現場は歌舞伎町二丁目、区役所通りから脇に入ってすぐのSビル。ここら辺は、歌舞伎町でもクラブやスナックなどが集中する場所で、若者で賑わう歌舞伎町一番街などからはかなり奥まった場所にある。いわば「大人」の社交場であって、「子ども」たちが居酒屋感覚で足を踏み入れるところではない。そんなところで、なぜ20代の女性が自殺を図ったかというと、それにはやはり歌舞伎町ならではの"理由"があった。
事件翌日の昼下がり、筆者は、近隣ビルの関係者からこのような証言を耳にする。
「このあたりで勤める若い男女の話じゃ、飛び降りた子は20歳くらいで、すぐ近くの店のホストに入れあげて通っていたらしい。それで、その子はホストにかなりの借金があって、クビが回らなくなったとか、なんとか言ってたよ」
警察の調べも整っていない状況で、若い男女の話を鵜呑みにするわけにはいかないが、正直、歌舞伎町ではさもありなんという話ではある。ビル関係者の話によれば、「バンスがなんとか」とも話していたという。関係者はバンスがなんだかを知らないけど......と話したが、これは風俗業界の人間ならよく知っている言葉だ。要するに給料の「前借り」のことで、通常は風俗店やキャバクラにおいて、「優良な女の子」だけに施すシステムだ。
優良と書いたのは、昨日今日入った子や、勤務態度の悪い子に店が貸すわけもなく、ある程度の信頼関係があるということ。この話が事実なら、自殺した女性はまじめか、あるいは人気がある子だったのであろう。
そんな子でも、ホストにのめり込み、バンスまでしてにっちもさっちもいかなくなってしまう......。
さもありなんとは書いたが、その果てが飛び降り自殺、しかもなんの関係もない男性を巻き込んでとなると、なんともやりきれない気持ちにはなってくる。
この事件に、専門掲示板も早速反応を見せる。その内容は、「関係ない人を巻き込んじゃいけない」という常識論的な意見も見られたが、やはり「気持ちはわかる」「そこまで追い込むホストも最近多い」など、他人事ではなく、ごく日常の出来事として捉えた書き込みが多かった。それだけ、刹那的ないわば切羽詰まったような生き方をしている歌舞伎町の住人がいるのであろう。血痕の残る現場を見ながら、ポツリと話した歌舞伎町の住人の言葉がこの街の一面を物語っている。
「よくある話だよ」
そう、それが歌舞伎町なのだ。
(取材・文◎鈴木光司)
以下ソース
http://tablo.jp/case/news003891.html
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