山口敏太郎オカルト評論家のUMA図鑑

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シグビン

 神話には、多くの幻獣や生物が描かれる。それらは、人々の信仰に影響をもたらす超自然的な存在であったり、あるいは人々の命を脅かす攻撃的な恐ろしい存在であったりとさまざまだ。そのような生物は、時として神話や伝説の枠を超えて現代に目撃されたという事例が報告されることも少なくはない。今回、紹介するUMAもその一つである。

 フィリピンの神話に登場する「シグビン」と呼ばれる生物がいる。シグビンは、夜になると影から人間を襲い吸血する存在であると言われている。犬もしくは角のないヤギのような姿をしており、その耳は非常に大きく、ムチとして使用できるほどの長いしなやかな尻尾を持っているという。また、吐き気を催すほどの異臭を放つとされる奇怪な存在なのである。

 神話によると、通称シグビン族と呼ばれる一族がおり、彼らはシグビンを指揮する能力を持っており、粘土で作られた瓶にシグビンを保管するのだそうだ。同じくフィリピンの神話に登場する魔物「アスワン」が、シグビンをペットとして飼育しているという伝承もあるという。

 このように神話の生物であるはずのシグビンは、実際に目撃がなされたという報告がいくつかなされており、中にはシグビンとおぼしき存在をとらえた動画もあるのだ。フィリピンの「タビアポ」というユーチューブチャンネルに投稿された映像では、配信者である男性がシグビンについて住民に聞き込みをしながら草原を捜索している様子が映し出されており、しばらくすると真っ黒な体をした謎の生物がくさむらの中からゆっくりと現れるのである。男性がその四足の生物めがけてものを投げておどかすと、その途端に生物は草むらの中に逃げ込んでいってしまう。

 気になるのは、この動画内で配信者がシグビンを呼び出すかのような仕掛けを施す様子が映し出されており、しかも逃げ出したシグビンに対して追跡する雰囲気も見られないという点だ。シグビンは、ヒステリックな叫び声をあげたり、うなり声を上げたりして近寄ってくるとも言われる。驚くべきことに、姿を見えなくする、いわゆる透明になる能力までも備わっており、一度彼らの標的になってしまうと、逃れることができないという。鳴き声をほとんど上げずにふらふらとしたシグビンを映すこの動画は、エンタメを目的とした創作物である可能性が高いだろう。

 さて、伝説として語られているシグビンについては、めったに目にすることのできない実際の動物の目撃に基づいたものではないか、という推測がなされている。一説では、カンガルーの近縁種である可能性が示唆されており、数百万年前にオーストラリアからフィリピンに渡ってきたアカカンガルーがシグビンとして認知されてきたのではないかと言われている。その他にも、近年になってボルネオ島で発見された肉食動物キツネネコの仲間ではないかと唱える声もあるようだ。

 人間を襲い、そして吸血するというその様は、有名なUMAの一種「チュパカブラ」を思い浮かべずにはいられない。ただ、目撃情報はあるものの実際に人間が被害を受けたという報告が特に聞かれていないのは幸いであろう。

【参考動画】https://www.youtube.com/watch?v=RSgeE9r8tMs&t=1s

以下ソース
https://www.tokyo-sports.co.jp/articles/-/293890