「……まったく、昔の人間はホント、ロクなことを考えないもんでね。しかもそれを“おかしい”と言っただけで、のけものにされる。今思い出しても腹が立ってくるよ」
自身がかつて暮らしていた東海地方のとある地域に存在していた“隣組もどきの自治組織”の実態についてそう証言するのは、この組織によるローカルルールに嫌気がさし、後年、首都圏へと移り住んだという渡辺治さん(仮名・87)。渡辺さんの話によると、当地における住民による自治組織で強要される“連帯”は、常軌を逸したものであったという。
「言ってしまえば、カミさんに先立たれたヤモメのために、自分の女房や娘なんかを貸し出さなくちゃいけないっていう決まりがあってね。日用品や調味料じゃあるまいし、そんな気軽に貸せるはずないじゃない。それがイヤになって私は引っ越したんですよ」
たしかに、冒頭の戦時歌謡曲の中でも、「あれこれ面倒 味噌醤油」と歌われているように、隣近所のつきあいが「隣組」によって強固なものとされていた時代には、気軽に味噌や醤油を貸し借りしあったりといった関係が存在し、そうした人間関係によって、ある種の“持ちつ持たれつ”のご近所づきあいが生まれていたのことも事実。しかしその対象が自分の愛妻や愛娘にまで及ぶとなれば、話は別だ。
「私は自分の女房を差し出せと言われた時に怒ってモメてから、村八分になってしまって、結局、そういう環境がね、嫌気がさしたものだからあそこを離れたけれどもさ、隣の家の旦那なんて、何回も自分の女房を差し出してたからね。それで私が“平気なのか?”って訊いたら、“そういう決まりだから”だなんて平然と言ってのける。私はね、その時、さすがにこんな連中には付き合いきれないって思ったよ」
全国的に見ると、最近では「隣組」自体はもちろんのこと、こうした“密な隣人関係”自体が急速に姿を消し、それどころか、隣人同士でトラブルになるケースも少なくないが、いくら軒を並べる関係とは言っても、そこはやはり他人同士。その関係があまり濃いものになりすぎるのも、それはそれで問題があると言えそうだ。
以下ソース
http://tocana.jp/2018/02/post_15722_entry.html
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