動を抑えつつ後方から近づいてゆくという行動様式が、オスには遺伝的に備わっている。

日高氏によれば、ヒトの乳房は「前向きの性」の象徴なのだ。
起立歩行を始めた人類の「種の保存」に必要だったのはメス、いや失礼、女性における「前向きの性信号=セックスシンボル」で、それが大きくてまぶしい乳房だったといえるのはないかと。
同時に、男性の遺伝子には、女性の乳房に対して抵抗しがたい魅力を感じとる本能が刷り込まれた――。

ちなみに、発生学的に見ると、乳房(乳腺)と胎盤は、哺乳動物にしか見られない新参者の臓器の代表である。
若い臓器である分、乳房は進化の速度が早く、生態変化に対する適応も素早かったのだろうか? 
悪性腫瘍(乳がん)が多発するのは、まだこれからも進化をし続ける可能性を秘めた、発展途上の証拠なのだろうか?

小さな違和感のひとつとして、乳腺という臓器の位置づけがある。
いったい乳腺は、女性生殖器のひとつに数えるべきだろうか?

現代の医療では、乳がんをはじめとする乳腺疾患は、主に外科医の守備範囲と見なされている。
乳腺疾患は産婦人科で診療すべきであるという意見や、その実践は、ほんの少数に過ぎない。
このようなディスカッションを踏まえると、ヒトの乳房は生殖器とみなすべきかどうか、さらに悩ましい――。

乳がんの確定診断法のひとつとして、病変に直接針を刺して吸引された細胞を顕微鏡的に判断する「穿刺吸引細胞診」が普及してきている。
毎日のように女性の乳房の(細胞の)難しさに頭を悩ましている病理医のひとりとして、特に注意を要すると肝に銘じているのは、「授乳期乳腺の細胞の姿」である。

離乳期に乳腺の不規則な退縮が生じて、まだ活発に分泌している乳腺部分がしこりとして触れることがあるが、そこから穿刺された細胞が、しばしば、がんと誤診されるような細胞形態をとるのである。
逆にいうと、授乳中の乳腺はホルモン環境に応じて、それほどまでに劇的な変化を示すといえよう。

続く

以下ソース
http://healthpress.jp/2017/05/post-2882.html

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