戸叶和男『日本奇習紀行』

 恋する多くの男女が憧れる“結婚”というゴール。それは未婚の男女にとって、いつの時代も概ね変わらぬものであると思われるが、その実、この“結婚”という儀式に関しては、その昔、多くの障害や障壁が立ちふさがっていたものであった。

「なにせ成功して、無事に還ってくるのは10人のうち、1人か2人だったからね」

 その昔、西日本のとある地域で行われていたという、“極めて難易度の高い結婚前の儀式”についてそう語りはじめたのは、現在、故郷を遠く離れた都内の特別擁護老人ホームで暮らす横山清三さん(仮名・87)。横山さんの話によると、彼が生まれ育ったその地域では、若い男女の結婚が決まると、挙式の前に、新郎側に対して、なんとも過酷な試練が課せられていたのだという。

「結婚が決まるでしょう? そうなるとね、まず最初にやらなくちゃいけないのは、相手の親からの許しをもらうことでなしに、山に行くことなの。あのあたりにはね、結構高い山があってね、その一番高いようなところにはね、紫色した綺麗な花が咲いてるんだよね。それをね、1輪でもいいから摘んで来れないと、そもそもで“一人前の男ではない”という扱いになってしまうものだから、結婚なんて許してもらえなかったんだよ」

 それこそ『竹取物語』の蓬莱の玉の枝ではないが、かつてこの国においては、若い男女の結婚に際して、その資格を問う儀式じみた試練が、何らかの形で行われていた事例が散見される。当地におけるその“紫色の花”は、まさにそうしたものの1つであると考えられるが、実はこの花を摘むという行為そのものが、極めて難易度の高いものであったのだという。

「私は学者じゃないからね、詳しいことはよくわからないのだけれどもね、その花っていうのは、とても普通じゃ入らないようなね、山の深いところにあるらしいのよ。それこそ、一度足を踏み入れたら、ちっとやそっとじゃ戻ってこれないような場所にしか生えてないっていうさ。だからね、結婚しようと思って山に入るでしょ? するとね、大抵の場合は二度と村には戻ってこないのよ」

 実際、横山さんの話では、愛する女性に約束する形で、その花を手に入れようと山に入ったものの、花自体を見つけることができずに、その気まずさから行方を晦ましてしまうケースもあったようではあるが、実はそうした男性はまだマシな方で、場合によっては人知れず崖から転落して命を落としたり、山奥で遭難してしまうといったケースも少なくなかったようだ。

「まあね、そういうことが当たり前だったものだからね、しょうがないって言えばしょうがないことなんだけど、女ってのは実に現金なものでね。いくら待っても帰ってこないとわかるや、村を出てよそへ行って、違う男と一緒になったりするっていうことが多かったみたいだよ」

 場合によってはいくつもの死線を潜り抜け、ようやくその花を手に、新郎が村へと戻っても、時既に遅しで、その愛しき人は既に他人妻となっていたケースもあったという当地の儀式。そのあまりに悲運としか言いようのない男性たちの胸中を想うと、なんともやりきれないものがあるのが正直なところだ。

以下ソース
https://tocana.jp/2018/12/post_18760_entry.html

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