見知らぬ男が、凄まじく熟練した身のこなしで、人魚を攻撃していた。
銛で人魚の首を突き、足で人魚の頭を踏み潰す。
悲鳴を上げて空を打つ人魚の尾を短刀で切り裂く。
吹き出した血がデッキに降り注いだ。
 人魚たちは、その男にまったく歯が立たなかった。
反撃する意思もないようで、ただ杏寿郎と同行していた男たちを狙うのみ。人魚たちと、その見知らぬ男に限って言えば、これは一方的な殺戮だった。鱗と血が飛び散り、男たちと人魚の悲鳴が響きわたる。
 地獄絵図のような光景を前に、杏寿郎は、そのまま気を失ってしまった。

 目が覚めると、辺りは明るかった。
ここがどこなのかもわからず、ただ戸惑うばかりの杏寿郎に、馴染みのない声が聞こえてくる。


「気がついたか?」