「虫嫌いが増えてもいいのではないか──と思っている人は、けっこういると思います。しかし、虫は、人間が生きていくうえで非常にメリットが大きい存在。農作物においても、虫がいないと花粉の媒介ができません。人間がそれを代替するとなると大変な労力とお金がかかってしまいます。

世界中で都市化が進んでいて、まわりに生き物がいなくなってしまうと、世代を超えて、虫嫌いがどんどん増えていくことになるでしょう。単に『気持ち悪いから』という理由で排除していく可能性もあります。これは、地球全体の自然を考えた上では、いいことではない。生物の多様性を守るためにも、虫嫌いが増えないようにすることも大事だと思っています」

そう語る深野助教。虫を愛するあまりに、今回の調査を行ったと思いきや……。

「実は、ゴキブリは触れないし、虫が得意、というほどではありません。家族に女性が多かったため、家の中で虫が出ただけで大騒ぎする家で育ちました」

虫嫌いがいるのはいい。しかし、一線を超えて、排除しようとするような虫嫌いを減らす方法はないのだろうか。

「虫嫌いを克服する必要はありません。ただ、都市部に住んでいて、虫嫌いだった人が、IターンやUターンなどをして田舎に暮らすことで、虫への嫌悪感がなくなった人も多くいます。また、子育てしているお母さんのなかには、子供たちが虫を捕まえてきても、嫌な気持ちを我慢して、子どもを虫嫌いにさせないようにしている人も少なくありません。人間と虫が共存する優しい世界につながるヒントがあるような気がします」

セミの鳴き声も止み、これから秋の虫の鳴き声が響く季節になっていく。虫を毛嫌いしている人も、一度なぜそうなのか自分に問いかけてみてはどうだろうかーー。