【穴柱】煉獄杏寿郎スケベ雑談スレ Part.2
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2つに分かれてもうたわ
荒らしが余計な横槍入れるからやで こっちのスレは兄さんカルタでもつくるか
「あ」
朝起きると 隠れて ふんどしを洗う
「い」
陰毛の色を いつも聞かれる
「う」
うんこは太い 1本ぐそ
「え」
駅弁がつがつ うまいうまい
「お」
弟には 相談できない ことがある 「か」
勝手に裏で売られるふんどし
「き」
きついとほめられ ケツマンコ
「く」
屈辱的な体位が好きだと鬼にバレ 「け」
ケツ嵌め大好き 淫柱
「こ」
こんな姿 父上には見せられない ダメ出しするようで申し訳ないがそこはぜひバナナでなく極太さつまいもにしていただけまいかと哀願申し上げる >>28
了解 兄さんのカルタをより良い物にしよう
「そ」
反り勃つ極太さつまいもはご立派様 「な」
中出ししても俺は男だから妊娠しないぞ もう安心だ >>28だけどつまらぬ申し出も快く受け入れ後輩の面倒見もよい>>30の人柄に煉獄に通じるものを感じるビクンビクン涎を垂らしながら続きを待ってる 「ぬ」
ぬるぬるだから 早く来て 速く突いてと泣きながら 「も」もう我慢できん…ッ!君の熱いさつまいもをココにッ! 炭治郎が血鬼術にかかって笑顔で
煉獄さんの尻をスパンキングしまくる二次をみた
煉獄杏寿郎はやはり嗜虐趣味をそそる 「よ」
よもや!よもや! 尻でこんなに 感じるとは! え?全然なんだけど。
駅弁ファック巧い巧い に一票かな この板の煉獄さんのスレってあかれんだけみたいだけど残ってるのが猗窩煉だけで前は他も沢山あったの?
スレチだったらごめんなさいスルーして下さい >>76
ない
この板というか5ちゃんのきめつカプスレは猗窩煉のみ >>78
そうだったんですね
教えてくれて有難うございました🙇♀ >>81
イイッ!イイッ!イイッ!
兄貴の声が木霊する >>80
固定カプスレはあかれんのみだけどその他のカプはこっちで話せるよ
【腐滅の刃】煉獄杏寿郎受けに萌えるスレ Part.8
https://mercury.bbspink.com/test/read.cgi/erochara/1612502939/
あとは801に鬼滅総合スレ >>90
「き」
金玉空っぽになるまで突いて中出ししまくってやるからな杏寿郎! 「さ」
催眠姦 痴漢列車で触手姦 締めは強姦フィストファック 「は」
ハメられて ふんどし隠され 無ふんどし 隊服着ても あらわな形状 ちゃんとどれも煉獄さんで脳内再生できちゃうんだよなあ… >>129
高貴なのと
>>131
ゲスw
どっちも好き 「り」
リボン巻き よもや!俺がプレゼントというわけだ 映画スレやキャラスレだと4.50万使ってるって人もいるよね
つまり預金80万くらいでそれだけかけてるのか 凄いね
映画も一番多い人は何回見たのか気になってしまう (志々雄真実の戦艦ネタと掛けてる事に誰か気付いてほしい……) るろ剣見てないから分からなかったよw
煉獄とうまく掛かってさぞ気持ちよかったであろう! 逃げるな卑怯者ーー!チンポ見せつけるだけ見せつけておいて逃げるな馬鹿野郎! 俺はお前から逃げてるんじゃない、警察から逃げているんだ 「ん」
んまいんまい 舌っ足らずで 叫ぶ夜
以下かるた川柳短歌など自由に
↓ >>169
「い」
いいだろう 男杏寿郎 履きこなしてみせよう! 「か」
かかってこい!遠慮はするな!と尻を突き出す 「く」
くっ殺せ 言ったそばから あぁいいもっと! 「す」
すまない!粗相をしてしまった!不甲斐ない!! 「せ」
急かなくていい!順番がきたらちゃんと君のもお相手しよう! 「ほ」
HottoMotto ほってもっとと 空目する 「る」
ルンルン気分で履こうとしたがケツがデカ過ぎて入らない 競輪のピチピチパンツで腰を浮かせて漕いでるケツと股
真後ろから兄さんのを見てみたい 「れ」
「れんご「しっ……今は杏寿郎と呼んでくれ」「……っ」ズコズコズコズコ!! 「ろ」
ローライズパンツからはみ出る海老天色のちん毛 >>233
検索してみたけど女子競輪は後ろからショットがあるのに
男子競輪はあんまりないね
カメラマン偏ってんな
スポーツ写真のエロが問題になってたけど
男子競輪を後ろからとればいい 杏寿郎ほど鎖につないで四つん這いにさせられてファックされてるところが見たい男もいない それではカルタも2周したことですし
兄貴に聞かせたい・言わせたい言葉選手権はどうでしょうか
わんわんもいいね
感じた時はワンと鳴くように命じてるのに
つい「アァッ」と言ってしまう兄貴に
「駄犬め!ワンじゃないといかせてやらないぞ」と尻を叩きたい
訓練していれば喘ぎ声もワンワンになる日も来る やっぱベタだけど自分でアナル拡げて「ここにおいで」って優しくいざなわれたい >>243-244
兄さんらしくてええな
目の前で言われたら腹筋崩壊する自信がある >>239
新宿2丁目の某書店では隠し撮りと思しき男子スポーツの試合ビデオが売られてるらしいでw 「兄さん、ケツ毛すごいっすね、まるでケツ毛バー」
『ヤメタマエ!』 逆にここに小説落としたい理由はなんなの?シブでいいやん 重複スレで消化してるだけなんだからいいんじゃない?
それとも長文読めないやつばっかか >>262
そんな煽られ耐性なくて、小説ボロクソに言われたらどうすんの? >>261
長文読めない奴は文化にぶらさがるしかないからしょうがない。仕切り役に立たないことだな >>264
その前にその思い込みどうにかしたら?病気だよ うむ、そういうことか!だが臭い!
長文が書けるのは実にめでたいことだが
この話はこれでお終いだな! そんなに小説読みたきゃ落としたきゃそれなりのところあるんじゃないの? 長文てどこ行ったの?
引っ越してたなんて知らなかった 長文老女!君のまーんは何色だ?
黒か!
それはきついな! 長文って俺は嫌われていないの人?
支部行くって言ってなかったっけ
あかれん書いてるようでリバっぽい人もいたよね 総受けスレに落とせばいいんやないの?
あっちたまに落ちてるやん 総受け過疎ってるか嵐構ってるかだから喜ばれるんじゃ 総受け長文歓迎してるって書いてあったわ
長文厨は空気読んで投下すべし 長文婆の投下するSSは自分割りと好きだったから最後らへん追い出されたのは後味悪かった
ここで見かける事は無くなっても渋で読めるからいいけど 長文ss婆、長文好き婆は嫌がる住民には我慢を要求するのに
自分達は好きなようにしたいだったからなー
仕方ないよね
今は住み分けできてるんだからいいんじゃね? >>292
長文いっても原稿用紙一枚分もないのに(はぁ〜
こんな人ばかり増えると日本が没落するから黙ってたほうがいい。
世の中は才のある奴が引っ張らないと。
偏差値40低レベル校の動物園みたいな国になったら終わりだ。
鬼滅みたいなヒットは生み出せなくなる
1レスか2レス飛ばすだけが我慢ってどんだけだ 低レベルはネットでくらいしか存在を主張できないから、余計主張するんだろうけどね
いやわかるよ
確かにお前らは生活圏では空気だ。路傍の石だ。雑草だ。
だがしかし
お前らは所詮寄らば大樹の影で生きている
大樹の邪魔にならないように生きなさい 優秀だと勘違いするとこんなになっちゃうのか
憐れだなぁ >>301-302
そんなだからウザがられるんやで?
流れをよく読みなさい なぜ主婦は自分の家庭語りたがる?
あかれスレもだし
知らんがなってカンジ >>327
ちんちんを!ここに!いれてくれ!!!! 考えてみたが、自分で自分の穴に入れればいいのでは! 「人魚を見てみたい」
常日頃からそう思い続けていた杏寿郎は、ある日、友人から人魚狩りに行かないかと誘われる。
人魚狩りの参加者がみな、高額な宝石『人魚の涙』が目当てである一方、ただ一人違う目的を持つ杏寿郎。
同行者たちと向かった人魚の群生地――人魚の棲む絶海の孤島で、杏寿郎は、ひとりの孤独な狩人と出会う。
人魚の涙は、非常に貴重な宝石で、高値で取引される。
死んだ化石の産物ではない、いまも生きている生物からのみ採取できる宝石なので、なかなか市場にも出回らない人魚の涙は、どんなに金を積んでも、たやすく手に入るものではなかった。
人魚の涙を欲しがる富裕層は多い。
そして、その金にまみれた欲望を満たすべく、命懸けで人魚の涙を採取する人々もいた。
彼らは、自分たちだけが知っている人魚の群生地に赴き、狩猟した人魚から涙を手に入れ、一攫千金を手にするというが、それは、だれにでもできることではない。
人魚の狩猟は、本当に危険な、それこそ命懸けの行為として広く知られていたからだ。 人魚は人を襲う。
単に凶暴なだけなら、むしろ話は簡単だった 。
有史以来、人間は武器の力を借りて、どんな猛獣にでも勝利してきたのだから。
しかし、人魚は人を惑わす。
誘惑し、魅了して、人間を完全に無力な存在にした後、水の中へ引きずり込むのだ。そのような相手には、いかなる武器も通用しない。
どんなに素晴らしい装備であっても、それを強力な武器にするのか、または無用な鉄塊にするのかは、結局、それを操作する人間に懸かっているのだから。
人魚の誘惑に勝つほどの強い心の持ち主は、なかなかいないのだと言う。
だから人魚狩りは、それこそ命懸けの行為だった。
政府すらも干渉を憚る人魚は、資本主義の先端に立つ宝石を生産する存在であるにも関わらず、いまも伝説のままで残り続けていた。
大抵の人間は、なによりも命を惜しむからだ。 杏寿郎を人魚狩りに誘ったのは、大学時代の友人だった。
一攫千金のチャンスだと、一緒に行かないかという友人の言葉に、杏寿郎は興味を惹かれた。別に金が必要だったわけではない。ただ常日頃からずっと、人魚が見てみたいと思っていたのだ。
その友人も杏寿郎も、人魚の危険性について、あまりよくわかっていなかった。大抵の人がそうだった。
ただ人魚を見たという話を伝え聞いたのみ。実際に人魚を見た人が少ない以上、人魚の危険性は、ただ口伝てに広まった都市伝説程度の恐怖しか齎さなかったのだ。
むしろ杏寿郎は、人魚に恐怖よりも興味を感じていた。
限りなく美しい顔と声をしているらしい。
人間を死にまで惑わす美しさだなんて、いったいどんなに美しいんだろう……。
好奇心に駆られて、杏寿郎は友人の提案に頷いた。
「いま向かっている人魚の群生地はな、俺たちしか知らないとびっきりの穴場なんだぞ」 隊長が意気揚々と言った。
絶えず海の中を移動している人魚の群れが、数ヶ月間、一ヶ所に留まって群生地を作ることがあるのだが、いま向かっている目的地が、まさにそういう場所らしい。
人魚狩りの同行者たちは、みな荒くれ者だった。
ほとんどが船乗りで、杏寿郎と友人は、もっとも若い方に属している。
隊長は、多額の借金を抱え込んでいるらしい。たった一つ残った船も強制執行が間近で、この船すらなくなったら自殺するしかないと思ったところ、どうせ死ぬのなら、人魚狩りにでも賭けてみることにしたのだ。
ほかの人々も似たような事情だった。命よりも金が必要な人々。
出来心で消費者金融に手を出したのが運の尽きだった友人も、やはり同じような事情だった。
そのような人々の前で、杏寿郎が人魚狩りに出向いた理由など、言えるはずもない。
ただの贅沢にしか思えない理由を話して、笑いものにされたくはなかった。 「人魚は全部が雌なんだがな、とんでもねえ別嬪ばかりなんだと。
歌を聞いたら骨抜きにされるらしいから、全員気ぃつけろよ」
「死ぬ覚悟でこんなところにまで来たのに、たかが女の顔くらいで惑わされたりしませんよ」
「そのとおりだな。生け捕りにしないとダメだぞ。そうじゃなきゃ、涙は手に入らないからな」
男たちの会話を聞きながら、杏寿郎は、これまでいろいろと聞いてきた人魚の伝説を思い返していた。
人魚は、この世のものならざる美しい顔で現れ、船の欄干に腕を掛けて歌を歌うらしい。
そして、男たちが我を忘れると、そのまま水の中へ引きずり込むらしいのだ。どうしてそんなことをするんだろう。
言葉は通じるんだろうか。
杏寿郎の思う人魚は、結局のところ、アンデルセン童話に出てくるような浪漫的な人魚姫に過ぎなかった。
本当の恐怖は、実際に目の当たりにするまではわからない。 人魚の群生地は、本土からかなり遠く離れた島にあった。
身軽にしろという指示に従い、それまでの大型船から小型船に乗り換えて、日の沈み始めた海へと漕ぎだした。
武器や網を船に積み、光を好むという人魚の習性を利用して、煌々と明るいライトを点けた小型船に乗り込むまでは、まだまだ浪漫的な気分でいられた。
夜の海は、どこまでも黒い。
それほど深くないはずなのに、まるで深海の只中を漂っているような心地がする。獲物の出現を待つ退屈な時間。眠気に襲われた杏寿郎が、うとうとと目を閉じかけていた、そのとき、
「あそこ、人魚だ」
だれかの小さな囁きが、夜の空気を揺らめかせた。
男の指さす方へと視線を向けると、まさしく……人魚だった。
伝え聞いた話のとおりだった。
見たこともないような美しい女が、船の欄干に腕を掛け、澄んだ瞳でこちらをじっと見つめている。
人間で考えれば、まだ二十歳くらいだろうか。
ほんの少し幼さを残す美女が、大きな瞳で男たちを見つめていた。 男たち全員は、ものを言うこともできず、我を忘れて人魚に見惚れている。そこで、最初に人魚へ近づいたのは、杏寿郎の友人だった。
「人魚……ですよね?」
獲物にそんなことを話しかけるなんて、呆れた話だが、嗤う者はだれもいない。むしろ話しかけて当然のように思えたからだ。そしてその質問に、人魚が微笑みながら答える。
「じゃあ、ほかになんだと思います?」
その微笑に励まされた友人は、さらに積極的に話しかけ始めた。
人魚と短い会話を交わしながら、どんどん船の欄干に近づいて行く。
人魚が歌い始める。
聞いたこともないような美しい声に、全身に痺れが走った。
それと同時に、水面から何人もの人魚が顔を出す。人魚は、それぞれの美しい顔で男たちに近づき、見惚れた男たちは、おぼつかない足取りで、それに応える。
そのとき、友人の悲鳴が聞こえてきた。人魚が、船から半分ほど身を乗り出した友人の体を夜の海に引きずり込んでいる。
「助けるんだ!」
我に返った隊長が叫び、数人の男たちが慌てて友人を引き上げようとするが、すでに遅かった。
友人を羽交い締めした人魚は、一瞬のうちに黒い水面の下へと姿を消す。そのとき、杏寿郎は確かに見た。
人魚の美しい顔が恐ろしげに歪み、その巨大な牙を友人の首に突き立てるのを。 一気に目が覚めたが、もはや手遅れだった。一人目を合図に、欄干に集まっていた人魚たちが、一斉に男たちを引きずり込み始める。
先に正気に戻った隊長を筆頭に、それぞれ銛や麻酔銃を手に取って、水面に打ち込んでみるが、人魚は素早く敏捷だった。それに、まだほとんどの男たちが、人魚に誑かされたままだ。
すぐ横から聞こえる同僚の断末魔にも気づかずに、焦点の合わない瞳で人魚の美貌を見つめては、そのまま引きずり込まれている。
人魚たちは、恐ろしい腕力で男たちを引きずり込み、水面から躍り上がって、船の向こう側へと飛び跳ねながら、船上の男たちを浚っていった。
恐怖と混乱の中で、凍りついたようにその光景を見つめるだけだった杏寿郎の腕を、人魚の濡れた手がしっかと掴む。凄まじい握力を感じ、引き込まれる……! と目を瞑った瞬間、突然、海へと引きずり込む力が消え去り、杏寿郎はその反動でデッキに倒れ込んだ。
慌てて身を起こすと、手首から切り落とされた人魚の手が、自分の腕を掴んだまま、断面からどくどくと血を吹き上げている。悲鳴を上げながら手を振り落とすと、四方八方で血飛沫が上がっていた。
だれかが人魚に反撃しているらしい。同行者のうちのだれかだろうか。
いや、違う。
反撃者は、見たことのない男だった。 見知らぬ男が、凄まじく熟練した身のこなしで、人魚を攻撃していた。
銛で人魚の首を突き、足で人魚の頭を踏み潰す。
悲鳴を上げて空を打つ人魚の尾を短刀で切り裂く。
吹き出した血がデッキに降り注いだ。
人魚たちは、その男にまったく歯が立たなかった。
反撃する意思もないようで、ただ杏寿郎と同行していた男たちを狙うのみ。人魚たちと、その見知らぬ男に限って言えば、これは一方的な殺戮だった。鱗と血が飛び散り、男たちと人魚の悲鳴が響きわたる。
地獄絵図のような光景を前に、杏寿郎は、そのまま気を失ってしまった。
目が覚めると、辺りは明るかった。
ここがどこなのかもわからず、ただ戸惑うばかりの杏寿郎に、馴染みのない声が聞こえてくる。
「気がついたか?」 身を起こすと、窓の外から朝明けの海が見えた。
そこで、昨晩の惨事を思い出す。
はっとした杏寿郎は、傍にいた昨夜の反撃者に、食いつかんばかりの勢いで尋ねた。
「ほかの人たちは!?」
「全員連れ去らた。人魚に」
そう言う男の口調は、今日の天気を答えたかのように泰然としている。杏寿郎は、本当に自分の理解が正しいのか疑わしくなり、思わず訊き返した。
「死んだ……んですか?」
「死んだな」
脳裏に友人の顔が浮かんだ。
隊長の顔も浮かんだ。
それほど親しい友人ではなかったし、隊長や狩猟の同行人も数日前に会ったばかりの人たちだったが、それでも知り合いの死というのは、ある程度の重い衝撃をもたらす。
うなだれる杏寿郎から視線を外して、男が口を開いた。 >>374
このスレ自分のものかなにかと勘違いしてない? 「人魚の涙が欲しかったんだろ? 一つやるから、早く本土に帰れ。ここは人間のいられる場所ではない」
「いいえ……要りません。大丈夫です」
「要らない? じゃあ、どうしてこんなところに来た?」
「人魚が見たかったんです」
人魚が見たかった? 鸚鵡返しに言った男が、呆れたように笑った。
杏寿郎が目を覚ました場所は、その男の家だった。
海を見渡す高台に立つ、海岸から近い一階建ての一軒家だ。
白い壁紙を貼っただけの不愛想な壁を飾るものは、ただ一つだけだった。
まるで蛇の抜け殻のような薄い魚の皮と鰭。
見たことのない柄と色をしていたが、その尾の形と大きさから、すぐに察しがつく。
人魚の外皮だった。 「あいつらはただの怪物だぞ。不思議な姿をしているが、ただの怪物だ」
朝食の支度をしながら、男はそう言った。
一口食べただけで箸を下ろす杏寿郎に、男は、もっと食べるようにと勧める。
杏寿郎が頭を振ると、それ以上杏寿郎に構うことなく、黙々と自分の分を平らげていった。
食卓に乗せられた焼き魚に吐き気が込み上げたが、男の話に興味が湧いた杏寿郎は、吐き気をぐっと堪えて、食卓に居座り続ける。
杏寿郎は運がよかったんだ。
普通は全滅する。
そう言う男の言葉に、背筋が冷えた。そのくせ昨夜の話を詳しく尋ねることは止めない。
気の毒だが、海に引きずり込まれた人は、全員が失踪として処理され、特に政府が捜索に乗り出すようなこともないらしい。
人魚関連の事件には、いっさい手を出さないのだと言う。
「杏寿郎もわかるだろ。昨日、ああなるのを見たんだから。政府も手が出せない。杏寿郎は、自分が生き残ったことだけで満足しろ」 杏寿郎は、しおしおと頷いた。
「でも、その友人とはかなり親しかったのか? 親友だったとか?」
「いや、ただの同期で……」
「じゃあ、そんなに悲しくもないな。ちょっと身を休めて落ち着いたら、すぐに顔も思い出せなくる」
だって、そうだろ? 大学の同期っていう程度だったら……葬式で泣いたりしたって、一週間もすれば思い出しもしなくなるじゃないか。
男の言葉は、僅かな温度も感じられない、冷たい物言いだったが、それなりに正鵠を射ている。杏寿郎も、そのとおりだと頷いた。
自分の名前は猗窩座だと男が名乗る。
ついでに年齢も教えてくれたが、自分より二つも年下で、杏寿郎は、かなり驚いてしまった。
そう言われてみると、確かに自分よりも若い顔立ちをしているのだが、妙に大人びた雰囲気を纏っている。
昨夜、人魚を殺戮していたときの姿は、なおさらそうだった。
「猗窩座さんも人魚狩りをしているんですか?」
「人魚狩り……まあ、人魚を狩っているわけだから、だいたい合ってるかな」
「涙のために?」
「涙も売る。結構高く売れるからな。でも金儲けのために、あいつらの胸くそ悪い顔を我慢して見てるわけじゃない。俺は人魚が大嫌いなんだ」
「じゃあ、どうして……」
「俺はただ、人魚を殺す人間だ」 昨日のお前たちみたいに、人魚を捕りに来る連中がときどきいるんだ。
自分の精神力が人魚に勝つと思ってる連中。
本当に勝てる奴なんて、ほんの数人しか見たことない。
とにかく、そういうときに人魚が現れたりすれば、出向いて殺したりとか。他所に遠征することもあるが、ここにいちばん人魚が集まってくるから、基本的にはここだな。
不思議だ。
杏寿郎の脳裏に浮かぶ感想は、その一言に尽きた。
杏寿郎は、猗窩座が不思議で堪らない。
どうしてこんな若い男が、ただひとりっきり海で暮らしながら人魚を殺し続けているんだろう。
「人魚が人を襲うからですか?」
「ああ」
「どうして人魚は人を襲うんですか?」
杏寿郎の質問は、無邪気だった。猗窩座は、丁寧に説明してくれる。
人魚は全部が雌なんだ。
雌雄同体でもないし、本当にただの雌ばかりで、あいつらだけでは繁殖ができない。
でも絶滅していないよな。
なんでだと思う?
人間の男を浚って繁殖するんだ。
人間の男の胤で、あいつらが孕んでしまえるというのが悲劇の始まりだな。まあ、胸くその悪い話だが。
だから船を見かけたりしたら、蟻みたいに集りまくって歌を歌う。
男たちが恍惚としたところで、水の中に引きずり込む。
まあ、浚った男たちを相手に、なにをどうやって子を孕むのかまでは知らん。
気色悪い 長文老女!
君のまーんは何色だ!
黒か!
そいつはきついな! それで用が済んだら、死体は食べてしまう。
これは俺も聞いただけの話だが……でも実際に、あいつらに引き込まれた死体が上がることは一度もなかったから、そのとおりなんだと思う。
「怖い。本当に怪物なのだな……」
ぼんやりと呟く杏寿郎に、猗窩座がくすりと笑った。
「じゃあ、男だけを襲うのですね? 繁殖の相手が欲しいのだから」
「さあ……だったら俺の父はともかく、どうして母や兄の嫁まで浚ったんだろうな」
「あ……」
杏寿郎は、小さく喘いで、なにも言えなくなる。
黙り込んでしまった杏寿郎を余所に、猗窩座が、空いた皿を洗浄機に放り込みながら言った。
「船に乗せてやるから、本土に戻れ。本土に行けば、三時間に一本ずつの東京行きのバスがある。バス代は出してやるよ」
しかし杏寿郎は、そろそろと猗窩座の顔色を窺ったあと、思い切って口を開く。
「あの、もう少しだけ、ここに置いていただけないだろうか?」
「なぜだ?」
「もう一度、人魚が見たいんです」
猗窩座は、呆気にとられた様子で杏寿郎を見た。
そして、窓の外を指さす。
「あっちに行けば、人魚の死体が山ほど積んである。それでいいだろ?」
杏寿郎は、頭を振った。
「そういうのではなく、生きてるの」
猗窩座が、心底呆れた様子で笑う。
はッ……本当に危ない奴だな、お前。
そう呟きながら。 「あのとき俺が許可しなかったら、杏寿郎、ひとりで人魚見に行って死んじまいそうだったからな。だから好きにしろって言ったんだ」
猗窩座はそう言うが、杏寿郎は肩を竦めながら、
「嘘をつけ。君も暇でしょうがなかったからだろ」
と、返すのみである。
実際、二人がすぐに親しくなった理由は、猗窩座の日常があまりにも退屈だったからだ。
孤島で長い時間を一人っきりで過ごしてきた猗窩座に、気さくな性格の杏寿郎は、すぐに楽しい友人になった。
杏寿郎が来るまでの猗窩座の日常は単純だった。
起床して、ランニングマシーンで三十分ほど走ったあと、軽くシャワーを浴びて、朝食と掃除を済ませる。
そして、裏庭にある小さな畑を耕し、水をやる。
昼食を終えたあとは、読書と昼寝をした。
午後は、武器の製作と手入れ。
日が暮れると、海に出て人魚を探す。
人魚が現れそうなときは、一晩中でも海に留まるが、そうでない場合は、すぐに家へ引き返す。
猗窩座によると、人魚が現れる日には、人魚の臭いがするらしい。
人魚を狩った日の猗窩座は、生臭い返り血にまみれて帰ってくる。
汚れた服を洗濯機に放り込み、熱いシャワーを浴びて死んだように眠ると、翌日には、海岸に打ち捨てた人魚の死体を処理し、汚れた武器を磨いた。
人魚が現れない夜の猗窩座は、テレビやDVDを観ている。
そして寝る前には、本を書き留めていた。
人魚についてのものらしい。
人魚の観察記録、狩猟記録などを分厚いノートに取り留めもなく書き記していく。
人魚狩りを除いて、猗窩座がもっとも精を出すことであった。
ノートは、文字だけではなく、猗窩座が観察した人魚の図や彼にしかわからない印などで、いっぱいになっていた。 二、三日に一度、船に乗って本土に上がる。
そこでは、インターネットで生活用品を購入したり、市民会館で預かってもらっていた宅配品や新聞を回収したりした。
猗窩座は、本土でも『人魚狩りの青年』で通じるくらいに有名だった。町の人々は、孤独で端整な人魚ハンターに好感を示して、いろんな総菜や農作物などを惜しむことなくお裾分けしていた。
猗窩座がインターネットで買い込むものは、主に衣服類や靴、本やDVD、自作武器に必要な部品などだった。
あ、そしてマンガも。
杏寿郎が居候を初めてからの数日間、猗窩座は、まったく杏寿郎の相手をしてくれなかった。
杏寿郎をただの食客扱いするだけで、話しかけてもくれない。
だから杏寿郎は、昼は島を探検し、夜は本棚いっぱいのマンガを片っ端から読み倒すことで暇を潰していた。
しかし、いい加減マンガにも飽きて、居候開始から一週間が経ったある日のこと、結局杏寿郎は、猗窩座に向かって、ストレートにこう言い放つ。
「俺にも構ってくれませんか?」
そのとき猗窩座は、刈払機を改造して武器を造っているところだった。
「俺さ、あのとき電動ノコギリ持ってたのに、怖くなかったのか?」
後日、猗窩座がそう尋ねると、杏寿郎は、
「電動ノコギリより、ずっと退屈したままで過ごすことの方が怖かったんだ」
と、答える。
猗窩座には理解できない感覚だったが、理解できないからこそ、すぐに杏寿郎のことが気に入った。
人魚狩りは、やはり楽しいとは言いがたい、ただ毎日繰り返されるだけのルーティンワークだったから。
電動ノコギリを境に、杏寿郎は、猗窩座の日常に、自然と溶け込み始める。
猗窩座より早く起きて朝食を準備したり、掃除や洗濯も代わりに受け持った。
人魚の血に濡れそぼった服には、長い間、怖くて手が出せなかったが。
二人の主な会話は、杏寿郎が猗窩座に人魚の生態を尋ね、猗窩座がそれに答えるという形式だったが、時間が経つにつれて、二人の共有する部分も少しずつ増えていく。
杏寿郎が敬語を止めて、完全に親しくなった日から、杏寿郎は、人魚狩りに向かう猗窩座を気をつけてと送り出し、夜遅くまで猗窩座の帰りを待つようになった。
猗窩座は、家でだれかが自分の帰りを待っているという家族の温もりを久しぶりに取り戻すことができた。 こっちに貼り付け続けると向こうへの返品が続くんやでw >>405
最初から長文歓迎の向こうのスレに書けばいいだろ
喜ばれるぞ 杏寿郎のことで、猗窩座がいちばん大きく笑ったのは、『杏寿郎さつまいも畑事件』だった。
猗窩座に付いて本土に出向き、スーパーでさつまいもの種を買い込んだ杏寿郎は、何日も忙しそうにしていたかと思えば、裏庭の隅に小さなさつまいも畑を作り、『杏寿郎さつまいも畑』と書かれた可愛らしい木札を立てたのだ。
まるで子どものような彼に、猗窩座は、文字どおりに笑い転げる。
気恥ずかしくなった杏寿郎が、すっかり拗ねて文句を言うが、それでも猗窩座は、構うことなく爆笑し続けていた。
「杏寿郎、お前って本当に面白な」
杏寿郎は、猗窩座にとって、どんどん面白く楽しい存在になっていく。猗窩座は、杏寿郎のために、DVDショッピングに費やす金額を増やした。
そもそも、杏寿郎が猗窩座の家で暮らしたいと言い張った理由は、もう一度、人魚を見るためである。
その目的に忠実な杏寿郎は、自分も人魚狩りに連れて行ってくれと何度も強請った。
しかし猗窩座は、決して杏寿郎を連れて行こうとはしない。
「お前、行ったら死ぬぞ」
「君は大丈夫じゃないか」
「それは俺だから大丈夫なんだ。お前はダメ」
「君、他所から来る人魚狩りの人たちには何も言わないくせに、どうして俺のことは止めるんだ?」
「あいつらは別に知らない人だ。でもお前とは知り合いだし、知り合いを見殺しにするわけないだろ」 そういえばここ
元々総受けで雑談したいって言って追い出された奴が立てたスレだったな 本人無我夢中で書き込んどるからどんな事態になってるか気づいてないやろなw 人魚を狙う者にとって、この島はよく知られた狩猟地らしく、定期的に船に乗った人々がやって来た。
そして、そんな日には、猗窩座がいつも以上に、返り血にまみれて帰ってくる。
猗窩座を除いては、たったの一人も生きて帰ることはなかった。
「昔からそうなんだ。杏寿郎は本当に運がよかったんだ」
猗窩座が言う。そのたびに杏寿郎は、口をへの字にしてむくれた。
狩った人魚の死体は、一ヶ所に集めて燃やしていた。
土に埋めると虫が湧いて臭いがするし、海に捨てるのは気持ち悪いらしい。
杏寿郎もいつの間にか、蛋白質の燃える臭いに慣れてしまっていた。
炎の中で真っ黒に焦げていく人魚の死体を見ながら、やはり杏寿郎は、生きている人魚を見たいと渇望したが、猗窩座は、断固として同行を許してくれない。
それでも杏寿郎は、いつまででも待つつもりだった。
人魚を見るために、東京での生活もすべて片づけて来たのだから、いまさら後ろ髪引かれることもないのだ。
猗窩座が本土に戻ったとき、ときどき顔を会わせる壮年の男がいた。
五十代くらいだろうか。
漁村の男らしく、赤ら顔に強靱な体つきをした男だった。
「これは前田まさお。俺に人魚の狩り方を教えてくれた人だ」
猗窩座が友達を連れてくるなんて、おったまげたなあ。前田は破顔して、猗窩座の手をがっしりと握ってくる。
「ほんで、おまえさんも人魚捕りに来たんかいな」
前田の質問に、杏寿郎はぽかんとした顔で、いいえ、人魚を見に来ただけです、と答えた。
長身の青年に期待していた返事とは違っていたのか、前田の顔に僅かな失望の色が過ぎったが、すぐに笑顔を浮かべて言う。 >>412
書いとる奴は向こうのスレのまーんか
自分のとこに最初から投下すればええねん 「そうなんか。ほんなら、いっぺん人魚狩りに連れて行こか。人魚なんか腐るほど見れるで」
「ダメだ。連れて行こうとするな。こいつは、人魚の相手なんて絶対できない」
「猗窩座、つれないやっちゃなあ。ええわ、わいもおまえの友達なんか手ェ出さへんわ」
そう言いながらも、前田の顔は、にこにこと笑ったままだった。
人の良さそうな笑顔である。
前田おじさんは、ほかに幾人かの船乗りとチームを組んで、かなり昔から人魚狩りを続けてきたと言う。
国内にいくつもない人魚の涙の供給元でもあった。
狩りのノウハウは伏せているものの、業界では、かなり名高い人物であるらしい。
「おまえさんもこいつの事情知ってるか? こいつが初めてわいのところに来たとき、目から火花が散りそうな気迫でなあ。
この気迫なら人魚なんかなんぼでも捕りよるわ思うて、わいがいろはから教え込んだんや。
弟子なんか滅多に取らへんのだがな、こいつはちと違てたっちゅうわけや」
しかし、猗窩座がそれ以上は過去の話をしたがらなかったので、話題は、そのまま前田の人魚狩りの話に移っていった。
若い頃、初めて人魚に会ったときから始まって、同士を募って人魚狩りを始めた話。
これまで出会った人魚たちや、それに絡んだ武勇譚まで。
話の種は、尽きることがなかった。
杏寿郎にとっては、ただただ興味深い話ばかりである。
「わいらがどないにベテランでもな、人魚狩りが命懸けの仕事っちゅうことは変わらへん。
これまで何人も死んでしもてるし……ちとでも油断したら、海に引きずり込まれるんは一瞬やで。
わいもおまえの腕前は信じとるがな、猗窩座、ようけ気ィつけへんといかんで。
おまえの事情はようわかっとる。
でもな、おまえの意志だけではどうにもならへんちゅうことは、おまえがいちばんわかっとるやろう」
それが、その日、前田が最後に言った言葉だった。
船に戻る道すがら、杏寿郎は、猗窩座にそっと尋ねる。
「昔のこと……話してくれないか? 君が人魚を狩るようになったときの話」 猗窩座が足を止めた。
あ、ダメだっただろうか。
杏寿郎がびくりと肩を震わせたとき、猗窩座が口を開く。
「焼酎、もうちょっと買い足して行こうか」
アルコールの匂いの中、猗窩座の長い物語が始まった。
大学生のときだった。
二回生だったか三回生だったか、ちょっと覚えてないが、とにかく……いまから五、六年前くらいか。
その頃は、この島も結構有名な観光地で、夏休みに家族全員で南海に来たんだ。
船でこの島に来て、一晩泊まったら帰る予定だったんだが……そのとき人魚が現れた。
家族全員で海岸を散歩していたんだ。
あそこの絶壁あるだろ。
そこを歩いてたら人魚が現れて。
噂でだけ聞いてた人魚が現れたんだから、すごい不思議だろ。
それで恋雪が先に近づいたんだ。
あ、恋雪は兄の嫁な。その後に兄が続いて。
父さんが「危ないから戻って来い」って連れ戻そうとしたとき……そのとき、全員が引きずり込まれた。
俺はそのとき逃げてたんだ。
必死に走りながら振り返った瞬間、最後に母さんが引きずり込まれるのが見えた。
だから母さんを拐った人魚は覚えていたんだ。
あんなに暗かったのに、尾鰭が真っ青に光るのが見えて。
必死に逃げ続けて、我に返ると自分しか残ってなかった。
そのときは、なにが起きたのかもわからなかった。
夜が明けるまで浜辺で呆然と座ってたら、ちょうどそこを通りかかった島の人にどうしたのかって訊かれて、そのとき初めて涙が出た。
俺はいったいなにをしてたんだろう。自分だけ生き残ろうと逃げ出して、本当に自分だけ生き残ったんだって。
それから島の人に事情を話すと、みんなに諦めろって言われたな。拐われたら終わりだって……全部食い尽くされるって。
うん……それで一旦東京に戻って、親戚を集めて遺体もない葬儀を上げたんだ。
母さんや父さん、狛治恋雪の遺影の前に座ってたら、あいつら全部見つけ出して殺してやらないとっていう考えしか浮かばなくてな。
伯母さんが俺を抱きしめて、「猗窩座、どうすればいいの」って泣いてたけど、俺は「どうするもこうするもないだろ。殺してやらないと」って言ったよ。
そしたら伯母さんは「バカなこと言わないで」って、さらに泣き出すし……。
とにかく、伯母さんに手伝ってもらって財産も整理したら、まとまった金ができたんだ。
人が死ぬと、あんなに金ができるんだな。
でも、そんな金があったって、どうする?
両親も兄義姉も死んだ天涯孤独の身で、なにを楽しみに生きるんだ。
だから大学を休学して、もう一度ここに戻って来たんだ。 こういうのって書きあげてから一気に落とすものやないんか そしたら、南海の人たちも、みんな俺のことを覚えてて。
ご不幸があった、あのときの青年じゃないかって。
そこで新しく住むところも見つけて、町の人たちにあれこれ聞いて回ったんだ。
船も買わないといけないし、操舵術も習わないといけないしな。
そうしてるうちに、前田と知り合ったんだ。
なんで船が欲しいんだって訊かれて、人魚を狩るためだって答えたら、ついて来いって言われてね。
そのまま前田のチームに入れてもらって、船の動かし方とか人魚狩りの技術を教えてもらった。
銛投げの練習は、本当に死ぬほどやったな……三ヶ月くらい修行してから初陣に出て、それから二年くらいは、前田のチームで人魚を狩ってた。
でも、前田の狩りは涙を採るための狩りで、俺は……ちょっと違うだろ。だから、どんどんもどかしくなってきてな。
母さんを拐った人魚だけは、絶対に狩らないといけないし。
だから前田に、「もう止める。これからはひとりでやる」って言って、船を一隻買ってこの島に来たんだ。
金はたくさんあったし。
ほら、涙って高く売れるだろ。
その頃は、もう……この島は荒れ放題だった。
俺の家族が休暇で来たときが、人魚がこの島に出没し始めてた時期だったんだけど。
あいつらがここに巣くったせいで、毎晩惨事が起きるもんだから、島の人たちも耐えられなくなって、みんな本土に逃げて行ったんだ。
島はもうガラガラで、電気もなにも全部切れた状態だったんだが、村長がいろいろ措置を取ってくれて……俺しか住んでないのに、電気も引いてもらったのだ。
ほかにも、いろいろと便宜を図ってくれてな。
人魚の涙をいくつかやったら、ずいぶん喜んでくれた。
まあ、とにかく、そうやってひとりで暮らし始めたんだ。
ひとりで狩りなんかしたら、すぐに死ぬんじゃないかと思ってたが、習ったとおりにやったら、やれないこともなかったな。
そうしてるうちに、ついに母さんを殺した人魚を見つけたんだ
。あぁ、狩った。
あそこの壁に、皮が掛けてあるだろ。あれが母さんを拐った人魚だ。
そう、青いやつ。
あれは生け捕りにした、網で。
滅茶苦茶大変だったけど、とにかく捕まえて、陸に上がってから殺したんだ。
全身が必要だったからな。
それで、どうしたのかって?
ああ、食べたよ。
殺してから何日もかけて全部食べた。人間の上体は豚肉みたいな味で、下は見た目どおりに魚だったな。
ものすごく不味い魚。
冷凍室で一年くらい眠ってた鱈みたいな味だぞ、ホントに……。
殺すのより食べる方が大変だった。
豚肉みたいな味の方は、まあ、そこそこ食べれたけど、下の魚の方は本当に大変だった、不味くて。
最初は刺身にしたり、色々和えたり、焼いて食ったり、蒸して食ったり……鍋にもしたかな。
食べきるまで何日もかかった。
俺、それからは、鱈だけは絶対に食べない。
最後の一切れを噛みながら……あのとき、かなり泣いた。
母さんや家族に赦しを乞いながら、あの固い肉を噛んでた。
赦してもらえたかはわからないけど……少なくとも家族に合わせる顔はできたかなって。
そういう気持ちになったな。 2時間以上張り付いてるみたいやし、何か食いながら書き込んどるんやろな 誰も読まんから自分でアンカーレスして楽しく読んでますとか書いとるんや もしかしてキャラ名変えてるだけでどっかからぱくってきた荒らしちゃうか? いつの間にか潤んだ瞳で自分を見つめている杏寿郎の頭を、猗窩座は少し乱暴に、くしゃっと撫でた。
そんな顔するな。もう過ぎたことだ。
焼酎を注ぎながら猗窩座が尋ねる。
「ところでお前はさ、どうしてそんなに人魚が見たいんだ? ただの好奇心か?」
杏寿郎は、少し間を置いたあと、小さな声で答えた。
「その……人魚が人を拐うとき、世界でいちばん会いたい人の顔をして現れるって聞いてな」
「それで?」
「会いたい人がいるんだ」
猗窩座は、杯を干したあと、はっきりと言い切る。
「それ、全部うそだぞ。そんなこと信じてたのか?」
「うそなのか……」
杏寿郎は、ただ頷いた。
人魚のことは、俺より猗窩座の方がずっとよく知ってるもんな。
そう呟きながら。
猗窩座が失った家族をいちばんよく思い出すのは、船を走らせて海に出向くときだった。
数年前も今も、暗い海の風景は、なにも変わらない。
不変な闇の中へと漕ぎ出すたびに、悪夢は、見飽きた映画のように繰り返された。
一寸先も見えない深淵へと引きずり込まれる家族。
耳にこびりついた断末魔は、真っ青な色彩で猗窩座に襲いかかる。
無我夢中で逃げながら振り返ったとき、ちかりと月明かりを弾いた人魚の尾。
真っ暗な闇の中でも、目に沁みるほどに青く光ったあの色。
その青と共に、一瞬にして暗闇に引きずり込まれた母さんの姿。
暗闇は、いつも古い記憶を呼び覚まし、毎日新しく憎悪を塗り重ねていった。
船のモーター音が、海の静寂を切り裂いていく。
猗窩座の船は、暗闇を手当たり次第に掻き回した。
煌々と点灯させたライトのせいで、周りの闇は、さらに濃くなるばかりだったが、航路を見失うことはない。
猗窩座には、あまりにも慣れきってしまった海である。
船を操りながら、猗窩座は、五感を研ぎ澄ませた。
人魚の尾が水面を打つ音、人魚の垂れ流す臭気を追って。
今日は現れないのか。そう思って引き返そうとした瞬間、生臭い臭気が鼻先を掠めた。
猗窩座は、その臭いを逃がすことなく追い始める。
臭いがますます濃くなり、吐き気がするほどになった頃、猗窩座は、船のエンジンを切った。
そして、デッキに静かに座り、虚空を見つめながら待つ。
猗窩座にはなにも見えない暗闇の中で、人魚が猗窩座を見つめているはずだ。
自分に子を孕ませ、懐妊中の養分になる男として、人魚は、慎重に猗窩座を見定めている。
猗窩座は、いくつもの視線に身を晒したまま、忍耐強く待ち続けた。 総受のほうも違うタイプの荒らしがずっーと沸いとんねんこれと同じやつだと思う
目的は一緒で煉獄推し者同士を争わせること
火種をまくか水さすか
それだけ知っといてほしい なんかこの間ここに長文落としたい言ってたまんさんいたやん?
そいつだと思うわ 総受けの荒らしは煉獄さんや鬼滅人気が面白くないやつのしわざだと思うで ばしゃり、と水音がする。
猗窩座は、ゆっくりと顔を上げた。
人魚の白い腕が船の欄干に掛かる。
次いで、小さな顔が現れた。
長い黒髪を豊かに流した顔を見て、猗窩座は、小さくせせら笑った。橋本環奈に似てるな。
嗤う猗窩座につられて、人魚も小首を傾げながら、訳もわからず微笑んだ。美しい微笑である。
人魚が欄干に手を突き、船へと身を乗り上げた。
半分ほど現れた裸身の上体は、人間の女と寸分違わない。
その白く滑らかな身体に、すべての男が本能的な欲情を覚えるだろう。
美しい上体の下に、怪物の尾が続いていることを知っている、ほんの一握りの狩人を除いては。
「お話しましょう」
「退屈なのか?」
「退屈です。わたしと一緒に遊びましょう」
まだ幼い人魚である。猗窩座にねだる声は、まだまだ頑是ない。
「俺がだれなのか、知らないのか?」
「人間でしょう?」
「人間だけど、どういう人間なのかは知らないんだな。あんたの姉さんたちが教えてくれなかったのか?」
「わたしはなにも知りません」
猗窩座が吸い寄せられるように近づくと、人魚が焦れたように身をくねらせた。
手を伸ばして、猗窩座の頬に掌を滑らせる。
「あなたは美しいですね。ほかの人間よりも、ずっと」
「あんたもね。美人だ」
猗窩座の頬を撫でていた手が、顔から首、肩へと下りて、最後に腕を掴んだ。
じっとりと濡れた不快な感触に、猗窩座は、顔を顰める。
「一緒に海へ行きましょう」
「そうしようか」
猗窩座の返事と同時に、人魚が大きく顎門を開いて牙を剥いた。
しかし、猗窩座の方が速い。
細い腕を掴んで船上に引きずり上げると同時に、人魚の白い背中へ躊躇なくナイフを振り下ろす。
鮮血が吹き出した。
ばたつく人魚をぐっと押さえつけ、猗窩座は、何度もナイフを突き立てた。
顔に熱い血が飛んで、視界が赤く滲んだが、刃が肉を貫く感触は、見ずともわかる。
びちびちと跳ねていた人魚の痙攣が弱まり、やがて完全に止んだときになって、やっと猗窩座は、ナイフを振り下ろす手を止め、返り血にまみれた顔を拭った。
口にまで血が入り、舌が粘ついて生臭い味がする。
猗窩座は、ぺっと唾を吐き出した。
俯せに倒れている人魚の死体をひっくり返すと、先ほどの化け物じみた形相はどこへやら、例の美しい顔を青ざめさせて絶命していた。
たおやかな首筋から続く白い乳房は、まだ柔らかさを保ったままである。
上体ばかりは、人間の女とまったく同じだ。
いつ見ても、本当に神秘的で美しい生物である。
質の悪い狩人の中には、死んだ人魚を屍姦する者もいるらしいが、その欲情もあながち理解できないものではない。
しかし、こんな食人怪物を犯すくらいなら、犬の相手をした方がマシだ。
猗窩座は、常々そう思っている。
尾の鱗を開いた奥にある人魚の生殖器は、もちろん猗窩座も見たことがあった。
上体は人間の女とまったく同じだが、生殖器は似ても似つかない。
まるで鯖の赤身のように赤く黒ずんだ生臭い狭間である。
そこに自分のものをぶち込むだなんて、想像したくもない。
最後に心臓を突き刺して、とどめを刺した。
白い谷間が鮮血で赤く染まる。 一匹目を片づけると、周りからばしゃばしゃと水音が立った。
猗窩座を狙って船の周りに潜んでいた人魚が、同族が殺される様に、青くなって逃げ出しているのだ。
バカなやつらには、こうやって見せつけてやらないと。
そう呟いた猗窩座は、波間にちらつく白い影に銛を投げて、さらに二匹を狩った。
海が完全に静まり返る。
人魚がすべて逃げ出したのだ。
収穫はたったの三匹だが、猗窩座は、それなりに満足していた。
船上で伸びている白い死体があるからだ。
遠距離武器を使えば、間合いに引き込んで殺すよりも、ずっと大量の人魚を殺すことができる。
しかし、銛を投げる狩り方など、直接人魚の体に刃を突き立てる快感とは、比べものにもならない。
猗窩座は、自分が殺戮の快楽に囚われていることを自覚していた。
しかし、いかなる罪悪感も感じてはいない。
人魚は食人怪物で、自分は人間の一員として、復讐のために海をさまよう存在だから。
船体に提げた網に人魚の死体を入れ、デッキの血溜まりを適当に拭き取っていると、遠くから自分を睥睨する視線を感じた。
顔馴染みの人魚が一匹、静かに水面上へと現れて、じっと猗窩座を見つめている。
どの人魚よりも黒い髪と黒い瞳を持つ彼女は、下肢の尾までもが漆黒だった。
その漆黒の尾は、これまでに見たどの人魚よりも大きく威厳があることを、猗窩座は知っている。
人魚が猗窩座に挨拶した。
「久しぶりね」
「そうだな」
人魚の女王である。
群れの移動を先頭で導き、もっとも多くの子を産んで、群れの頂点に立つ大きな人魚。
彼女を指して、狩人たちは『女王』と呼んだ。
人魚に人間の政治体制があるはずもないが、狩人たちは便宜上、もっとも身近でふさわしい称号を人魚の頭に贈ったのである。
人魚にもっとも非情な形で接する狩人にすら、アンデルセンの植えつけた浪漫は、このような形でうっすらと残っていた。
女王が注意深く船へと近づいてくる。
女王は、猗窩座が自分を殺しはしないということを知っていた。
船の脇に括りつけられた死体を見て、柳眉を顰める。
「この娘は成年になったばかりなのよ」
「それで?」
「死ぬには、まだ若すぎる」
「俺の義姉も十六歳だった。死ぬには、まだ若すぎた」
女王は、返事をする代わりに、網の中に指を差し込んで死体の頬を撫でた。
「可哀想に。とても可愛がっていた娘なの」
「あんたが産んだ子なのか?」
「わたしが産もうが産まなかろうが、みんなわたしの子よ」
「俺には近づくなって教えておけばよかっただろう」
「あなたは、わたしたちにとって、とても魅力的な男よ。どんなに言い聞かせても、娘たちがあなたに惹かれてしまうんですもの。仕方のないことだわ」 >>437
ごねてる奴がおったな
向こうで投下すると向こうのスレを荒らしたことになるから
こっちでやっとるんやろ >>444
それが本気で住人なら
結局どっちも荒らしてるわけだな
住人ならだが… このスレ潰したがって投下してる長文まんさんは向こうの1やないんか?
自治で嫌われて閑古鳥になったのをこのスレのせいやと思ってそうやで 猗窩座は、嗤う。
「なんでも仕方のないことだって言うんだな」
「そのとおりですもの。わたしの娘たちがあなたの家族を殺したことも、あなたがわたしの娘たちを狩ることも、すべては仕方のないこと。わたしはそれを理解します。あなたは理解できないようだけれど」
「ポカホンタスみたいなことを言いやがって。自然のサークルがなんたらって話がしたいんだろ?」
ポカホンタスがなにか知らない女王は、きょとりと小首を傾げるのみ。理解できない言葉には答えず、猗窩座と顔を合わせるたびに言う台詞を繰り返した。
「いつか必ずあなたを食べるわ。あなたを食べて、あなたの子を産んでやる」
「好きにしろ。女王に食われるなら、それもまた光栄だな」
女王は、それ以上なにも言うことなく、静かに身を翻す。
猗窩座は、ゆっくりと泳ぎ去る女王の後ろ姿を、長い間、睨みつけていた。
いま銛を投げれば、容易く女王を殺すことができる。
しかし、いま女王を殺すつもりはない。
女王を殺すのは最後、あいつの娘たちを全滅させたあとだ。必ず殺してみせる。
どんなに時間がかかろうとも、いつか、必ず。
猗窩座は、船のエンジンをつけた。
モーターが回転し、静寂だった海に、けたたましい騒音が戻る。
船を動かして、銛で刺殺した人魚二体を回収した。
その死体も網に入れて、近辺の海をぐるりと一周する。
船の軌跡に沿って、人魚の血が海水を染め上げた。
血の臭いは、遙か遠くにまで広がり、噎せ返るような同族の死臭の中で、人魚たちは今夜、悪夢に苛まれるだろう。
人魚は臭いに敏感だ。
同族の死臭を嗅ぎとるだけではない。猗窩座が人魚の臭いを嗅ぎとるのと同じように、人魚たちも猗窩座の匂いを敏感に嗅ぎつけた。同族を殺す若く美しい狩人は、その行動が恐ろしく残酷な分だけ、抗えない強さで人魚を惹きつけて魅了する。
その魅惑的な男の匂いに、人魚は、自分が殺されることを知りながらも、猗窩座に近づかずにはいられない。
死すらも顧みない繁殖欲だなんて、どこまでも浅ましい獣ども。
猗窩座にとっての人魚は、どこまでも汚らわしい種族だった。
家に船首を向かわせる途中、船の動きに僅かな違和感を感じた。
船を止めて調べてみると、死体を入れた網とは反対側の網に、人魚が一匹、生きたままで引っかかっている。
船に忍び寄る最中に、網に絡まってしまったらしい。
怯えきった目で、網から抜け出そうと狂ったように身を捩る人魚。
しかし、がっちりと絡まった網は解けやしない。
そのまま殺そうと思ったが、すぐに思い直した。
そろそろ涙も必要になってきたし、涙を採って……そうだ、杏寿郎。
杏寿郎に見せてあげよう。
杏寿郎は、リビングでDVDを観ていた。
帰ってきた猗窩座を満面の笑みで出迎える。
「早めに帰ってきてくれてよかった。今日は帰ってこないんじゃないかと思って、すごく怖かったんだ」
「なんで?」
「ホラー映画を観てしまって」
「なに観たんだ?」
「ファイナル・デスティネーション」
「ひとりなのに、なんでホラーを観たんだ。怖がりのくせに」
「こんなに怖いとは思わなかったんだ」 部屋に上がりながら、猗窩座は、血で濡れたTシャツを脱ぎ捨てた。
「でも、猗窩座の方が怖いな」
「くくっ、そうか?」
そうは言うものの、杏寿郎は、猗窩座のTシャツを受け取って、洗濯室に持っていく。
最初は、人魚の血を怖がって触ることもできなかったのだが、猗窩座が血塗れの服をそのまま洗濯機に入れるのを見て、自分が洗濯すると言い出したのだ。
軽く手洗いしてから洗濯機に入れないとダメだと小言を言いながら。
それで、果たしてどうなるのかと、猗窩座がこっそり見ていたら、服から滲み出る大量の鮮血に、杏寿郎は吐き気を催していた。
杏寿郎は猗窩座を揶揄しながら服を取り上げようとしたが、杏寿郎は頑として頷かず、結局、最後まで血塗れの服を洗濯しきった。
食わせてもらってる分は働かないと、と言いながら。
家の掃除は大雑把なくせに、妙なところで細かい奴だ。
お互い気にするところが違う自分たちの姿に、猗窩座は、杏寿郎と自分は結構よく合うルームメイトじゃないかと考えた。
浴室に向かっていた猗窩座は、ふと思い出して、杏寿郎に声をかける。
「そうだ。今日、人魚を生け捕りしたんだ」
「本当か?」
「明日、見てみるか?」
「うむ!」
明るい杏寿郎の声に、猗窩座は、嬉しくなった。
人魚狩りをする中で、このような種類の満足感を感じたのは、初めてのことだった。
まだ初夏なのだが、燦々と浜辺を照らす日差しは、早くもすでに熱い。
猗窩座は、朝早くから杏寿郎を起こした。
気温が上がる前に行かないと、と言って。
杏寿郎は、まだ眠たい目を擦りながら、猗窩座の後ろを追う。
猗窩座は、家から少し離れた松林に杏寿郎を連れていった。
途中の浜辺で、杏寿郎は、ビーチサンダルの中に砂が入ってくると大袈裟に騒いだ。
いっそのこと裸足になれと言う猗窩座に従って、喜々とサンダルを脱ぎ捨てる杏寿郎。
裸足に触れる、さらさらとした砂の感触が気持ちよくて、杏寿郎は、わざわざ波打ち際にまで走り回り、結局、足を濡らしてしまった。
人魚は、松林の入り口側にある、小さな溝に拘束されていた。
海からの波が森の中にまで入り込み、小さな湾を作っているのだ。
溝の水は澄んでいて、まるで淡水の泉のようだ。
溝に胸まで浸かった人魚は、疲れたようにぐったりとしていた。
杏寿郎は、少し怯えた様子で、そろそろと人魚に近づいていく。
「大丈夫。縄は絶対に解けないから、好きに見ていい。触ってもいいし」
猗窩座の声に、人魚がうなだれていた顔を上げた。
猗窩座の姿に眉を顰めて顔を逸らした人魚は、自分をじっと見つめる杏寿郎に気づいて、彼に目を合わせる。
青く澄んだ瞳が、杏寿郎の瞳とかち合った。
薄く血管が透けるほどに白い肌。
そこに埋め込まれた青い瞳は、宝石のように美しかった。
長い黒髪が、胸の辺りまで豊かに波打ち、髪に覆われた胸は、呼吸に合わせてゆっくりと上下する。
乳首まで露わな乳房を見て、杏寿郎は、少し顔を赤らめた。
胸から目を逸らして、しばらくの間、脇腹にある鰓に留まっていた杏寿郎の視線は、尾の方へと下りていく。
臍の下の辺りから小さく生え出す鱗が、長く大きな流線型の尾を細かく覆っていた。
その尾は、網で引きずられたせいで、すっかり傷だらけになっていたものの、玉虫色の鱗は、朝日に照らされて、美しく輝いている。
流線型の尾の末端に付いている大きな尾鰭は、長く涼しげに伸びていた。
鰭を支える固い芯にそっと触れる杏寿郎に、人魚が神経質に尾をびちりと跳ねさせる。
しかし、それも束の間、杏寿郎はもう一度、人魚に近づいた。 猗窩座と暮らす中で、死んだ人魚はいくつも見てきたが、生きている人魚をこんなに近くで見たのは、初めてである。
杏寿郎は、好奇心に瞳を輝かせた。
「人間のようだな」
「でも少し違う。鰓もあるし、指の間には水掻きもある」
猗窩座の言葉に、杏寿郎の視線が人魚の手に向かう。
しかし、まず杏寿郎の視界に入ったのは、指の間にある薄い膜ではなく、猗窩座が固く縛り上げた荒縄のせいで、皮がめくれて血が滲んでいる人魚の手首だった。
「痛そうだ」
「昨晩、逃げ出そうと暴れてたんだな。無駄なことを」
「可哀想」
猗窩座は、肩を竦める。
杏寿郎は、ゆっくりと人魚の頬に触れた。
自分に同情していると目敏く悟った人魚は、杏寿郎の手に大人しく自分の頬を預ける。
悲しげに瞼を伏せてみせる人魚に、猗窩座は鼻で笑った。浅ましいやつらめ。
しかし杏寿郎は、とても人魚が気に入ったらしい。
「すごく綺麗だ」
「まあ、確かに綺麗だな」
「殺さずに飼ったらダメだろうか?」
「バカなこと言うな。どこで飼うんだ」
「あっちの浜辺を網で囲んで……ダメだろうか?」
「ダメ」
猗窩座は、すげなく切り捨てる。杏寿郎も、それ以上はねだらない。
そのとき、人魚が言った。
「助けてください」
精いっぱい哀れな瞳をした人魚が、杏寿郎に哀願する。
杏寿郎も、人魚と同じ表情で猗窩座を見上げた。
猗窩座は頭を振る。
ダメだそうだ、と杏寿郎は人魚に囁いた。
日差しは、さらに強まるばかり。木漏れ日の範囲が広がると、人魚が日差しを避けて身を捩る。
「杏寿郎、見終わったなら、先に戻ってろ」
「なぜだ?」
「いまから涙を採るからだ」
「それで?」
「すごく残忍なんだ。首をはねないといけない。見ない方がいい」
「見る。気になる」
「後悔すると思うが」
「大丈夫だ」
猗窩座の言葉に、人魚が狂ったように暴れ出した。
あちこちに水が跳ねて、杏寿郎と猗窩座の服を濡らす。 猗窩座は、びちびちと跳ねる尾をぐっと踏みつけて縛り上げ、荒縄の端を木の幹に括りつけた。
人魚の腰の辺りにも荒縄を回して固定させた後、ナイフを取り出す。
お願い、止めて、止めて。 人魚が悲鳴を上げた。
杏寿郎は耳を塞ぐ。
猗窩座は、人魚の背後に周り、その首にコップをつけた。
次いで、人魚を羽交い締めにし、思いっきり首を仰け反らせては、ぴんと張った喉笛にゆっくりとナイフを突き入れる。
激痛に人魚の息が荒くなり、目尻から大粒の涙が零れ落ちた。
その涙は、瞳から流れた瞬間に凝固して、透明な真珠のように変わる。
砂浜にころころと涙が転がり落ちた。
猗窩座が、人魚の首に刺し込んだナイフをゆっくりと横に引く。
その軌道に沿って、鮮血が吹き出した。
コップを瞬く間に満たしてなお溢れ出す血は、人魚の上半身のみならず、溝の澄んだ水をも真っ赤に染め上げる。絶命しつつある人魚の目から、涙が零れ続けた。
生臭い血臭が四方に広がる。
杏寿郎は、耐え切れずに顔を背けた。
よろめきながら立ち上がり、傍の木に手をついて嘔吐し始める。
だから言ったのに。
猗窩座は、片目を細めて、薄く笑った。
人魚が完全に息絶えたときになって、猗窩座は、人魚の体を解放する。半分ほど首の掻き切られた死体が、だらりと伸びて転がった。
胃の中のものをすべて吐き出した杏寿郎が、口元を拭いながら猗窩座を振り返る。
「それ……絶対にそうしないといけないのか?」
「人魚は苦しいときにだけ涙を流すんだ。生皮を剥いでもいいし、四肢を一本ずつ切り落としてもいいし、やり方はいろいろあるんだが……これがいちばん簡単で楽だから」
そう言った猗窩座は、人魚の首につけていたコップをゆっくりと解いた。
コップになみなみと溜まった人魚の血を一気に飲み干す。
杏寿郎は、ぎょっとして顔を顰めた。しかし、好奇心の虫は止められない。
「それはなぜ飲むんだ?」
「人魚の毒に耐性がつくんだ」
「人魚には毒もあるのか」
「牙に毒がある。ときどき噛まれることもあるからな。致死毒ではないんだけど、麻痺させるくらいの毒性はあるから……こうやって予防するわけ。お前も飲むか?」
杏寿郎は、またもや背を向けて、嘔吐き始めた。 このまんさん、猗窩煉スレで長文落とせなくなってここに落としてるんじゃないの 砂浜に落ちた涙をしっかりと回収した猗窩座は、適当に水で濯いだあと、持参していた瓶の中に入れる。
まだ血を流している生々しい死体に、杏寿郎は、何度も嘔吐いたが、猗窩座の傍から離れることはなかった。
猗窩座は、松の木から荒縄を解き、人魚の死体を火葬場にまで引きずっていく。
昨夜、捨て置いていた死体は、海辺の熱い日差しの下、早くも腐臭を放ち始め、蠅が集っていた。
だから夏はイヤなんだ、と猗窩座が眉間に皺を寄せる。
死体を一ヶ所に集め、適当に油を撒いたあと、火を点けた。
一瞬で火炎が燃え上がり、蛋白質の燃える嫌な臭いが充満する。
こんな暑い日に、火の傍に立っていたせいで、あっと言う間に汗だらけになってしまった。
猗窩座は、血に濡れた服をすべて脱ぎ捨てて、裸のまま海に向かって走っていく。
猗窩座の日に灼けたなめし革のような裸身は、あちこちが傷だらけだった。人魚との戦いで負った傷跡だろう。
眉一つ動かさずに人魚の首をはねた猗窩座を見た今になって、ようやく杏寿郎は、猗窩座の人魚に対する激しい憎悪を垣間見た気がする。
沈着に人魚の首を裂く手つきは、猗窩座が焼酎を飲みながら語った過去よりも、ずっとダイレクトに杏寿郎の胸を打った。
明るい日差しの下で見た人魚は、本当に美しかった。
杏寿郎は、一瞬にして魅了されていた。
その魅惑を迷いなく断ち切る姿から、猗窩座の傷の深さが見て取れる。
美しい浪漫のような人魚。
しかし、猗窩座にとっては、決して癒えない傷であり、残酷な現実に過ぎなかった。
一瞬で家族を失い、天涯孤独になってしまった青年。
憎悪がなければ耐えられなかっただろう。
憎む対象があったからこそ、猗窩座は、だれよりも強く生き延びることができたのだ。
海水で返り血を洗い流し、濡れた髪を掻き上げた猗窩座は、ついでとばかりに泳ぎ始めた。
海岸からずっと離れたところにまで泳いで行ったかと思うと、大きく手を振って杏寿郎を呼び寄せる。
杏寿郎も服を脱いで海に飛び込んだ。 ここはここでしたらば避難か何か考えた方が良さそうですよ
総受はまた別に考えないとだがおそらく同じ荒らし >>455
したらば誘導で追い出しかいな
荒らしが出るとスレが加速するだけや 今まで煉推し同士を争わせてきたが総受け側でつい先日ばれて釣れなくなってきたので暴れてる可能性あり
そもそもここのボーイ達を追い出した攻撃的な口調、それから後も総受けスレで千杏も炭煉も同じ口調でやらかしたが同じこいつ荒らしだった可能性あり
出てけ!がとにかく主張なんだわ ここは落とすスレだからいいんじゃ
総受けは何か考えるか我慢するか >>459
荒らすと増殖するのがこのスレやで
向こうのことは向こうでやれや >>459
落とすスレ?
んなわけあるか何レスしてんねん ここ板違いじゃん
それに総受けにわざわざ貼りにくんな >>462
やめな
貼ってるのがそもそも荒らしかもしれないから ともかく荒らしが向こうとここで争わせたいのは分かった へとへとになるまで泳いだ二人は、ろくに服も身につけずに家路を歩く。
無人島だからできることだと笑い合いながら。
「生きている人魚を見た感想は?」
「うむ……すごく綺麗だな」
「あとは?」
「すごく不思議な感じだ」
断片的に人魚の感想を述べていた杏寿郎が、ほかの話題を持ち出した。
「でも、君の言ったとおりだな。その……人魚が会いたい人の顔になるって話。それ、本当にうそなんだな。全然知らない顔のままだったから」
猗窩座は、僅かな沈黙を挟んで答える。
「だから全部うそだって言っただろ」
「うむ……本当だったらよかったのに」
杏寿郎が語尾を濁すと、隣を歩いていた猗窩座が、杏寿郎の前に回り込み、目を合わせて尋ねた。
「だれにそんなに会いたいんだ?」
「そういう人がいるんだ……」
猗窩座は、それ以上食い下がることなく、ただ黙って足取りを早めた。腹空いた。
昼飯はなににしよう。
玄関に上がる直前、不意に猗窩座が口を開く。
「人魚狩り、付いて来てみるか?」
杏寿郎は、迷うことなく頷いた。
本土に上がることは、それほど特別なことではない。
しかし、その日の猗窩座は、やけに小綺麗な格好を選んで身支度をしていた。
東京から来る宝石商に会うらしい。
猗窩座は、涙を保管している木箱を開けて、一つずつ見定めながら、売り物にする涙を選り分けていった。
杏寿郎は、瑕があると言って避けられた涙を一つ手に取って、じっくりと見つめてみる。
一見すると、ただのガラス玉に見えるのだが、五色の透明な表面が薄く金色がかっていて、深みのある輝きを放っていた。
窓から差し込む日差しに透かしてみると、淡く金色に輝き出す。
確かに高価で取引されるだけの宝石だった。
軽く噛んでみると、固い硬度が感じられる。
「強く噛むな。歯が欠けるぞ」
猗窩座が短く注意した。
スマートにスーツを着こなし、髪をオールバックにした三十代半ばの男は、猗窩座も初めて顔を合わせる相手らしかった。
「鬼舞辻無惨です。少し前から父の仕事を引き継いでおりまして、これからは、私が取引の相手をさせていただきます」 売り手と買い手は、前田の家に集まり、そのリビングのソファーに腰を下ろしている。
涙で巨額を手にしたという前田の家は、確かに豪華だった。
不思議な螺旋を描く欅材のテーブルに、猗窩座が懐から取り出した木箱を乗せる。
鬼舞辻は、その木箱を恭しい手つきで開けた。
中に入っている宝石にじっくりと視線を注いだ後、鞄から簡単な鑑定道具を取り出してテーブルの上に並べる。
杏寿郎の目には、すべて顕微鏡にしか見えない道具に、一粒ずつ涙を乗せながら、鬼舞辻は、なにやら細かく記録を取っていった。
退屈になってきた杏寿郎が欠伸をかみ殺した瞬間、鬼舞辻が感嘆の声を上げる。
「すべてすばらしい品質ですね。どれも最上品です」
「わいらのチームが出すブツは全部そうや。特にこの猗窩座は、わいの一番弟子やからな」
猗窩座より誇らしげな前田に相槌を打った後、鬼舞辻は、どうすればこのような品質の涙が採れるのかと、さりげなく探りを入れてきた。
杏寿郎にはわからない暗黙の了解が、ここに集まった男たちを結びつけている。
鬼舞辻の質問に、前田が頭を振った。
「それは猗窩座のノウハウやさかい、そないに簡単には言えまへんわ」
「いや、そんなに特別な方法でもない……ただ短時間で綺麗に首を掻き切るだけだ。変に欲張って、少しでも多くの涙を採ろうとだらだら拷問すると、返って質が落ちる」
猗窩座は、なんでもないように言う。
血生臭い話に、鬼舞辻は、反射的に顔を顰めたが、すぐさま事務的な姿に表情を戻した。
「こちらは一粒で三百、こちらは五百ずつで買い取りましょう。お得意さまですから、特別に勉強させていただいてるんですよ」
杏寿郎は、思わず目を丸くする。一粒でそんなにもするなんて。
涙は一握りもあるのに、これら全部で、いったいいくらになるのか、見当もつかない。
猗窩座は、ただ頷くのみ。
しかし、不満を示したのは、前田の方だった。
「あんさん、阿呆なこと言うたらあかんで! せやから猗窩座には、わいがぴったり張りついてへんといかんのや。ほんま世間知らずやさかい。
ほれ、よう見てみい。
これはな、ただの涙ちゃいまっせ。お父はんから『母の涙』も教えてもらわへんかったんか」
そう言った前田が、とりわけ大きな涙を摘み上げる。全員の視線が集まった。
「これや、これ。これこそが、母の涙やで。一粒で二千は付けてくれへんと。ネックレスや指輪にこれ付けたらなァ、軽く一億は下らへんわ」
「母の涙とは何だろうか?」
「子を孕んだ人魚の腹を裂いたときに採れる涙のことや。
ただ首を掻き切るときよりも、ずっと大粒の涙を流すんやがな、ほんま貴重なもんなんや」 いや創作スレいたことあるけど
1日でこんな長文を連稿する奴いねぇから オナニーやめろや
言うてんのに続けんのやからそら荒らしですわ 杏寿郎の質問に答えた前田が、もう一度、母の涙の美しさを強調する。
なにより自分こそがもっとも陶酔した目つきで、うっとりと宝石を覗き込んでいた。
「ほれ、見ぃ。普通の涙はただ金色に光るだけやけど、これはこうやって光に透かしてみると……紫色がかった青に光るねん。
上品で美しい色合いやろ。
この色こそが母性なんや、母性! 子のために泣く母性が滲む色やさかい、こないに寂しげで美しいんやな。ほんま貴重なもんやで」
杏寿郎も、母の涙をそっと摘んで、光に透かしてみる。
確かに、前田の言うとおりだった。
他よりずっと大粒な涙に、紫と青が入り交じった不思議な光が浮かぶ。
子を失った人魚の涙という宝石の由来に、杏寿郎は、沈んだ気持ちになった。
無機物であるはずの宝石から、切実な悲しみが伝わってくる。
「そんなに貴重だなんて、滅多に採れないものなんですか?」
「孕んだ人魚捕まえんのがどないに難しいか、わかって言っとるんかいな。人魚はなァ、いっぺん子を孕むと、巣の奥深くに隠れてもうて、外には滅多に出て来ぇへんのや。
捕ろう思て、捕れるもんやない。
わいらでも滅多に見れやせんわ。
いっぺん親父はんに訊いてみぃ。息子はんの方は、えらい鈍やなァ」
前田が、精いっぱい嫌みを言った。
いくら物知らずとは言っても、これは本当に呆れたという表情からして、母の涙とは本当に貴重な宝石らしい。
猗窩座は、前田が代行している交渉をただ見ているのみである。
「と言うことは、この涙は、妊娠した人魚の腹を裂いて採ったものなんですね」
そう言った鬼舞辻は、母の涙をそっと摘んで、もう一度、顕微鏡の上に乗せた。
由来を聞いてからでは、また違って見えるのか、先程よりずっと丁寧に涙を見回している。
次いで顔を上げた。
「確かに美しい……。ですが、変わった由来ですね。そんな話は初耳です」
「この話はな、宝石商の人らも、よう知らへんのや。
えげつない採り方やからな、狩人側があんまし口外せえへんようにしとる。もし都内の奥様方の耳に入ったりでもしたら、気味悪い言うて、売れんくなるかもしれへんやろ。
あんさんやから特別に言ったったねん」
そう言う前田だが、鬼舞辻は、それほどありがたくもないようである。
「まあ、確かにそうですね。
涙を売る者の立場で言えたものではありませんが……人間というのは、本当に残忍で強欲な生き物ですね。
こんなものを宝石にして身を飾っているなんて」
「綺麗事を言わないでくれ。これは人間の戦利品だ」 他人事のように傍観していた猗窩座が、初めて口を開いた。
鬼舞辻が驚いた顔で猗窩座を見る。
「あんたには、あまりぴんと来ないだろうが、人魚は人を食う。
人を拐って胤を取り、骨まで食い尽くす。
だから人間は人魚を殺さないといけない。
目には目を、歯には歯を。
それが野生の理。
あんたには、人魚の涙が残酷な由来の宝石に思えるかもしれんが、それは人間の復讐の証だ。俺たち人間は、それをいくらでも手にして喜んでいいんだ」
「そう……ですか。おっしゃることはわかりますが、」
「俺が涙を売っているのは、金が必要だというのもあるが、それだけではない。
俺は、我が国の女たちに、もっと多くの涙を宝石にして身を飾ってもらいたいと思っている。
人魚が命を落とした証拠である涙で、誇らしげに身を飾って見せつけてほしい。その欲望は、浅薄で貪欲すぎるほどいい。できれば、その光景をすべての人魚に見せてやりたいくらいだ」
猗窩座の気迫に、鬼舞辻は、反駁もできずに頷いた。
しばらくの沈黙の後、前田が冗談を言って、冷えきった場の空気を和らげる。
「猗窩座、その辺で堪忍したったれ。東京のぼんちがチビってまうわ」
「まったくそのとおりで」
鬼舞辻も、ぎこちなく笑って、それに乗った。
ずっと母の涙を見つめていた杏寿郎が、何の気なしに呟く。
「本当に綺麗だ」
杏寿郎をちらりと横目で見た猗窩座が、母の涙の中から一粒を手に取って、懐に戻した。
「これは、このまま持ち帰る」
由来を聞いて、たったの一粒も惜しくなった鬼舞辻が、必死の表情で倍の値段を付けると引き止めたが、猗窩座が意思を翻すことはなかった。
取引を終えて、鬼舞辻を見送った後、猗窩座は、肉を買ってくると言って外に出た。
前田は、家に残った杏寿郎を掴まえて、あれこれと喋り倒してくる。
杏寿郎も口数の多い方だったが、さすがに前田には勝てない。
それにしても、前田の話は、どれも面白い話ばかりだった。
どうして政府は人魚を管理しないのかという杏寿郎の質問に、前田がすっかり興に乗って喋り出す。
一九九五年に一度、政府が大々的な人魚掃討に乗り出したことがあったらしい。
そのとき、三十代半ばだった前田は、もっとも優れた人魚ハンターとして軍に招致された。
前田を中心にして、人魚の掃討チームが構成される。
小型軍艦まで動員して、人魚の群生地に向かうまではよかったのだが、結果は悲惨だった。
やけに霧の濃い夜だったらしい。先の見通せない霧の向こうで、人魚たちが一斉に歌い出したとき、若い軍人が皆、ふらふらと欄干に近づいたかと思うと、一斉に海に身を投げ始めたのだ。
手練れの人魚ハンターたちは、喉を嗄らして軍人の名前を呼び、なんとか目を覚まさせようとしたものの、人魚に誑かされて自ら身投げする彼らを止めることはできなかった。
前途洋々な数百人の若者たちが、焦点の合わない目をして、どぼん、どぼんと海に飛び込み、人魚と水面下に消え去る光景の、なんと恐ろしかったことか……。
空を旋回していたヘリコプターまでもが海に突っ込み、その場面がもっとも凄惨な光景だったらしい。 前田は、十五年が経ったいまでも、ときどきそのときの悪夢を見ると言う。掃討作戦に失敗してからは、人魚狩りは、民間人が合法でも違法でもない領域で扱う仕事になったのだと。
「人魚狩りっちゅうのはな、ほんまに難しいんや。
杏寿郎、おまえさんも人魚捕りに行って死にそうになった言うてたな。
わいも、あの掃討作戦のときに思い知らされたんやが、みんなそうなんや。なにか事情がない限り、人魚に勝てる人間はおらへん」
「事情というのは?」
「猗窩座もそうやし、わいもせやけど、わいのチームで人魚狩っとるやつらは、みんな人魚のせいでだれか失っとる。
猗窩座は家族、わいは弟やな。人魚への復讐心、憎悪があってこそ、人魚の誑かしよる誘惑に勝てるんや。
そうでない人間は、人魚狩りに行って生きて帰った例があらへん。
人魚に出会すとなァ、基本的に全滅や。わいらみたいに、だれかが死ぬ傍らで、ひとり生き残った人間だけが、憎悪を糧にして人魚を捕れるっちゅうわけや」
そうは言うものの、前田の目は、憎悪で青白く光る猗窩座の目よりも、ずっと柔らかかった。
歳を取るにつれて、憎悪も薄れていったのだろうか。
ただ涙を採るために、その憎悪を利用しているだけなのだろうか。
「でも……猗窩座と前田さんとでは、なんだか少し違う感じがします」
そう言う杏寿郎に、前田が猗窩座のことを話し出す。
「おまえさん、猗窩座が人魚狩ってるの、見たことあるか?」
杏寿郎は記憶を呼び起こした。
見たことがある。
人魚見たさに、なにも知らないまま船に乗り込んで、死にそうになっていたところを助けてもらった夜だ。
まるで殺人鬼のように人魚を殺戮していた黒い人影を思い出す。
「ほんなら、わかるやろ。
猗窩座の狩り方は、わいらのスタイルとはかなりちゃう。
わいらは涙を採るために人魚を狩ってるんや。
ほしたら猗窩座みたいに、手当たり次第で殺すわけにはいかんねん。
網を使ぅて生け捕りにせんとな。でも人魚はすばしこいねんで、生け捕りにするんは難しいんや。
あんま傷つけてもあかんし、暴れよる言うて殺すわけにもいかへん。
数人がかりでも難しい。
せやから人魚の涙は、ごっつ高いねん」
ああ。杏寿郎は、納得して頷く。もし猗窩座が人魚を狩っている分だけ涙を採っていたら、もはや涙は、それほど貴重なものではなくなっていただろう。
涙を採るためには、必ず人魚を生かしておかなければならない。
前田が、さらに詳しく説明した。
「でもな、猗窩座はちゃう。
あいつは復讐で人魚を狩ってるやさかい、出会い頭に全部殺したらええねん。
あいつが、わいのチームにおったとき、いちばん葛藤してたんはそこやった。
『前田、どうしてあいつら全部殺さないんだ』言うてたかんな。
結局、自分で船買うて出てったわ。
そりゃあ楽やろうよ。手当たり次第、銛投げて殺せばええんやから。
わいらとおるより、ずっと自分の目的を果たしやすいわけや」 そう言われて、なぜか杏寿郎は、人魚の死体が焦げる臭いを思い出す。
蛋白質の燃える不快で煙たい臭気が、幻覚のように杏寿郎の鼻先を掠めた。
猗窩座の心が五感で感じられるならば、きっとあの臭いを漂わせているに違いない。
前田さんの話から感じた猗窩座、自分が見てきた猗窩座は、絶えず心臓から黒い煙を立ち昇らせている人間だった。
「前田さんは、もう人魚が憎くないんですか?」
杏寿郎は、そう尋ねる。
「憎いとも。わいも若い頃は猗窩座みたいに、人魚と聞いたら手当たり次第で殺し回ったもんや。
でもな、それも一時のことやった。
いつからか復讐心も薄れて、涙目当てに変わったわけや。
よう金の味を占めたからやて言われるが、まあ間違うてはないな。
ほんでも、そっちの方がマシやで。
復讐心より金の欲で生きてく方が、心もずっと楽で、人間らしく生きることなんや。
うちのチームのやつらは、みんなそう思てる。
そりゃあ猗窩座は『自分はそうならない』言うてるがな、あいつもいつかは、わいらみたいになるやろ。
それにな、そうなった方がええねん」
おまえさんもそう思わんか? 前田は、そう言って、視線を合わせてきた。
「さっき猗窩座の言うてたこと、覚えとるか? 言葉の節々から真っ赤な血ィ滴らせよって……
一生あのまんまで行きてくなんてなァ、そんなん人の生きる道やない。修羅の道や」
そのとき、猗窩座がドアを開けて入って来る。
手に提げていた重たそうなビニール袋を揺らしてみせた。
「肉屋のおばさんが、おまけでカルビも付けてくれた。自分で味付けした手作りだからって」
「あのおばはん、ごっつうケチくさいくせに、猗窩座が行くたびにあの騒ぎや。
『男前な人魚ハンターはん、また来てくれたんかいな』言うてな。
全部知っとるで。
おまえがそないに男前やさかい、女言うたら老若関係なく我忘れて寄り集るねん。
おまえこそ人魚やないか、人魚」
「はは、そんなことないが」
前田の揶揄に、豊かな睫毛で覆われた目元を笑ませて笑う猗窩座は、翳りなど微塵もないように見える。その笑顔を見ながらも、人魚の燃える煙たい臭いが忘れられなくて、杏寿郎は胸を痛めた。
喪失の痛みが無限の燃料になり、燃え続ける火炎は消えやしない。
前田の言ったように、いつか時間が彼を解放してくれるのだろうか。
その夜の夕食は、焼肉パーティーだった。
前田の妻や娘も一緒になって食卓を囲む。
久しぶりの豪華な食事だった。 「俺、今度猗窩座に付いて、人魚狩りに行くことになったんです」
「ほんまか? わいにはあんなこと言いよってからに、猗窩座のやつ、どないしたねん」
「俺がしつこくねだったんです」
すると前田が、人魚狩りについて一頻り演説を始める。
食欲が失せると、妻が前田の脇を突っついた。
大学生になったばかりだという前田の娘は、杏寿郎に微かな関心を示している。
なんや、自分。
猗窩座は放りよって、杏寿郎ばっか見とるんかいな。
父の言葉に、娘は、気恥ずかしげに視線を伏せた。
そのくせ、杏寿郎お兄さんの方が綺麗やから、と言い放つことは忘れない。まさ子、俺はもう用無しなのか? 猗窩座の冗談に、真っ赤になった娘が、わたわたと手を振って、慌てふためく。
食卓に暖かい笑い声が弾けた。
人魚が出没する夜の海は危険なので、前田の家で一泊することになった。
猗窩座と杏寿郎は、就職で上京している前田の息子の部屋を宛がわれる。
杏寿郎が風呂から戻ると、猗窩座が小さな布袋を差し出した。
「これは、なんだ?」
袋を開けてみると、中には見事な母の涙が入っている。
「さっき、綺麗って言ってただろ。一つ取って置いたんだ」
「むぅ……大丈夫なのに」
「やる」
「だって、すごく高いだろう」
「高い値段を付けるから高いだけで、別にただの石ころだ」
猗窩座は、それ以上の問答は面倒だと言うように、床に敷かれた布団の中に潜り込んだ。
杏寿郎にベッドを譲ったのである。
二つの配慮に感謝を込めて、杏寿郎は微笑んだ。
「ありがとう」
猗窩座も、無言のままで、ただにこりと笑った。
電気を消す直前、杏寿郎は、母の涙を蛍光灯に透かしてみた。
紫がかった青が仄かに光る。
人魚が子のために流した涙。
子を想う心というのは、こういう色をしているんだろうか。
母の涙を布袋に戻した後、部屋の電気を消した。
一瞬で闇の帳が落ちる。
「おやすみ」
「杏寿郎もおやすみ」
暗闇の中で、杏寿郎は、人魚のことを考えていた。
そして、床で眠る猗窩座の気配に耳を澄ませる。
規則正しい猗窩座の寝息からは、煙たい黒煙は感じられなかった。
杏寿郎も、すぐに安らかな眠りの中へと目を閉じた。 川柳できたで
黒まんさん 下手な長文 オナニーショー 猗窩座は、庭に出て、新しく買った水中銃(スピアガン)の試し撃ちをしていた。
何度も改良を重ねて、射程距離を伸ばした自作の銃である。
水中銃を分解して、何日も作業に没頭する猗窩座を見守りながら、杏寿郎は心底感嘆した。
猗窩座って、本当になんでもできるんだな。
猗窩座が扱えるものは、水中銃だけではない。
ナイフ各種と手銛の改造はもちろん、水中からの回収か可能な三叉に、刈払機のモーターと鋸刃を使って水中で人魚を捕殺できるように改造した武器など、杏寿郎には思いもつかない、さまざまな武器を作り出した。
ほかのどんな機能よりも、水中での人魚狩りに特化した武器である。
「爆弾みたいなのは使わないのか?」
「効率が悪いし、海が汚れるから使わない」
人魚を手当たり次第に殺すことさえ除けば、猗窩座は、比較的穏健で平和的な精神の持ち主だった。
アフリカの子どもたちに定期的な支援もしている。
猗窩座が、遠くに立てた缶に向かって、水中銃を構えた。
銃身から放たれた銛は、違うことなく正確に標的を貫く。
杏寿郎は、惜しみなく拍手した。
「すごい!」
「子供の頃の話だが射撃王だったんだ」
自慢げな猗窩座を背に、杏寿郎は、水中銃で撃ち抜かれた缶を取ってくる。
「これ、銃身は小さいのに、すごい威力だな。綺麗に穴が空いている」
「当たり前。それ当たると死ぬぞ。人魚を殺すためのものなんだからな」
アルミ缶を分解するように貫通した銛なのだ。人魚の肉を貫くことなど、容易いだろう。
「本当はな、直接手で投げるのがいちばんなんだが。
手応えがぴんと来るからな。銃よりも正確で早いし、威力も高いし……」
「じゃあ、銃はいつ使うんだ?」
「人魚が遠くに逃げたとき。これ、三十メートルくらいまでは余裕で届く」
そう言って地面に座り込み、銃身を磨いている猗窩座は、まるで戦闘中の軍人のようだった。
いつもは、ごく普通の青年に見える猗窩座だが、いつも戦争の最中に身を置いているのだということを、杏寿郎は、こんなときに痛感する。
普通の人間は、恐らく一生触れることもないだろう武器を、毎日手入れして改造している猗窩座。
銃の売買ルートを探っている最近の猗窩座は、特にそうだった。
杏寿郎は、地面に転がっていた銛を手に取って、遠くに投擲してみる。
杏寿郎もそれなりに鍛えていたので、銛は、力強いスピードで空を切り、遠くに突き刺さったが、杏寿郎が意図していたところには当たらなかった。 せやった
既に昨日受けスレで昼から夜まで連稿で暴れてる奴おるから見てみ
内容はちゃうけんやってる事は同じや
ここも向こうもこれで終わるとは思えん どっかからパクったのそのまんま投稿してんのかと思ったわ 「俺はこういうの練習しなくてもいいのか?」
「ダメ。杏寿郎はただ見るだけだ。デッキにぎゅうぎゅうに縛りつけて、身動きできないようにしておくからな」
別に杏寿郎も、それほど人魚と戦いたいわけではない。
猗窩座に命を救われた夜の出来事は、やはり杏寿郎にとって小さなトラウマになっている。
猗窩座に取り押さえられていない人魚は、本当に怖い。
襲いかかってくる人魚の相手をするだなんて、できれば二度と経験したくない。
しかし、どうしても見たい人の顔があるのだ。
昼食の時間になって、杏寿郎は、猗窩座にパスタを作ってあげた。
エビとバジルがたっぷり入ったパスタを食べながら、猗窩座が親指を立てる。
「杏寿郎は本当に料理が上手いな」
「本当は得意ではないんだ、いくつか作れるレシピがあるだけで」
「大学のときから一人暮らししてたのか?」
「いや。実家も東京だったから就職を機に家を出た」
「ああ、そうなのか……」
猗窩座は、そう言って、勢いよくパスタを啜り上げた。
猗窩座は、杏寿郎について、あまりよく知らない。
むしろ杏寿郎の方が、ずっと猗窩座のことを知っていた。
杏寿郎は、あまり自分のことを話さなかったし、猗窩座も特に気にする様子はなかったのだ。
杏寿郎にとっての猗窩座は、つらい過去を抱えて人魚を狩る青年だが、猗窩座にとっての杏寿郎は、ある日突然、人魚が見たいとやってきた招かれざる客である。
しかし、そんな杏寿郎に対する猗窩座の態度は、見返りを求めない破格の待遇だった。
数ヶ月の同居生活の間、猗窩座は、杏寿郎に絶対的な好意を示している。
猗窩座は、なにかをしてあげられる相手ができたということが、とにかく嬉しかった。
杏寿郎との出会いによって、ここ数年間の自分が、とてつもない孤独の中で生きていたことに気づいたのである。
午後になると、猗窩座は、杏寿郎を船に乗せて海に出た。
海上ドライブは、ときどき二人で楽しむ遊びでもある。
猗窩座が直接設計して造船を依頼したという船は、サイズは小型漁船ほどだが、フォームはモーターボートのように鋭かった。
人魚狩りの邪魔にならないように、広いデッキはがらんとしている。
人魚の死体を運ぶにも最適なサイズだった。
船室の天井は、スポーツカーのように開閉することができる。
船室の天井を開けて風に当たると、まるで海の上を走っているような気分になった。
今日は天気がよく、海も空も青々と澄んでいた。
塩気を帯びた風が杏寿郎の髪を靡かせる。
東京では味わえない楽しみに、杏寿郎は、晴れやかな気持ちになった。
それと同時に、久しぶりに東京での暮らしを思い出す。
いま暮らしている南海の無人島は、あの大都市に比べると、まったく懸け離れた別天地のように思えた。
そういえば、猗窩座も東京出身だと言っていたはずだ。
猗窩座は、いまの暮らしに満足しているんだろうか。
「猗窩座。君、ずっとここで暮らすつもりなのか?東京には戻らずに?」
「ああ、そうだな。人魚も狩らないといけないし……東京には戻れない気がする。息苦しいからな」 そう言って杏寿郎を振り返る。
容赦ない日差しのせいで、顔を顰めていた。
猗窩座が尋ねてくる。
「杏寿郎は人魚を見終わったら東京に戻るのか?」
「さあ……わからない。でも、いつまでも君の世話になるわけにはいかないだろ」
「ここにいたければ、ずっといてもいいぞ。家賃も食費も要らないんだからな。俺、すごい金持ちだし。知ってるだろ?」
杏寿郎は笑った。
そうだ。
東京に戻ったところでどうする。
東京には、もうなにもない。
「俺、ここに引っ越そうかな。隣に家を借りたりして」
「もう住んでいるんだから、わざわざ引っ越す必要なんてないだろ」
杏寿郎は、暫し真剣に自分の財産状況を考えてみる。
この島の家を一軒買うくらいなら問題ないけど……でも無人島の空き家も売買対象になるのか?
島のあちこちにある廃屋は、いまでも昔の住人の所有物なのか?
そんなことを考え込む杏寿郎を乗せて、海の奥深くにまで船を走らせた猗窩座は、ある地点で船を止め、杏寿郎を呼んだ。
「杏寿郎、集中しろ。生臭い匂いがするはずだ」
海はいつも生臭い潮の匂いがするものだろう。
そう思いつつも、猗窩座の言葉に従って、嗅覚を研ぎ澄ませる。
すると確かに、潮の匂いに紛れて、より一層濃い匂いが感じられた。芳香にも悪臭にも思える奇妙な匂いである。
「本当だ。ちょっと違う匂いがするな」
「それが人魚の匂いだ」
次いで猗窩座は、遠方へと注意を促すように、遠くを指さした。
猗窩座の指先を追うと、優美な影が水面の下で緩慢に泳いでいるのが見える。
人魚だった。
「人魚は、昼は人を襲わない。夜にだけ怪物に変わる。昼は狩るのも難しいがな」
猗窩座の船の気配を感じてか、近くを泳いでいた人魚たちが、すぐさま海の奥深くに姿を消す。
真昼の海は、とても静かだった。
「人魚狩りに連れて行くとは言ったが、本当は心配なんぞ。お前を一人を守ることくらい、別に難しくもないが……」
夏の海を覆う空気は生ぬるい。
しかし、生ぬるい静寂の中で響く猗窩座の声は、冷たく湿っている。
「杏寿郎が言っていた、人魚の顔が会いたい人の顔に見えるっていう話だが」
「ああ」
「あれ、嘘ではない。そういうこともある。俺も初めて狩りに出たとき、人魚の顔が全部母さんや恋雪たちの顔に見えた。実は、今も時々そう見える」
猗窩座は、初陣の記憶を思い出す。
初めて狩りに出たとき、猗窩座は、前田にロープで足首を巻かれ、船に括りつけられていた。
手練れの狩人たちが、新米の猗窩座を人魚から守るために、その周りを取り囲む。
それにも関わらず、猗窩座は危機に瀕していたのだ。
自分を手招く両親や兄の顔に目が眩んで、自ら足首のロープを解いて、海に飛び込もうとしていたから。 「だから杏寿郎にも、そういう顔が見えるかもしれない。
お前はそれを望んでいるんだしな」
じっと耳を傾けている杏寿郎は、過去の一ページを読み返す猗窩座と似たような表情を浮かべていた。
どうしても会いたいという人の顔を思い出しているのかもしれない。
「でもな、杏寿郎。
これだけは覚えておけ。
ただ同じ顔をしているだけで、それはお前が会いたがっている人じゃない。ただの人魚だ」
ロープを解いて、ふらふらと海に近づく猗窩座を引き留めたのは、
必死に自分を取り押さえる狩人たちの握力ではなくて、前田の叫びだった。
『猗窩座! 猗窩座! 匂いを嗅ぐんや! 人魚どもの生臭い腐臭がするやろ!』
その声を聞いた瞬間、猗窩座の嗅覚に、生臭い匂いがどっと押し寄せた。
そして猗窩座は、生臭い腐臭を放つ母に向かって、泣きながら銛を振り下ろした。
「匂いがするはずだ。それは人間の匂いじゃない
杏寿郎が会いたがっている人は、そんな匂いなんかしないはずだ」
長い沈黙の後、猗窩座が言葉を継ぐ。
「今夜、狩りに出る。お前もこい」
杏寿郎は、ただ無言で頷いた。
猗窩座は、島の方角に船首を返して、船の速力を上げる。
水平線の向こうに島が見えてくる頃になって、杏寿郎が猗窩座にねだり始めた。
「俺が運転してみてもいいだろうか?」
「ダメ。無免許だろ」
「君だって無免許運転くらいしたことあるだろう?」
「……ある」
「ほらな! だれもいないんだし、君だけ黙っていれば、だれにもみつからないんだから」
結局、音を上げた猗窩座が舵輪を明け渡す。
張り切って舵を取る杏寿郎だったが、猗窩座は、島に無事到着するまでの間、しきりに気を揉む羽目になるのだった。
ゆっくりと日が沈んでいく。
猗窩座は、船に武器を運び込むのに忙しかった。
杏寿郎は、大人しくリビングで、猗窩座の作業が終わるのを待つ。
そこで不意に、猗窩座がくれた母の涙を取り出して、もう一度眺めてみた。
赤い夕焼けを透かした母の涙は、色鮮やかな紫色に輝き出す。
杏寿郎の瞳に、うっすらと涙が溜まった。
ただ見つめているだけで、涙が溢れそうな輝きだった。
武器を運び終えた猗窩座が、もっとも気を遣って点検したのは、杏寿郎を縛ったロープの結び目である。
猗窩座は、船室の前に座らせた杏寿郎を身動きもできないように縛り上げ、欄干にロープの端を二重三重で巻きつけた。
万が一にもロープを解くことがないように、手首まで縛り上げられる。 「君、本気で俺のことを縛るつもりだったのか!?」
「じゃあ、冗談だと思ってたのか? ぎゅうぎゅうに縛りつけると言っただろう」
「いや、だって! こんなにぐるぐる巻きにするなんて聞いていない!」
しかし猗窩座は、杏寿郎の抗議など綺麗に聞き流して、黙々と船を出発させた。
まるで海の怪物に献上される生け贄になった気持ちの杏寿郎である。
暗闇の中、猗窩座が船を止めて、エンジンを切る。
杏寿郎は、すっかり緊張してしまっていた。
数ヶ月前、なにも知らずに狩りに出たときとは、まったく違う。
好奇心の虫は相変わらずだったが、人魚の実態を知った今となっては、さすがに心持ちが違ってしまうのは仕方がない。
ごくりと喉を鳴らす音が聞こえたのか、猗窩座が優しく杏寿郎の肩を叩いた。
「大丈夫。俺がついているから」
しかし、猗窩座も、いつになく緊張していた。
杏寿郎の願いを叶えるために連れては来たものの、自分の身は二の次にせよ、なんとしても杏寿郎の安全は確保しなければならない。
髪一筋のミスも許されない夜だ。猗窩座は、覚悟を決めて銛を握り直す。
人魚は、いつもより早く現れた。猗窩座に加えて、杏寿郎という食欲をそそる餌まであるのだから、当然なことである。
最初に船へ手を掛けた人魚は、大胆にもデッキにまでよじ登ってきた。猗窩座は、周囲を警戒しながらも、杏寿郎に向かって這っていく人魚から目を離さない。
赤い尾の人魚は、杏寿郎をじっと見つめながら、彼に近づいていく。杏寿郎は、魂の抜け落ちたような表情で、その顔を見つめ返していた。
人魚が白い腕を伸ばして、杏寿郎の頬を撫で、その唇に触れる。
杏寿郎の唇が微かに震えた。
「……か、」
牙を剥いた人魚が杏寿郎に口づけようとした瞬間、猗窩座の投げた銛が人魚の脳天に突き刺さる。
杏寿郎が驚愕した表情で悲鳴を上げたが、猗窩座は構うことなく、頭を穿たれた死体を船から蹴り落とした。
一匹目を片づけた瞬間、人魚たちが水飛沫を上げて、一斉に猗窩座に襲いかかる。一匹の腹を鉄製の踵で踏み破り、もう一匹の胸に銛を突き刺した後、猗窩座は、刈払機を手に取って、スイッチを入れた。
鋸刃の回転音が鋭く空気を裂く。
猗窩座は、杏寿郎に群がる人魚の前に立ちはだかった。
刈払機を薙ぐたびに、人魚の破片がばらばらになって飛び散り、夥しい鮮血が雨のように降り注ぐ。
耳を劈く人魚の悲鳴に、猗窩座は顔を顰めた。
少し間を置いた後、再び船に群がり始める人魚たち。
猗窩座は、刈払機を構え直した。
しかし、人魚の胴体を真っ二つにして薙ぎ払われた刈払機が、
その勢いを殺しきることができず、欄干に括りつけていた杏寿郎のロープまで切り落としてしまう。
(――しまった!) 猗窩座が息を呑むと同時に、杏寿郎は反対側の欄干に引き摺られていった。人魚が切れたロープを手繰り寄せている。
その顔に向かって、杏寿郎が泣きながら呼びかけていた。
「焔火、焔火」
杏寿郎は、身を捩らせて、ロープを解こうと足掻いている。
そんな杏寿郎の首に手を回して海に引き込もうとする人魚の手首を切り落とし、猗窩座は、急いで船のエンジンをかけた。
島に船首を返し、最高速度で船を発進させるものの、船の後ろを追う人魚の水音は、長い間、止むことなく続いていた。
これまで人魚に背中を見せたことは、一度もなかった。
しかし、今夜ばかりは仕方がない。
杏寿郎は、頭から人魚の血を被ったまま、がたがたと震えながら涙を流していた。
縛りつけていたロープを解いて抱き起こしても、自力で歩くことができずに倒れてしまう。
不審に思って様子を探ると、いつ噛まれたのか、肩に人魚の歯形が残っていた。
人魚の毒は、四肢を麻痺させ、免疫が弱い人の場合、呼吸困難にまで至る可能性がある。
猗窩座は、そのことをよく知っていた。
杏寿郎を抱き上げて家に駆け込み、リビングのソファーに寝かせた後、人魚の血が入った真空パックを取り出した。
前田が定期的に送ってくれるものである。
杏寿郎の口を開けて血を注ぐと、彼は、ごくりと喉を鳴らして血を飲み込んだ。
しかし、それも束の間、ごほごほと噎せながら、血をすべて吐き出してしまう。
猗窩座は、さらに数個の真空パックを取ってきた。
攪乱状態にも関わらず、杏寿郎は、血を飲みたがらずに拒否するばかり。
猗窩座は、彼の口を無理矢理に抉じ開けて、口蓋に指を突っ返させた後、絶えず血を飲ませて続ける。
噎せ返ったり、嘔吐いたりして、半分以上を吐き出してしまったが、飲み込んだ量もかなり多い。
杏寿郎の症状は、次第に落ち着いていった。
そのときになって、猗窩座も、ぐったりと緊張を解く。 ソファーとリビングが血だらけになっていた。
血塗れの服を脱いだ猗窩座は、そのまま杏寿郎の服も脱がせた。 浴室に連れて行き、暖かいシャワーを浴びせる。
杏寿郎は、まるで頑是ない子どものように、されるがままになって、猗窩座に身を委ねていた。
血の滴る髪を洗ってやり、泡立てた石鹸で体を優しく擦ってやる。
まだ毒の抜けきっていない杏寿郎の体は、発熱し始めており、小さく震えていた。
杏寿郎の体が冷えないようにシャワーを当てたままにして、自分の髪を洗い、体に染みついた血と汗を洗い流す。
二人から流れ出した血で、浴室の床が赤く染まったが、やがて本来の色を取り戻した。 かれこれ6〜7時間荒らしとるけど、いつ食べていつ寝るんやろ まさかあぼーん数やで
兄さんの脇のニオイ嗅ぎながら安眠したいわ ぐったりした杏寿郎は、身じろぐこともできず、猗窩座の寝かせるがままに、シーツの中へ埋もれる。
猗窩座もまた疲れきっていた。
一秒も早く眠ってしまいたいが、杏寿郎の傍を離れるわけにはいかない。
猗窩座は、ベッド脇の床に座り、杏寿郎の顔をじっと見つめる。
洗いたての杏寿郎の頬は、白く滑らかに月明かりを弾いていた。
杏寿郎は、うっすらと目を開いたまま、静かに天井を見上げている。
猗窩座は、少し迷った後、口を開いた。
「焔火ってだれだ?」
「俺の妻」
「……死んだのか?」
「うん」
天井を見つめていた瞳が瞬いた。杏寿郎が初めて自分の過去を語り出す。
「東京にいたとき、高校教師をしていたんだ。焔火は同期で……俺の方が先に好きになって、プロポーズをした」
「うん」
「妊娠中だった。六ヶ月くらいだったかな。でも道を歩いていた途中、角を曲がるところで、よそ見していたダンプカーに轢かれて、それで死んでしまったんだけど……顔が潰れてしまったんだ。タイヤに巻き込まれて」
杏寿郎は、そこで言葉を途切らせ、浅く息を吸い込んだ。
猗窩座は、彼の冷えた手を握り込む。
「俺はそのときまだ学校にいた。電話がかかってきて……交通事故で死亡した人の身元確認をしてほしいと。
だから顔を見に行った。警察官が覆いを捲ったんだが、人間の顔じゃなかったんだ。顔がなかった。
服は確かに焔火のものなのに……顔を見ただけでは、到底焔火とは言えなかった」
しかし、顔のない死体は、その前日に杏寿郎が贈ったワンピースを着ていた。
杏寿郎と同じデザインの指輪をはめていた。
だから杏寿郎は、確かに自分の妻だと言った。
「でも、そのときから焔火の顔が思い出せなくなってしまった」
焔火は、よく杏寿郎に、どうして私と結婚したの? と訊いてきた。
杏寿郎は、そのたびに笑いながら、顔が綺麗だったからと答える。
二人が好んで交わしていた冗談だった。 「焔火のことを考えると、潰れた肉塊みたいな最期の顔しか浮かばないんだ。俺は、焔火の綺麗な顔が好きで結婚したはずなのに、顔のなくなった焔火の姿しか思い出せなくて。それが本当に申し訳なかった」
杏寿郎が瞳を閉じる。溜まっていた涙が零れ落ちた。
「焔火がどんな顔をしていたのか、どうしても一目見たかったんだ……」
猗窩座は、親指で杏寿郎の目元をそっと拭う。涙が指先をしっとりと包み込んだ。杏寿郎の涙で濡れた指先を唇に押し当ててみる。しょっぱい味がした。液体として零れ落ちる人の悲しみは、いつだってしょっぱい味をしている。
嗚咽に上下していた杏寿郎の胸が落ち着くまでの長い間、猗窩座は、杏寿郎の手を離さなかった。
「彼女の顔が見えたか?」
「ああ」
「どうだった?」
「綺麗だった。相変わらず……」
「うん」
猗窩座はベッドに頭を預けた。頭に触れる杏寿郎の体から、彼の脈動が感じられる。安定したリズムで脈打つ心臓の音に、眠気が押し寄せてきた。
「杏寿郎、東京に帰るな」
闇の帳が静かに下りた部屋の中で、夢の世界に誘われる猗窩座の声が小さく響く。
「俺と一緒に暮らそう」
杏寿郎は、囁くような声で、うん、と答えた。 その夜から、杏寿郎が人魚狩りに同行することは、二度となかった。
猗窩座に連れて行くつもりがないのはもちろんのこと、杏寿郎もまた完全に人魚に懲りてしまっていたからだ。
毒で朦朧としていた意識が戻るにつれて、杏寿郎は、あの夜の記憶を少しずつ思い出し始めた。
そして正直な感想を言う。
あの時の君、少し怖かった、と。
それだけで済めばいいのだが、その夜から、人魚狩りに出かける猗窩座を見送る杏寿郎の視線に、心配の色合いが濃くなったことが、少し問題だった。
「心配しなくていいって」
「心配しないわけないだろ。
君がどんなふうに戦っているのか、全部見たのに」
猗窩座は、自分は決して死なないと信じて戦っていた。
何度も死の危機に瀕することもあったが、猗窩座は、いつだって危険な局面を上手く切り抜けていたし、これからもそうだと信じている。
死と密接すぎる毎日は、むしろ彼を大胆にしていた。
そんな猗窩座にとって、杏寿郎の心配は、ときに苛立たしくなることもある。
猗窩座自身が共感できない杏寿郎の心配に、猗窩座は、まるで思春期の少年のような反応をした。
しかし、ある日、自分の大事な人が死ぬのは二度と見たくないんだ、という杏寿郎の言葉に、猗窩座は、初めて自分が生き延びるべき理由を見出した。
先立たれる者の悲しみは、だれよりもよく知っている。
それは杏寿郎も同じで、彼は、その悲しみが繰り返されることを恐れているのだ。
猗窩座も、もう二度と杏寿郎にそのような思いをさせたくはない。
いつものように狩りに向かったある日のこと、不意に猗窩座は、杏寿郎が待っているから生きて帰ろうと思った。
それと同時に、涙が溢れ出す。
狩猟地点まで船を動かしながら、猗窩座は、訳もわからずに、ただ泣いていた。
自分を心配して帰りを待っている他人の存在を感じるのは、本当に久しぶりのことだったから。
家に帰れば、杏寿郎が自分を待っている。その事実が、いまになって新しい感慨として胸を打った。
二人は、家族よりも親密な感情で、互いに接した。
家族を失って久しい中で、もう一度手に入れた家族である。
互いになにも言わなかったが、それは大きな幸運だと考えていた。
人魚狩りを初めてからの数年間、猗窩座は、限りなく無味乾燥な日々を送っていた。
血と汗にまみれる夜を除いては、持てる情熱のすべてを一点に費やす者たちが皆そうであるように、毎日が乾ききった砂のように流れていた。
東京での生活を片づけてからは、友人たちとの縁も切れていたし、南海で新しく出会った人々とも、敢えて親しい付き合いをしてこなかった。
人魚狩りの同業者たちとは、それでもまだ頻繁に会う方だったが、決して友人と言えるような関係ではない。
猗窩座の世界に存在するものは、人魚と人魚を殺す自分だけだった。
がらんとした猗窩座だけの島において、笑いとは、テレビやマンガの中から、または人魚の血の中から、まれに零れ出るものに過ぎなかったのだ。
しかし、いまの猗窩座は、杏寿郎によって笑っている。
もはや人魚だけを考えながら時間を過ごすこともなくなっていた。 南海の小さな都市は、閑静で静かな田舎町だったが、市として備えるべきものは、すべて一通り揃えている。
猗窩座は、ここに暮らし始めて五年目になるが、いまになって、この都市に結構な娯楽があることを知った。
それは偏に杏寿郎の影響である。
猗窩座は、本土に上がるたびに、必ず杏寿郎を連れて行った。
島での生活に慣れきった猗窩座とは違い、杏寿郎はまだ海での生活を退屈がっている。
猗窩座のように、明確な目的がある生活ではなかったため、さらにそうだった。
俺、畑でも耕そうかな。
そう呟く杏寿郎に猗窩座ができることと言えば、外の風に当たらせてやることしかない。
猗窩座は、杏寿郎と一緒に外食をし、服を買いに行き、映画を観た。
五年目にして初めて。
その日も本土に上がり、前田の家に寄った二人は、前田の妻が用意してくれた昼食を食べて、寛ぎながらゆっくりと過ごしていた。
前田の娘であるまさこが、杏寿郎の隣をキープして、お喋りを続けている。
まさこは、中学生の頃から猗窩座に憧れている様子で、いつも後ろを追いかけて来たものだが、杏寿郎に出会ってからは、関心の対象が呆気なく刷り変わったらしい。
もちろん杏寿郎が、猗窩座とは違い、持ち前の優しさで、まさこをとても可愛がっていたからだが。
俺が女でも、杏寿郎の方がいいだろうな。
そう思いながらも、猗窩座は、まさこの心変わりがこっそり寂しかったりもする。
インターネットをする猗窩座の後ろで、まさこと杏寿郎は、あれこれとお喋りをしていた。
ころころと変わる話題が映画に移ったかと思えば、まさこが杏寿郎に、最近上映している映画は観たかと尋ねる。もちろん杏寿郎は観ていなかった。
杏寿郎は、すぐさま猗窩座に、映画を観に行こうと提案する。猗窩座は無心に答えた。
「ここって映画館あるのか?」
「ここに来て、もう何年も経つのに、猗窩座お兄さんはそんなことも知らないん?」
まさこが呆れる。杏寿郎は、少し驚いた表情をした。
「君、これまで一度も映画を観てなかったのか? DVDはあんなに観てるくせに」
正直、男ひとりで映画を観る気がしなかったからなのだが、さすがにそんなことは言えない。
結局、まさこが主導になって、三人は映画を観に行くことにする。
ポップコーンとコーラを買い、三人並んで座席に着いたのだが、猗窩座は、映画が始まる前から面白がっていた。
映画ではなく、このシチュエーションを。
映画のチケットと夕食の支払いをしたのは、猗窩座だった。
猗窩座に命を救われた夜から、杏寿郎は、一度も東京の家に戻っていない。
当然、この数ヶ月間を猗窩座の懐に頼って生きてきた杏寿郎なのだが、当たり前のように支払いをする猗窩座の姿に、一度東京に戻って財産整理をしなければと思う。
東京の家を売却して、島に引っ越しをしよう。
新しく島の家でも買おうか……。
猗窩座と暮らす未来について、杏寿郎は、かなり真剣に考え込んでいた。
市に一つしかないファミリーレストランに行くと、若者同士で遊ぶ楽しみを味わうことができた。
まさこと杏寿郎が、頭を突き合わせて、外来語の入り混じった複雑なメニューを見ていたかと思うと、慣れた様子で、すらすらと注文をしていく。
猗窩座は、そんな二人に、思わず感嘆の視線を向けた。
二十三歳からの猗窩座の時間は、世間から隔離されてしまっている。
普通の若者たちが享受するものから遠ざかって久しい。
異国の香りがする甘辛いステーキソースの味は、本当に久しぶりに味わうもので、猗窩座は、寂しさと同時に、再会の喜びを感じていた。
外の世界との再会である。
この再会は、偏に杏寿郎のおかげだった。 大きく切ったステーキを杏寿郎の皿に乗せたかと思えば、杏寿郎のグラスが空くたびに店員を呼ぶ。
そんな猗窩座の姿に、まさこがふてくされて言った。
「猗窩座お兄さんは、杏寿郎お兄さんにだけ優しいんやな」
杏寿郎は少し当惑したが、猗窩座は当然のように答える。
「当たり前だろう。杏寿郎は俺と一緒に暮らしている家族だけど、お前は違うだろう」
まさこは、拗ねたように唇を突き出して、こう尋ねた。
「ほんじゃあ、二人はいつからそないに仲良しやったん?」
さあ、という視線で、猗窩座が杏寿郎を見やる。
二人をただの友人同士だと思っているまさこの目には、まるで竹馬の友のように映るかもしれないが、実際のところ、杏寿郎と猗窩座が出会ったのは、それほど昔のことではない。
それにも関わらず、無二の経験を共有し、自分と似た相手の境遇を理解し合っている二人は、すでに深い絆で繋がれた友人同士になっていた。
「猗窩座お兄さん、ホンマにひどいんやから。あないに好きや言うて回った私のことは眼中にもないくせに、杏寿郎お兄さんばっかり構いよって。
だれか見たら、杏寿郎お兄さんと付き合うとる思われるで」
冗談混じりのまさこの不満に、猗窩座はただ、ばつの悪そうな笑みを浮かべるだけだった。
その日の夜、前田の息子の部屋に寝床を敷いた二人は、静かに会話を交わしていた。
「猗窩座、君は俺に、どうしてこんなによくしてくれるんだ?」
「よくしてやってるかな」
「うむ、すごくよくしてくれている」
「ただ……ただそういうふうにしてやりたくて」
そうか。まあ、一緒に暮らしてるんだし、互いに思いやって暮らせるなら、それがいちばんだよな。
あ、そうだ。
猗窩座、俺、一度東京に戻ろうと思っているんだが……。
そんなことを話すうちに、杏寿郎が先に寝入ってしまう。
猗窩座は、なかなか寝つくことができず、天井を見上げながら、いろんなことを考えていた。
猗窩座は、自分を客観視することを好んでいる。
数年ぶりにできた家族のような友人に、自分がすっかり浮かれていることには、すでに気がついていた。
しかし、いまの自分の気持ちは、ただ単に友人ができて嬉しいという感情ではなく、その感情を越えたものであるような気がする。
杏寿郎が望むことなら、なんでも叶えてあげたかった。
母の涙を贈ったり、人魚を見せてあげたり、無事に家に帰って安心させてあげたり。
大学生の頃、二十歳のときにしていた恋愛を思い出す。
猗窩座の最初にして最後の恋だった。いまとなっては、相手の顔も思い出せやしないが、デジャヴを感じている。いまの自分の感情は、あのときのものと似ているような気がした。
猗窩座は、このような相手を求めていた。
情熱を注ぎ込み、持てるすべてを捧げられる相手を。
杏寿郎は、自分に多くのものを齎した人である。
しかし、例えどんな理由を挙げようとも、この感情の根源と言うには、ふさわしくない。
猗窩座は、ただ杏寿郎が好きだった。
好奇心いっぱいの猫のような瞳や、無邪気にさつまいもを育てる心が好きだった。
血を見て嘔吐く姿も、過去を語りながら涙する姿も、すべてが好ましい。
ただ何もかもが好ましくて、これが愛なんだなと思った。 夏が深まるにつれて、二人は、夜の散歩に出かけることが多くなった。徐々に暑くなる夜の空気に、杏寿郎は、自分がこの島に来てから、かなりの時間が経ったことを実感する。
初めてこの島に来たのは、まだ冬の気配が残る寒い日だった。
そして、いつの間にか真夏を迎えている。
二人は、砂浜に敷物を敷いて、夜空を見上げていた。
「星だ。いまにも降ってきそう」
「星と砂、どっちの方が多いのだろうか」
「宇宙には果てがないって言うから……星の方が多いんじゃないか」 そんな取り留めのない話をしていたとき、不意に猗窩座が身を起こす。
「杏寿郎、ついてこい」
「どこに?」
「いいから」
杏寿郎が立ち上がると、猗窩座が手を引いて、海の方に導いた。
海に足を浸からせようとしたのかと思ったが、膝が浸く頃になっても、さらに海の奥へと連れていく。
「猗窩座、服が濡れてしまう」
「大丈夫」
水位は膝を越えて太股に到っていたが、猗窩座は足を止めない。
杏寿郎は、不安の滲む声で尋ねた。
「どこまで行くんだ? 危ないぞ」
「溺れたら俺が助けてやる」
「人魚が出たらどうするんだ」
「こんな浅瀬には来ない」
それでも不安が消えないのか、腰が引けたままの杏寿郎をほとんど引きずるようにして、猗窩座は、かなり深いところまで海水を掻き分けていった。
水位は、すでに二人の臍を越えたところで波打っている。
十分に足が着くところだったが、夜の海は、昼よりもずっと恐ろしい。
底の見えない足元に不安になった杏寿郎は、猗窩座のシャツの裾をぎゅっと握った。
猗窩座が笑いながら、その手を優しく引き剥がす。
「大丈夫だ、杏寿郎。溺れたりしない」
杏寿郎は、ゆっくりと手を離した。
足の着く地面は柔らかい砂地で、杏寿郎は妙に不安になってしまう。
それなりに泳げる杏寿郎だったが、夜の海に入ったのは初めてで、すっかり緊張してしまっていた。
そんな杏寿郎の心境を察してか、猗窩座が杏寿郎の両腕を掴み支える。
「ほら、空を見ろ」
猗窩座の言葉に従って、杏寿郎は空を見上げた。
見渡す限りの夜空が、砂浜にいたときよりも、ずっと生き生きと輝きながら杏寿郎の瞳に飛び込んでくる。
身を包み、視界に映る、そのすべてが闇だった。
胸が詰まると同時に、どこか懐かしい感情が、胸の奥から湧き上がってくる。
どこまでも続く闇の中で、星が降り注いでいた。
星が地上へと花開いている。
「宇宙にいるみたいじゃないか?」
「本当だ……」
月明かりに薄く映える大きな雲が、ゆっくりと流れていた。
胸の下で波打つ潮の流れに従って、細かい砂粒が足の指の間に柔らかく入り込む。
夜空を見上げたまま、杏寿郎は大きく深呼吸した。
静かな海風が鼻腔を擽る。
星々に限りはなかった。
砂よりも、ずっと多いだろう。 宇宙の果てとは、決して見出せないものなのだから。
首が痛くなるまで見惚れていた杏寿郎が、ゆっくりと顔を戻す。
猗窩座は笑顔で言った。
「綺麗だろ。見せてやりたかったんだ」
「ありがとう」
「いや、こちらこそ見てくれてありがとう。一人で見るには、もったいない景色だったからな」 杏寿郎がにっこりと笑った。静かな潮騒が聞こえてくる。
それは、刹那の衝動だった。
猗窩座の唇が、杏寿郎のものに軽く触れて離れる。
驚きに見開かれた杏寿郎の瞳が、猗窩座の柔らかい視線とかち合った。
杏寿郎は、しばらくの間、猗窩座を見つめ返していたが、やがてゆっくりと瞳を閉じていく。
杏寿郎の頬に包み込み、流れる髪を耳にかけてやりながら、猗窩座は、先ほどよりもずっと深いキスをした。杏寿郎は、自分でも気づかぬまま、猗窩座の肩に縋って身を委ねる。
耳の辺りを撫でていた猗窩座の手が、杏寿郎の背中とうなじを支えた。
ぴたりと重なった胸の向こうから、激しく脈打つ相手の心音が聞こえてくる。どんどん速くなる脈拍は、どちらのものなのか、すでにわからなくなっていた。
長いキスが終わり、唇を離した猗窩座が、気恥ずかしげに笑う。 「どうしよう。この次はどうすればいいのかわからないぞ」
今度は、杏寿郎の方から口づけた。
「ただ……キスしてくれ」
星屑の降り注ぐ海の中で、二人は長い間、唇を交わし合う。
冷たい海と冷たい風の中で、ただ唇だけは限りなく熱かった。
ずぶ濡れになった海を出た二人は、家に戻るまで一言も話さなかった。
猗窩座は照れているらしい。
杏寿郎の顔を見ることもできず、話しかけもしなかったが、繋ぎ合った手だけは最後まで放さなかった。
風呂を済ませ、おやすみと短く挨拶して部屋に戻ろうとする猗窩座を、杏寿郎が呼び止める。
「一緒に寝ないか?」
杏寿郎を振り返った猗窩座は、俯ぎながら片手で顔を覆った。
「ダメだ。いま滅茶苦茶恥ずかしくて、お前の顔を見れそうにない……」
それでも杏寿郎は、猗窩座の手を引いて、自分の部屋に招き入れた。
シングルベッドは、体格のいい二人が使うには狭すぎて、ぴったりと身を寄せ合わなければならない。
体を密着させて、顔を見合わせたまま、猗窩座は杏寿郎に告白する。
「杏寿郎のことがすごく好きみたいだ」
「うむ……自覚していなかったが、俺もそのようだ」
静かな杏寿郎の返事に、猗窩座は半信半疑の表情を浮かべる。
「本当か?」
「そりゃあ本当だ」
「変じゃないか? 俺は男なのに」
「さあ、変なのだろうか……。でも、こうなるのもいいと思う。なにも変ではないよ」
「俺もそう。ただ杏寿郎が好きだ」
そう言って杏寿郎を見つめる猗窩座の瞳は、澄んで煌めいていた。
杏寿郎の気持ちは、猗窩座に言った言葉のとおりだった。
猗窩座が自分を好きだということが、まったくおかしくもないし、驚くようなことでもないし、とても自然なことのように感じられる。
共に暮らした数ヶ月間、溢れんばかりに与えられてきた猗窩座の好意が、どのような感情によるものなのか、薄々気づいていたのかもしれない。
そして、そんな猗窩座の好意を、いつも嬉しく思っていた。
先に猗窩座の方から一緒に暮らそうと言われたが、実は杏寿郎もまた、猗窩座さえよければ、ずっと彼の傍にいてあげたいと思っていた。
自分と似たような、またはずっと深い悲しみに翳っている彼の瞳を慰めてあげたかった。
その真心は、愛情に起因するものである。
いつの間にか杏寿郎は、どんな形の関係であれ、猗窩座と長い時間を共に過ごすことになりそうだと思っていた。
海で近づいてきた猗窩座の唇に、杏寿郎の心臓は、とある予感に高鳴り出したのだ。
それは、猗窩座と共に生きる関係の形が、自分の思った以上に、大事なものになるだろうという予感だった。 杏寿郎から目を離せない猗窩座は、まるで恥ずかしがり屋の子どものようだった。
「二十歳からは一度も恋愛をしてないんだ。どうすればいいのか、全然わからない」
「ただ今みたいにすればいい。なにも難しくはない」
杏寿郎は、猗窩座の頬を撫でながら口づけた。
猗窩座が杏寿郎を抱きしめる。
何度も唇が柔らかく触れ合った。
「本当にどうすればいいのかわからない。いま、すごく抱きたいのに」
「大丈夫。ゆっくりでいい……」
隙間なく抱きしめ合い、唇を触れ合わせて暖かい吐息を交わしながら、二人は静かな眠りについた。
なによりも近い場所で、共に。
杏寿郎を抱くことは、猗窩座にとって、人魚狩りよりも勇気の要ることだった。
しかし、その日は、前触れもなくやってきた。
最初の恋愛以降、一度もだれかを抱いたことがなかった猗窩座は、体を分かち合う感覚さえ、完全に忘れてしまっていた。
なので、いざ杏寿郎を求める自分の欲望に向き合ってみると、その方法がわからなくて戸惑ってしまう。当然のことだった。
しかし、ある日のこと、何度も杏寿郎の唇を食んでいた猗窩座は、意識することもなく、杏寿郎のシャツをたくし上げる。
そして、唇に杏寿郎の滑らかな素肌が触れると、まるですべてを心得ている人のように、慣れた様で行動することができた。
ただ杏寿郎を切実に求める自分の赴くがままに行えばよかったのだから。
猗窩座は、ゆっくりと染み込むように、杏寿郎の体へ入り込んだ。
杏寿郎は、ひどく苦しそうな様子だった。
困り果てた猗窩座は、自分の方が痛そうな顔をして、何度も杏寿郎の髪を梳ったが、優しい律動を止めることはなかった。
そのとき、猗窩座の肩を抱き返す杏寿郎の唇から、小さな嬌声が零れる。
猗窩座の体は硬く、汗が滲んでいた。
塩気と湿気に濡れた体からは、海の香りがする。
熱く深い熱情の中で、杏寿郎は幸せを感じていた。
愛される幸せ、愛を分かち合う幸せである。
絶頂に達すると同時に、猗窩座は杏寿郎に囁いた。
愛していると。 そうして始まった同棲だったが、二人の生活にそれほど変わるところはなかった。
ただ杏寿郎は、一刻も早く生活の半分を自力で支えたいと、さらに強く思うようになる。
猗窩座は、杏寿郎はただ自分の傍にいるだけでいいと思っていたが、杏寿郎自身の考えは違っていた。
まず杏寿郎は、この退屈な休暇のような自分の生活を精算したかったのである。
最後の残暑が猛威を振るう。
しかし杏寿郎は、その暑さに似合わぬ夏風邪をひいてしまった。
頻りに咳をして洟を啜る杏寿郎に、猗窩座は、夏風邪はバカしかひかないのにと揶揄したものだが、実のところ、自分の方が病気かのように大騒ぎをしている。
猗窩座は、何度も病院に行こうと急かしたが、杏寿郎は、風邪は病院に行って治る病気じゃないと言って、ただ寝ているだけでいいからと意地を張った。
用事があって、ひとり本土に上がりながらも、心配で堪らないという目をした猗窩座を、杏寿郎は、いいから薬でも買って来てくれと笑いながら送り出す。
熱が出て、喉が痛かったが、身動きできないほどではなかった。
最初は病人らしく横になっていたものの、結局、体がむずむずして起き出した杏寿郎は、家に掃除機をかけてから散歩に出る。
ひとりで何度も探検した島だったが、すばらしい景色は何度見ても飽きることがない。
南海に浮かぶ、小じんまりとしたこの島には、人魚が棲みついて寂れる前は、計十七戸の島民が暮らしていたらしい。
本土から船で三十分ほどにある島の景色はすばらしく、この辺りに来た南海の観光客たちが、必ず一度は寄るような名所だった。
平和に慣れきっていた島民たちは、人魚が出没し始めても、最初はあまり問題視しなかったらしい。
しかし、数人の島民が死に、観光客にまで被害が出てからは、耐えられなくなった島民たちの移住が続出した。
そして本土では、あの島は危険だという噂が広まり、島への門は閉ざされた。
猗窩座は、すでに無人地帯になっていた島に、たったひとりで住み着き、空き家を掃除して、それなりに暮らせる場所にしたのだと言う。 人々が残していった家屋の青や赤などの屋根は、日差しを浴びて、いつも色鮮やかに輝いていた。
一見すると、まるで人が暮らしているようにも見えるのだが、石垣や窓に絡みつく蔓から空き家であることが見て取れる。
中を見てみようと廃屋に入ってみたものの、なんだか薄ら寒い気配がして、結局すぐに外へ出てしまった。
ほかにも人がいたらいいのに。
島は四方を海に囲まれていたが、杏寿郎が特に好きな場所は、猗窩座の家から十分ほどのところにある場所だった。
早くも白い夏コスモスが咲いている小道を歩いていくと、砂浜ではなく、岩場が海岸になっている場所に辿り着く。
長い年月を波に打たれて、不思議な形に削られた岩場が、どこまでも広がっていた。
赤っぽい波模様がある岩の狭間に緑の苔がむしていて、とても美しい色合いである。
日差しに暖かく熱せられた岩場に座り、杏寿郎は水平線を見つめていた。
地球は丸いというけど、本当に海も丸いんだ。
丸い水平線を前に、杏寿郎は、退屈ながらも平穏な気持ちに満たされていた。
これまでの数ヶ月間は、まるで長い休暇のような日々の連続だった。
島での暮らしは楽しかったが、もう何ヶ月も何もせずに遊び暮らしている。長すぎる休暇には飽きてしまうものだ。
仕事を探そうと思う。
まず猗窩座に船の操縦を習おう。船がなければ、島での自分は、足に縄を着けられているようなものだ。
自由に身動きが取れないのだから。
まず船舶操縦免許を取って、本土で仕事を探そう。
数日前、猗窩座と本土に出たとき、杏寿郎は、自分も知らないうちに、通りの看板に注意深く目を通しながら、東京で勤めていた高校の姉妹校があるかどうかを探していた。
東京で辞表を出したとき、杏寿郎に目をかけていた校長は、なかなか辞表を受理したがらなかった。
何度も思い止まるように杏寿郎を説得したが、意思を変えない杏寿郎に仕方なく折れつつも、気が変わったらいつでも戻って来いと言ってくれたのだ。その校長にお願いすれば、こちらに発令を出してもらえるかもしれない。
あれこれと考えを巡らせていた杏寿郎の視界に、朧気な人影が映った。その影は、ゆっくりと海岸の岩場をよじ登ってくる。
人魚だった。
小さく息を呑んだ杏寿郎は、すぐさま立ち上がって逃げようとするものの、体が硬直して言うことを聞いてくれない。
人魚は、そんな杏寿郎に気がついたらしく、ゆっくりと杏寿郎の方に近づいてきた。
亜麻色の髪をした人魚の尾が、翠色に輝いている。
エメラルド色に光る尾に、日差しが照り返して眩しい。
杏寿郎は、座り込んだまま、のろのろと後退った。
背中に冷たい汗が伝う。
そのとき、人魚が言った。
「あなた、人間?」
天真爛漫な子どものような声である。
杏寿郎は、思わず頷いてしまった。
その返事に、人魚が嬉しそうに破顔する。
どんどん近づいてくる人魚の顔を見ると、まだ子どものような顔つきだった。
十三、四歳くらいの少女のような。
その幼げな人魚の顔に、なぜか杏寿郎は安心した。
無垢な声に安堵したのかもしれない。
しかし、あれも人間を誑かす手法の一つなのだろう。
はっとして思い直した杏寿郎は、硬直していた体を起こす。
逃げ出そうとする杏寿郎の背中に、人魚の声が追いすがった。
「食べたりなんかしません。行かないでください」
杏寿郎は、ゆっくりと振り返る。人魚は、まるで子犬のような瞳で、杏寿郎を見つめていた。
妙な引力に引き寄せられて、結局杏寿郎は、人魚の傍にしゃがみ込む。
人魚が満面の笑みを浮かべた。
杏寿郎も強ばった顔の筋肉を動かして、なんとか微笑み返す。
信じられないことに、その日の午後、杏寿郎と人魚は、本当に楽しい時間を過ごした。
人魚には、本当に杏寿郎を食う気がないらしい。
その人魚は、これまでに杏寿郎が見た、どの人魚よりも小さい体躯をしていた。
人魚は、自分はまだ成年になっていないのだと言う。
人間で言えば、中学生くらいだろうか。
そう呟く杏寿郎に、人魚はすかさず、中学生ってなんですか? と尋ねた。
亜麻色の柔らかい髪を背に流し、翠色の瞳を輝かせる人魚は、人間についてのさまざまなことを杏寿郎に訊いてきた。
好奇心旺盛なところが自分と似ていて、杏寿郎はすぐに親近感を感じる。
人魚は人を食べるけれど、わたしは人間と仲良くなりたいです。
そう言って悲しげな表情をする幼い人魚に、杏寿郎は名前をつけてあげた。アリエルと。
どういう意味なんですか? 不思議がる人魚に、杏寿郎は、ディズニー映画のリトル・マーメイドの物語を教えてやる。
楽しそうに話を聞く人魚を見て、杏寿郎は、人魚姫の原作者であるアンデルセンも、このような人魚に出会ったのではないかと思った。
きっと昔にも、好奇心旺盛で、人間の世界に憧れる幼い人魚がいたのだろう。
本土に出向いた猗窩座は、銀行での簡単な用事を終えた後、スーパーで買い物を済ませた。
車に荷物を積み込んで、スーパーの前にある薬局で薬を買い、前田と共に病院へ向かう。
前田の狩猟チームにいる村田の見舞いだった。
「薬局には、なんで寄ったんや?」
「ああ、杏寿郎が風邪をひいたんだ」
「そうなんか。夏風邪はアホしかひかん言うけどな」
「はは、俺も今朝、同じことを言ってやった」
「杏寿郎とは気が合うみたいやな」
「ああ、まあ……一緒に暮らす人がいるというのも面白いな」
「せやろ。ひとりよりは二人がええねん」
そう言った前田は、ときどき猗窩座に持ちかけてくる話を繰り返し始める。
「猗窩座。おまえ、ホンマに結婚する気はあらへんか?」
「ない」
「いつか気が変わるかもしれんやろ。そないなこと言わへんと、はよまさこと結婚せえ。あと三年だけ待って、まさこが大学を出たら連れてき。新居もなんも要らんやさかい、身一つで来たらええ」
前田が猗窩座に自分の婿になれと言い出したのは、かなり前のことだった。
まさこが高校生になり、猗窩座を慕う素振りを見せた頃から言い始めた冗談は、いつの間にか前田の本気になっていた。
しかし、猗窩座に結婚するつもりは、まったくない。
さらに、その相手が結構年下であるまさこだと言うのだから、なおさらのことだ。
「前田、もうそんなこと言うな」
「なんやねん。まさこは可愛くないか?」
「可愛い。可愛いが……子どもではないか」
「なぁにが子どもや。そろそろ女になってきたやろ」
「前田、俺はまさこが中学生のときから知ってるんだ。俺がまさこを連れて行ったら、周りに泥棒野郎と言われる。前田も、大事な娘には、もっと若くていい男を見つけてやれ」
「歳なんぞ関係あるかい。おまえがどないに誠実なヤツか、わいより知っとる人間はおらへんで。まさこもおまえのことが好きやしな。ホンマに婿に来てほしゅうて言うてるんや」 アリエルを見送った後、杏寿郎も家に戻った。
猗窩座に人魚と会ったことを話そうかとも思ったのだが、怒られそうなので、やはり黙っておくことにする。
人魚が人間に害を及ぼす獣であることには、もちろん杏寿郎も同意するところだが、先ほどの人魚は少し違うと思うのだ。
人間が憎むべき人魚は、人間を襲う人魚だろう。
アリエルのことは、憎むべき人魚とは思えない。
家に戻って米を炊き、鯛の塩焼きを作っていると、猗窩座が帰ってきた。
湯気を上げる煮すぎたさつまいもの味噌汁と、猗窩座の買ってきた総菜が、食卓に乗せられる。
夕食を食べながら、杏寿郎は、昼のうちに考えておいたことを猗窩座に話した。
船の操縦法を習って、仕事も探そうと思う、と。
猗窩座は頷いて、自分も手伝うと言ってくれる。
話題は、すぐさま人魚に移った。杏寿郎には、人魚について不思議に思うことが、まだまだたくさんあるのだ。
「あのさ、人魚にも子どもがいるのか?」
「いるぞ。人魚も子を産んだりする。あいつらは人間よりも成長が早い」
「そうなか?」
「産まれて十ヶ月から一年になると、ほとんど成長しきった成体になる。
あいつらは、人間の女みたいな姿をしてるだろ。でも一年もしないうちに成体になるのだから、人間に換算すれば、一ヶ月で二、三歳ずつ歳を取っているわけだ。
人間みたいな格好をしてるくせに、成長が早すぎて気持ち悪い。それで寿命は十二、三年くらいかな。
成体になって発情期が来たら人を襲い始める」
「普段は襲わないんだな」
「まあ、ときどき訳もなく襲うこともあるが……大抵は発情期の繁殖のために人間を拐うわけだからな」
「じゃあ、子どもの人魚は人を襲わないんだな?」
「まだ発情期が来てないからな。まだ力も弱いし。でも、すぐに成体になる」
人魚の話をしながら無心に味噌汁を啜っていた猗窩座が、ふと顔を上げて、杏寿郎と目を合わせた。
「でも、いきなりどうした?」
「いや、あの……さっきな? 昼に……人魚を見たんだ」
「なんだと? どこで?」
「あっちの岩海岸で」
猗窩座の顔が強ばる。
「二度と行くな」
「まだ子どもだった。あまり危なくはなかったぞ。俺はずっと陸の方にいたし、あの子もまだ子どもみたいだったからな……子どもの人魚は人を襲わないんだろう?」
「危険じゃないことはわかってるが、でも行くな」
「わかった」
「もし海岸で人魚を見かけたら、絶対に近づくな。どうせ陸に上がると、水の中よりずっと動きが鈍くなるから、早く走って逃げれば大丈夫」
なんでもない振りをしていたが、猗窩座は、驚愕した心臓を宥めるのに必死だった。
ときどき、物知らずな幼体の人魚が、まだ昼のうちに海岸に出没することがある。
幼体は、人を襲うこともなく、人を誑かす方法も知らないので、それほど危険な存在ではない。
危険なのは成体の人魚だが、成体が昼に現れることは、まずなかった。
しかし、この場合は話が違う。
相手がどんなに幼体だったとしても、猗窩座の知らないところで、杏寿郎が人魚に接触したという事態そのものが、猗窩座には大きな脅威に感じられた。
初めて体を重ねてから、二人のスキンシップは、格段に増えている。
猗窩座は、後ろから杏寿郎を抱き締めてソファーに座り、その姿勢でDVDを観ることが好きだった。
杏寿郎の体を片時も放ってはおかず、撫でさすっては揉みしだき、そのままセックスに雪崩れ込むことが日常茶飯事である。
素肌を重ねて杏寿郎と眠る夜が幸せだった。
ほとんど毎晩、欠かすことなく人魚狩りに出ていた猗窩座だが、狩りに行かない夜が増えてきている。
杏寿郎は、確実に猗窩座の生活を変えていた。
新しく購入した大きなベッドで杏寿郎を抱き締めていると、いつもはすぐに寝入ってしまうのだが、その日の猗窩座は、長い間、なかなか寝つくことができなかった。
この島に来てから初めて本土に戻ろうかと考える。
自分ひとりなら構わないが、杏寿郎がいる以上、この島は、あまりにも危険な場所だった。
そもそも、この島に住み着いた理由は、人魚の住処から近いというメリットがあったからだ。
そのメリットが、いまとなっては、逆に脅威になっている。
昼の間、狩人たちの言葉を聞いて考えていたことへの確信が生まれた。猗窩座には、惜しまずに諦めるべきことがいくつかある。自分を変化させている杏寿郎のために。 そうして、平和な数日間が流れる。
猗窩座が昼寝をしている間、杏寿郎は、家の前にある砂浜に出ていた。真昼の海は、どこまでも静がである。杏寿郎は、裸足で暖かい砂を踏みしめながら散歩することが好きだった。
夏が終われば、すぐに寒くなって、裸足での散歩はできなくなってしまう。だから、いまのうちに思いっきり楽しんでおこうと思ったのだ。
そのとき、静かな浜辺に快活な呼び声が響いた。
「杏寿郎」
思いも寄らぬ再会に、杏寿郎も嬉しげに返事をする。
「また会ったな、アリエル」
猗窩座の説明を聞いたせいだろうか。心なしか、数日前よりアリエルが少し成長しているように見える。
しかし、やはり中学生のような少女の姿だったので、まだ暫くは大丈夫だろうと思い直した。
アリエルは、杏寿郎によく懐いていた。
杏寿郎が海岸を散歩していると、ときどき「杏寿郎!」と呼び止めて、話しかけてくる。 杏寿郎は、いつも快くアリエルを迎え入れた。 まるで野良猫と顔馴染みになっていくような気分である。
人魚と人間は、かなり親しくなっていった。
「わたしも人間になりたい」
「どうしてだ? 人魚なのが気に入らないのか?」
「海が寒いからイヤです。海の外は暖かいでしょう。でも尾が乾燥すると死んでしまうから、あまり長い間、外にいることはできないんです」
どうしても変えられない自分の生物的特性に文句を言う姿が、まさに人間の思春期の少女そのものである。杏寿郎はアリエルが愛しくなった。
しかし、アリエルも成体になったら、ほかの人魚たちのようになるんだろうか。
そんな疑問をそっと示すと、アリエルは、自分は人を食べたりなんかしないと即答した。
子を産みさえしなければ、人魚にとって人間は、それほど必要のない食料らしい。
アリエルは、自分は子も産まないし、人を食べたりもしないと頭を振る。
きみのような人魚ばかりだったら、猗窩座もあんなふうにはならなかったのに……。
何気なく言った杏寿郎の言葉に、アリエルが驚いた表情をした。
「あの狩人の名前は猗窩座なんですか?」
「猗窩座を知っているのか?」
「杏寿郎がその狩人と一緒に暮らしていることは知っていました」
アリエルの表情が暗くなる。
「あの人は怖いです」
杏寿郎は、顔を強ばらせてガタガタと震えるアリエルの髪を撫でてあげた。
猗窩座の名前は、人魚たちの間でも知れ渡っているらしい。
無理もないことだが。
自分のせいではない同族の殺戮のせいで、恐怖に震えている人魚を可哀想だと思う。
杏寿郎にとっての人魚とは、美しいが恐ろしい生物だった。
人魚の恐怖を身をもって体験しているだけに、特に人魚を同情したりはしない。
しかし、アリエルだけは可哀想だった。
ほかの人魚とは違う姿を見せたのだから、当然なことである。
杏寿郎は、猗窩座もアリエルに会ってみればいいのに、と思う。
人魚への強烈な憎悪が猗窩座の心を蝕んでいることを知っているからこそだ。
その殺伐とした憎悪が、どんな形であれ、少しでも鎮まるのならば、猗窩座の心も少しは楽になるのではないかと……いつもそう思っていたのである。
しかし杏寿郎も、そこまで無神経ではなかった。
人魚を赦すことなど、猗窩座には端からあり得ない。
むしろ、こんな杏寿郎の提案そのものが、猗窩座を傷つけることになるだろう。
杏寿郎は、ただアリエルが猗窩座の手に掛からないことを願うばかりだ。
そのとき、アリエルが咳をする。人魚も咳をするんだ。
不思議そうに目を丸くして、アリエルを見下ろした杏寿郎は、もしかして自分の治りかけの風邪がアリエルに移ったのでは、と面白いことを考えた。
今度猗窩座に訊いてみよう。
人魚も人間の病気にかかることもあるのかと。 猗窩座は、本土で暮らすための新しい家を探していた。
いざ島を離れるとなると、心残りな部分もたくさんある。
しかし結局は、杏寿郎のために島を離れようと結論を下した。
前田に、本土での家を調べてくれと頼む。
すると、よくぞ考え直してくれたと大喜びされた。
若いヤツが無人島で腐ってどうすると言いながら、前田は直ちに、知り合いの不動産業者を紹介してくれる。
この近辺で有名な『人魚狩りの青年』からの依頼に、不動産業者も積極的に物件を探してくれたらしい。
少し大きめの家で探してくれと頼んだら、庭付きの綺麗な二階建ての一軒家を手配したから下見をしてくれという連絡が来た。
まだなにも決まっていないのだが、物件の下見に行くということだけで、すっかり浮かれた猗窩座は、杏寿郎にこう言った。
「本土に引っ越そう、杏寿郎」
「本当か?」
「ああ。杏寿郎も働きたいんだろ。だったら、二人とも本土に移った方がいいと思う。ここは危ないしな」
「君、狩りはどうするんだ」
「狩りなんて、どこででもやれる」
杏寿郎が、少し不安げな瞳で、猗窩座を見つめる。
「もしかして、俺のせいか?」
「確かに杏寿郎が理由だ」 途端、申し訳なさそうな表情をする杏寿郎に、猗窩座は素早く言葉を継いだ。
「杏寿郎が退屈そうなのもイヤだし、お前が危険な目に遭うのもイヤだ。杏寿郎と末永く幸せに暮らしたいからな。本土に行って、楽しく安全に暮らそう」
猗窩座は、目元を笑ませて、晴れやかに笑う。
その心からの笑顔があまりにも眩しくて、思わず杏寿郎もつられて笑ってしまった。
本土に行けば、島よりも楽しいことがずっとたくさんあるだろう。
いろんな人に出会えて、すぐに仕事も始められるはずだ。
しかし、なによりも嬉しいことは、人魚狩りにばかり没頭していた猗窩座の方から先に本土に行こうと提案されたことだった。
猗窩座はなにも言わないが、人魚よりも自分を優先させて選択してくれたのだ。
その選択は、人魚への憎悪より、自分への愛情の方が重いということを意味する。
自分の存在が猗窩座を肯定的な方向に変化させていることに、大きな喜びを感じた。
そして杏寿郎は、猗窩座と自分が愛し合っていることを実感する。
愛とは、いつだって人を幸せにするものだと、杏寿郎は信じていた。
島を去ることに一つだけ心残りがあるとすれば、それはアリエルの存在だった。
伝説上の妖精のように神秘的な存在との別れは、この島で過ごしていた雲上の夢のような時間の終わりでもある。しかし、本土に行けば、また別の夢が始まるだろう。 紹介された二階建ての一軒家は、大きくて綺麗だった。
「家主さんの管理が行き届いておりますやろ。
家主さんはご高齢な方ですけど、この家は自分で直接設計したもんで、そりゃあ大事に暮らしてはったんですわ。でも息子さんと上京することになって、この家を売りに出しはったんやけど、手放すのも残念そうでなあ……この価格でこないな物件なんて、滅多にありまへんで。
私やったら即決ですわ」
不動産業者の自信たっぷりな言葉のとおり、家のあちこちから丁寧な管理がなされていたことがわかる。
かなり規模が大きいにも関わらず、黴の一つもない。
庭の芝生は、奥の隅まで青く整えられていた。
低い垣根には、薔薇の蔓が美しく絡みついている。
秋薔薇が華やかな色合いを添えていた。
なによりも家全体が日当たりのよい立地である。
猗窩座は、かなり満足しているようだった。
「杏寿郎はどうだ?」
水圧を確認するために便器の水を流して、最後の確認を終えた杏寿郎が、決定の一言を付け加える。
「うん、すごくいいな」
すぐに契約書を作成すると言う猗窩座に、業者がゆっくりで構わないと手を振った。
「実は、いま家主さんが旅行中でしてな。親孝行な息子さんがヨーロッパ旅行に行かせてくれたらしゅうて、契約書を作るんは、ちとだけ待っといてくれまへんか。
もちろん心配せんでも大丈夫ですわ。ほかに横取りなんてさせまへんからな。猗窩座さんは、ここ名物の『人魚狩りの青年』でっしゃろ。家主さんも、猗窩座さんが下見に来る聞いて、そらもう大喜びでしたわ。やから、ゆっくりで構いまへん」
気が急いた猗窩座は、早くもこの家が自分の家のように感じられるのか、家のあちこちに視線を走らせて、家中を歩き回る。
その心境を察した杏寿郎は、猗窩座に調子を合わせて、インテリアはどうしようかなどと話しかけた。
島に戻った二人は、海岸に出て夕焼けを眺める。
浜辺から見える日没の景色は、なにも言えなくなるほどに美しい。
島を去るのだから、この夕焼けも見納めになるのだろう。
寂しくなった杏寿郎は、後ろの猗窩座を振り返った。
真っ赤な夕日が、猗窩座の端整な横顔を赤く染め上げている。
物思いにふけているらしく、複雑な表情を浮かべた猗窩座の姿は美しかった。
島に暮らし始めて、たった数ヶ月の杏寿郎でさえ、こんなにも切なくなる夕焼けなのだ。
猗窩座の感じる感慨は、どれほどのものだろう。
杏寿郎には想像もつかない。
この夕焼けには、数え切れない痛みと追憶が染み着いているはずだ。
杏寿郎は、猗窩座の手を軽く握った。
すぐに猗窩座が、杏寿郎の手をさらに強く握り返してくる。
海から吹いてくる夜風が冷たい。
季節は絶えず流れ続けていた。
海からの帰り道、杏寿郎は、ふと思いついたように、人魚も人間の病気にかかることがあるのかと尋ねる。
風邪みたいなのもひくのだろうか? 質問する杏寿郎に、猗窩座は、さあ……と首を傾げて、なかなか即答できない様子だった。 「人魚が人間の病気にかかるって話は聞いたことがないな……今度前田に会ったら訊いてみる。でも、それはないだろう。風邪なら特にな。魚は風邪をひいたりしない」
「そっか……じゃあ俺から移ったわけではないのかな」
何の気なしに零した呟きを聞き咎めた猗窩座が、移ったって誰にだ? と聞き返してくる。
杏寿郎が口ごもっていると、杏寿郎が風邪だった数日前を思い出して、事態に気づいたらしい猗窩座が、少し怒った顔をして、杏寿郎を家に引きずって行った。
「早く言え、杏寿郎。どういう意味なのか」
杏寿郎をソファーに座らせて、腕組みをする猗窩座の表情が怖い。
結局杏寿郎は、少し小さくなって、これまでアリエルに会ったすべてのことを告白する。
初めて会ったとき、かなり長い会話をして、それからも、ときどき海岸で会っていたこと。
気まぐれに顔を出す姿がまるで野良猫のようで、それほど危なくもなさそうだったから大丈夫だと思っていたこと。
そんな杏寿郎の言葉を、猗窩座は最後までじっと聞いていた。
肩を落とした杏寿郎の告白をすべて聞き終えた猗窩座は、杏寿郎の手を静かに握り込んで話し始めた。
「杏寿郎、人魚は本当に危険なんだ」 >>511
猗窩座は、ただ笑うだけで、話を切り上げるように運転に集中する。
残念でならないという表情をした前田は、ほかの相手を提案した。
「ほな、まさこが子どもすぎてイヤ言うんなら、後藤さんとこの娘はどや。あの子は、おまえと二、三歳くらいしか違わへんやろう」
「それって…… あの美人のか?」
「せやせや。ミスなんとかだったあの子やで。いまは大学に通ってて、今度卒業するらしいんや」
「そんなお嬢が俺みたいな男と結婚するわけないだろ」
「なに言うてんねん。おまえみたいなヤツが、ほかにおるかい。その辺の芸能人より、よほど男前やさかい。うちの嫁はんは、その……なんや、きむたく? キムタクより、おまえの方が何倍も男前や言うとるで」
「それは、おばさんが俺を可愛がって、そう言ってくれてるだけだ。それにあの家が、俺みたいにいつ死ぬかわからない商売の人間に、大事な娘をやるわけがない」
「そら後藤さんも言うてたわ。猗窩座が人魚狩りさえしてへんかったらええのにってなあ。おまえにその気さえあれば、なんぞ店でも出したろか言うてたで。東京でな、あの娘は絵ェ描いて、おまえは商売やって、そうやって夫婦二人で暮らしたらええんやないかってな」
「はは、そんなことまで言ってたのか……でも、前田も知ってるだろ。俺は狩りを止めらない」
>>511
この話題に行き着くと、結局前田は、なにも言えなくなる。
猗窩座の原点をだれよりもよく知っているからだ。
気安く狩りを止めろだなんて言えない。
しかし前田は、猗窩座に、もう少し落ち着いた生活をしてほしいと思っていた。
「せやな、わいも後藤さんに言うたわ。猗窩座に狩りを止めろとは言えへんって。
でもな、わいがおまえに結婚しろ言うてるんは、おまえに守るものがでけへんとあかん思うたからや。
わいもおまえの事情はわかっとる。昔は、わいも弟殺されて、夜叉みたいに殺し回ったからな」
「ああ……そうだったと言っていたな」
「そないなわいが思い直したんは、いまの嫁はんに出会ってからや。
人間にはな、家庭があらへんといかん。そうしてこそ命を惜しむこともできるねん。
村田もな、結局は狩り止める言うてたで」
村田は、脚にギブスをして、ベッドの上で横になっていた。
あばらを骨折しており、まだ身動きすることは難しいと言う。
負傷の原因は、先日の狩りだった。
人魚に引きずり込まれる勢いで、船の欄干に全身を強打したらしい。
気絶して海に引き込まれる寸前だった村田を、ほかの狩人たちが辛うじて助け出したのである。 >>511
「おお、猗窩座やないか」
「ああ、大丈夫か?」
「大丈夫に見えるか。いまにも死にそうやで」
村田は、猗窩座を除けば、狩猟チームでもっとも若い狩人だった。
猗窩座が入ってきたとき、やっと年下の弟ができたと、ずいぶん喜んだものである。
猗窩座がすぐに出て行ってしまったので、それも束の間のことだったのたが。
「村田、もう狩りを止めると聞いたが」
「もう知っとるんか。耳が早いな」
「前田から聞いた」
「せや、もう止めようと思ってな」
村田も血気の激しさで言えば、猗窩座に負けず劣らずの狩人だった。
チームの中でも、もっとも大胆で過激に人魚を狩ってきた人物である。
そんな村田が、たかが一度死にかけたくらいで引退するなど、猗窩座には納得が行かない。
「病院で意識が戻るまでの記憶はないんや。
あばらをやられて、そのまま気絶してたかんな。
目ぇ覚ますと、目の前にボウズらがおって、パパ気ィついたんかと泣き出すんやがな、思わず俺も泣いてまったわ」
もう人魚狩りは止めようと泣き続ける妻子の姿に、村田の戦意は鎮まった。
そして、そのまま引退することにしたのだと言う。
妻子に心配をかけながら金儲けなんてするものではないと。
そう言う村田に、前田が深く頷く。 >>511
「せやな。わいらは、家族に気苦労かけて生きとる、業の深い人生やさかい」
病院を辞す途中、前田が、もう一度猗窩座に言い聞かせた。
「気ぃ変わったら、いつでも言うてくれ。おまえの嫁になりたい言うて列作っとる女らが、ぎょーさんおるさかい」
「さっきは、俺たちは家族に気苦労をかける業の深い人生だと言ってたではないか」
「せやから言うてんねん! 命掛けの仕事しとるおまえにはなァ、少しでも命を惜しませる相手が必要なんや」
「そう言う前田だって、いまでも狩りを続けているだろ」
「わいがおまえみたいに命知らずな狩り方したことあるかい。死にそうや思うたら引いとるやろ。
わいもまさこが卒業したら引退しよう思てんねん。別にいまでも金には困ってへんけど、ガキ育てるまでは仕事があらへんとな」
前田が猗窩座の肩を叩く。
「おまえの気持ちもわかる。でもな、いつも言うとるやろ。
いつまでもそないに生きとったらあかん。人を失った痛みは人で癒すもんや。わいの言うたこと、よう覚えとき」
船を走らせて島に戻りながら、猗窩座は、前田の言葉を考え続けていた。
確かに、独り身の人間と家族がいる人間とでは、狩りの態度が違ってくるしかない。
自分もそうだし、自分の知っている狩人たちも、すべてそうだった。
前田が結婚を薦める理由を、猗窩座は十分に理解している。
前田は知らないが、猗窩座にとって、すでに杏寿郎がそういう存在になっていたからだ。
前田の言葉と村田の決心を思い返しながら、猗窩座は、人魚ハンターたちの家族の守り方について考えていた。
人魚への憎悪は、相変わらず猗窩座の胸の内で燃え続けていたが、これ以上、その憎悪だけを優先させて生きていくわけにはいかなくなった。 埋め立てまーんがいるけどホモの話しようや
ホモ達の集団旅行 布団で抱き合う(画像あり)
http://hayabusa9.5ch.net/test/read.cgi/news/1624097979/
4 名前:ウォルフ・ライエ星(東京都) [EE][] 投稿日:2021/06/19(土) 19:20:31.58 ID:1vqYVcp10
シャワーの先っちょが糞まみれに 怒った口調でもないし、叱るような口調でもない。
胸が痛くなるほどに心配が滲んだ声である。
「幼体の人魚だから大丈夫だと思ったんだよな。綺麗だし、可愛いし、全部わかるぞ。わかるが……人魚の成長は想像以上に早い。
それに人間である以前に獣だ。それも人間の頭が付いた獣だから、なおのこと質が悪い。
その人魚が人を食べないと言ったって? それは、そいつが勝手に決められるものじゃないんだ」
猗窩座は、静かな声で説明した。人魚は、人間の理性と獣の本能を同時に持つ生き物だから、頭と体で食い違う行動を取るのだと。
その人魚が杏寿郎に言った言葉に偽りはないだろうが、本能ばかりは自分でコントロールできるものではないため、いつだって豹変する可能性があるのだと。
丁寧に杏寿郎を納得させていく。
「だから杏寿郎、もう二度と会うな。呼ばれても知らない振りをして、海岸には近づくな。約束しよう」
そう言った猗窩座は、小指を差し出した。
あどけない子どものように小指を絡ませて、親指で判子まで押す。
自分の親指に強く押しつけられた猗窩座の親指を感じながら、杏寿郎は、必ずこの約束を守ろうと、何度も心に誓った。
猗窩座がどんなに人魚を憎んでいるか、杏寿郎は、だれよりもよく知っている。
しかし猗窩座は、杏寿郎にアリエルの説明をするときに、いつも人魚の話をするときに使う攻撃的な口調とは、まったく違う話し方をした。
その人魚も所詮は獣だとか、嘘を言っているのだとか、頭ごなしに否定するようなことは一切言わなかった。
杏寿郎とアリエルの交わした交流を尊重し、配慮してくれたのである。
杏寿郎が期待していなかった部分にまで、猗窩座は心を砕いてくれた。自分を深く想ってくれている人の言葉には従うべきだ。
無駄な知識はこうやって覚えていくんやな
39 名前:ビッグクランチ(茸) [ZA][sage] 投稿日:2021/06/19(土) 19:26:03.33 ID:lfcUezGr0
>>31
GMPDってのがガッチリ、ムッチリ、ぽっちゃり、デブの略だからな
71 名前:赤色矮星(ジパング) [EU][sage] 投稿日:2021/06/19(土) 19:33:46.61 ID:dE6FfxTh0
>>39
なんで知ってんだ…?
81 名前:エイベル2218(ジパング) [US][sage] 投稿日:2021/06/19(土) 19:36:46.44 ID:QK7c9OgE0
>>39
また無駄で役に立たない知識を得てしまった いつもと変わらない一日だった。
猗窩座は昼寝をし、その間、杏寿郎は海岸に出る。
しかし、静かな海岸を歩いていると、久しぶりの耳慣れた声が聞こえてきた。
杏寿郎! という呼び声に、反射的に振り返るところだったが、猗窩座との約束が脳裏に浮かぶ。
杏寿郎は、わざと気づかない振りをして、家に向かって踵を返した。
背後から杏寿郎を呼び続ける声色が、歓喜から疑問に、そして悲痛なものへと変わっていく。
「杏寿郎! どうしたの? わたしです、行かないで!」
彼女の声が、どんどん涙ぐんでいくのがわかる。
杏寿郎は、思わず後ろを振り返ってしまった。
アリエルは、泣いていた。
人魚は、肉体的な苦痛がない限り、涙は流さないはずなのに、彼女の涙は、間違いなく悲しみの涙だった。
胸がぎゅっと締めつけられる。
最後に一度だけ話をしよう。
本当に最後の、別れの挨拶だ。
結局杏寿郎は、身を翻して、アリエルの傍に近づいた。
近づいてくる杏寿郎に、アリエルは、涙で瞳を潤ませながらも、嬉しそうな笑顔を浮かべる。
いつものように挨拶を交わし、杏寿郎は、もうアリエルとは会えなくなったことを話した。
「あの狩人のせいですか?」
「そう。約束したんだ、人魚とはもう会わないって。本当は、今こうして話してるのもダメなのだ。俺、怒られてしまう」
アリエルは、猗窩座の禁止令を不当に感じたらしい。
その狩人は自分を誤解しているのだと抗弁するが、杏寿郎は横に頭を振るだけだ。
きみとの時間はとても楽しかったけど、これからはもう会えない、と。
杏寿郎は、アリエルに「綺麗な人魚になってね」と言い残し、立ち上がろうとした。そのとき、アリエルが杏寿郎の腕を掴む。
「どうして狩人の言うことを聞くんですか? 行かないで」
「アリエル」
「わたしは杏寿郎が好きです」
冷たく強ばったアリエルの表情に、なぜか背筋が冷えた。
杏寿郎は、アリエルの手を振り払おうとするものの、アリエルの握力は強く、杏寿郎の腕から離れない。
「このまま会えなくなるのなら、いっそのこと杏寿郎の子を産みます」
アリエルが牙を剥いた。
驚愕した杏寿郎は逃げを打つが、それよりも速くアリエルが杏寿郎の肩に噛みつく。
肩から全身に痺れが広がった。
弛緩した杏寿郎の体をアリエルが海の方へと引きずり込んでいく。
力の入らない声帯を必死に動かして、杏寿郎は猗窩座の名を呼んだ。
しかし、その叫びは、虚しく空を震わすのみ。
体が海水に浸かる。
ぞっとするほど冷たかった。
その瞬間、アリエルの頭蓋に銛が突き刺さった。
飛沫く鮮血に打たれて、朦朧としていた意識が一気に晴れる。
頭に銛を生やしたアリエルは、そのまま死体になって崩れ落ちた。
打ち寄せる波がアリエルの体を覆う。猗窩座が狂ったように走ってきて、杏寿郎を掻き抱いた。
「杏寿郎、」
襲撃のショックに、杏寿郎はガタガタと体を震わせている。
猗窩座は、杏寿郎の体を砕けんばかりに抱きしめて、深く息を吐いた。
猗窩座の心臓は、いまにも弾けそうに、どくどくと脈打っている。
「言っただろ、危ないと。大変なことになるところだったではないか。俺がいなかったら、どうするつもりだった」
「すまん、すまない、猗窩座……」
そう言いながらも、杏寿郎の焦点の合わない瞳は、アリエルの死体に向けられていた。
水面に広がった亜麻色の髪が、ゆらゆらと不規則に泳いでいる。
穿たれた頭蓋から溢れる鮮血が、濡れた砂浜の中に染み込み、海水に広がった。
「急に目が覚めて、そしたらお前がいなくて、もしかしてと思って外に出たら、お前が……お前が……」
「俺を拐おうとしてた。人を食べたりなんかしないと言っていたのに、信じていたのに……」
「獣だからだ。人を喰う獣なんだ」
毒による麻痺が徐々に広がって弛緩する杏寿郎の体を抱き上げて、猗窩座は立ち上がる。
そして、俯せに伸びているアリエルの死体を足で蹴ってひっくり返した。
「成体だ」
杏寿郎を連れ帰ってソファーに寝かせた猗窩座は、まず人魚の血をコップに注いで杏寿郎に飲ませる。
何度も嘔吐いて目尻に涙を浮かべながらも、杏寿郎は、戻すことなく最後まで飲みきった。
杏寿郎を落ち着かせるために、ずっと背中を優しく叩き続けていた猗窩座の瞳も涙で潤んでいる。
未だに驚愕が冷めやらず、胸を大きく上下させていた。
「ごめんな、猗窩座。本当に約束を守ろうとしていたんだ。でも……」
「わかっている、お前のせいじゃない。成体になった人魚には勝てない。杏寿郎は約束を破ったわけじゃない。俺たち、早く引っ越そう、な?」
自分を慰めてくれる胸の中で、結局杏寿郎は泣き出してしまう。
長い間、親しくしていた相手からの襲撃は、衝撃と悲しみを同時に齎したのだ。
嗚咽しながらアリエルとの思い出について脈略なく語り続ける杏寿郎。その話を聞いてあげていた猗窩座は、ふと気になることを聞き咎める。
杏寿郎が狩人と暮らしていることを、すでに人魚たちが知っているということを。
杏寿郎を慰めながら、猗窩座は、その意味について何度も考えを巡らせていた。 その日の夜、猗窩座は、いつもより遅い時間に狩りに出る。
杏寿郎を寝つかせて、そっと家を抜け出した猗窩座は、暗闇の中で静かに狩りの準備をした。
今日の狩りには、多くの武器などは必要ない。
猗窩座は、斧と分厚いベニヤ板、それにバケツを揃える。
最後に、昼間に殺した幼い人魚の死体を船に積んだ。
人魚の匂いを追って、通常の狩猟地より、さらに深い海の奥へと船を走らせる。
当たりをつけたところで船を止め、いつもとは違い、なにも待つことなく、すぐに行動を開始した。
今日は人魚の接近を待つ必要がない。
人魚たちは、いつものように船の周りを旋回して、機会を窺っているのだろう。
暗闇の中でも、無数の視線が感じられる。
幸いなことに、今夜は月も明るく、海中が明るかった。
観客が十分に揃った頃、猗窩座は、船に積んでいた人魚の死体をデッキの中央に引きずり出す。
分厚いベニヤ板の上に乗せた死体からは、すでに腐った魚の臭いが充満していた。
血抜き溝にバケツを置いた後、船室から斧を取ってくる。
そして、死体めがけて、斧を振り下ろした。
ドン――鈍い衝撃音と共に、人魚の片腕が跳ねる。
冷えた返り血が、猗窩座の顔に飛び散った。
しかし猗窩座は、気にすることもなく、切断した腕を海に放り投げた。
もう一度振り下ろされた斧に、今度は残りの腕が切り落とされる。
それも海に投げ捨てた。 >>535
意味不明
前田まさおは物語からでてくるな 一体どうすりゃええんや
119 名前:アルタイル(富山県) [BR][sage] 投稿日:2021/06/19(土) 19:47:24.63 ID:A0WdQQYe0
明日6時頃行きます。
みなさんの見ている前で公開で陰毛をそられてみたいです。
誰かやってくれる人がおりますか。
本人確認はサウナの中で竿を持って「とくさんか?」と聞いてください。
「違います」といいますからそうしたら竿を引っ張って洗い場に連れ出し公開陰毛剃りを行ってください。
あとは皆様のおもちゃです。
215 名前:アケルナル(図書館の中の街) [US][] 投稿日:2021/06/19(土) 20:44:36.69 ID:waUPI4DL0
>>119
とくさんのパラドックスからは誰も逃れられない ニキ達たくましいなぁ笑うわこんなんw
総受けが荒らされてる時の癒やしにすら感じてきたわ >>539
埋まっても次スレ立てればええだけや
それよりとくさん回避方法の方が大事やで 猗窩座が渾身の力で振り下ろす斧の下で、人魚の柔らかい体は、徐々に本来の形を失い、ただの肉塊に変わっていく。
猗窩座は、まるでステーキを切るように、人魚を細切れにしていった。
骨が剥き出しになった肩。
黄色い脂肪が垂れ落ちる乳房に、内臓のぶら下がる胴体。
そして、すでに末端が腐り始めている尾鰭。斧を振り下ろすと同時に切り落とされる肉塊を、その都度、黒い海の中に投げ込んでいく。
重い斧を何度も振るったせいで、猗窩座の体は、瞬く間に汗だらけになった。
雨のように流れる汗が目に染みる。
呼吸も荒い。
汗に濡れそぼった服は、身動きする度に肌に張りついて疎ましかったが、猗窩座は、疲れも忘れて作業に没頭した。
時間が経つにつれて、人魚の死体は、見る見るうちに小さくなっていく。
あまりもの酷使に、腕の筋肉が痙攣し始めた頃、ついに首だけが残った。
斧を投げ捨てるように放り出し、猗窩座は、亜麻色の髪を鷲掴んで、首を持ち上げる。
そして、船を煌々と照らすライトに掲げ、人魚の首を高々と晒した。
まだ近辺に残っている人魚がいれば、この首が生々しいほどにはっきりと見て取れたはずだ。
臆病なことに、とうの昔に逃げ出したようだが。
首を海に投げ捨てた後、猗窩座は、溝に置いていたバケツを手に取った。
最後に、バケツになみなみと溜まった腐った血を海に撒き散らす。
すべてを終えた猗窩座は、デッキにどさりと座り込み、しばらくの間、上がった息を整えていた。
全身が燃えるように熱い。
一息吐いた後、猗窩座は立ち上がり、船のエンジンをかけようとする。
そのとき、微かな水音が響いた。
振り返ってみると、見慣れた顔が水中から現れる。
ぷかぷかと浮かぶ死体の断片の間で、女王が、じっと猗窩座を見つめていた。
「久しぶりだな」
猗窩座の挨拶にも、女王は、なんの返事も返さない。
なにかを抱きかかえており、目を凝らしてみると、先ほど猗窩座が投げ捨てた人魚の首である。
猗窩座は、口端を歪ませて嗤った。
「そいつも大事にしていた娘なのか」
「わたしの産んだ娘よ。次の頭になるはずだった」
女王は泣いていた。
「あの男を食べるつもりはなかった。本当よ。あの子は、ただ仲良くなりたかっただけなの」
涙ぐんで言い募る女王だが、猗窩座は興味がない。
「あんたは、俺にとって杏寿郎がどういう人間か、わかっているんだろう。だったら、どうして俺がこんなことをしたのかもわかるはずだ」
「あの子は悪意なんてなかったわ」
「でも結局、杏寿郎を喰おうとした。俺にとって重要なのは結果だ」
「仕方のないことよ。あの子は人魚ですもの」
「そう。だから、こうなったのも仕方のないことだ。杏寿郎が誰なのか知っていながら、杏寿郎に手を出すのを放っておいた母親のあんたが愚かだったんだ」
堂々巡りの議論を続ける気はない。
猗窩座は、女王に背を向けて、船のエンジンをかける。
モーター音が喧しく鳴り響き、静かだった波が荒立った。
その騒音の中で、女王の声が、はっきりと聞こえてくる。
「あなたも、わたしがこの娘の母親だとわかっているのだから、いまのわたしがどんな気持ちかわかるでしょう。
必ず後悔させてやるわ。あなたを必ず殺してやる」
「その程度の復讐心は俺にだってある。互いを後悔させるのが俺たちの関係だろう。
最初に血を流させたのは、あんただ」
それ以上の返事はなかった。
娘の首を抱き締めたまま、母親は、暗い海の中へと姿を消す。
猗窩座も、振り返ることなく船を出発させた。
猗窩座は、眠っている杏寿郎を起こさないように、そっと玄関を開けて家に入る。
浴室に直行していたのだが、ふと足を止めて、リビングに入った。
リビングの壁に飾っていた人魚の外皮が、月明かりを浴びて、真っ青に煌めいている。
海からの帰り道、猗窩座は、人魚から手を引こうと思い始めていた。
この島を去るだけではなく、完全に人魚から離れようと思ったのである。
どうしてそう思ったのか、猗窩座自身にもわからない。
東京に戻ろうか。
そう考えながら、猗窩座は、人魚の外皮をゆっくりと撫でた。
鱗のざらざらとした冷たい感触が指先を掠める。 これはあかん
【画像】修学旅行まんさん「朝起きたらカップルが出来て抱き合ってた」パシャ
http://swallow.5ch.net/test/read.cgi/livejupiter/1619313502/
36 名前:風吹けば名無し[] 投稿日:2021/04/25(日) 10:21:41.96 ID:cJQ/FXo7M
空いてるホテルや観光地にこれ幸いとゲイの集団が押し掛けてるって去年言われてたな
糞まみれにしてそう 「母さん。俺、頑張ったよ」
久しぶりに発音した『母さん』という言葉に、涙で視界が一気に滲んだ。
しかし、ぐっと堪えて、猗窩座は言葉を継ぐ。
「これで十分かわからんが……本当に頑張ったんだ。だから、もう終わりにしてもいいよな?」
疲れきった体からは潮の匂いがした。
生臭い血の匂いもする。
もう、この匂いから離れたいと思った。
二階建ての家で嗅いだ芝生の匂い、薔薇の匂い。
母さえ許してくれるのならば、芳しい世界に戻りたい。
「幸せになりに行くよ」
刹那、薄い雲の影が、煌々と明るい月光を覆っては流れ、青い外皮がちかりと輝く。
目に染みるほど青い光を見つめながら、猗窩座は、喉が痛くなるまで嗚咽を堪えていた。
ひとり本土に行ってきた猗窩座の腕の中には、一匹の猫がいた。
猗窩座の気配に、顔を輝かせて玄関に向かった杏寿郎は、猫を見た瞬間、一目で夢中になってしまう。
柔らかい毛並みの三毛猫は、ずいぶん社交的らしく、猗窩座が床に下ろしてやると、早速杏寿郎に近づいて、その脚に顔を擦りつけるなど、愛嬌たっぷりの仕草をしてみせた。
「すごい可愛い。でも、どうしたのだ?」
「肉屋のおばさんに貰ったんだ。数日前から店の庭に住み着き始めた猫なんだけど、何度追い出しても出て行かなかったらしくてな。
猫でも飼おうかと思っているって言ったら、こいつを飼えって渡されたよ」
杏寿郎は、可愛くて仕方がないと瞳を輝かせている。
抱っこしようと持ち上げると、かなり重かった。
「もう成猫だな。すごく重い」
「だろ。重くて連れてくるの大変だった。そいつだけじゃなくて、まだ船に猫の荷物が山ほどあるぞ。
餌もあるし、セメントの砂みたいなのもあるし。
動物病院に行って、ペット用品くれって言ったら、なんかいろいろ出されてな。
たかが猫一匹飼うのに、なにがそんなに必要なのか、わからんが」
猗窩座がぶつくさと不満を言う。しかし、猫を連れてくるという誇らしい業績に、その表情は意気揚々としていた。
「お前が飼え。名前もつけて。猫みたいな人魚じゃなくて本当の猫だからな」
杏寿郎は、猫の頭を撫でながら、その瞳を見つめた。
杏寿郎を見返す澄んだ瞳が翠色に輝く。
「アリエルにしようかな」
猗窩座は、お手上げだ、と言うように笑ってしまった。
新しい家族になった猫のアリエルは、妊娠中だった。
「やけに重いと思ったら、赤ちゃんがいたんだな」
すっかり大きくなった腹を杏寿郎が優しく擽ると、アリエルが気持ちよさそうに喉を鳴らす。
「肉屋の庭から出ていかなかった理由って、そこで子を産もうとしていたからか」
「うちに来れてよかったな」
猗窩座が茹でた鶏肉の裂いたものを持ってきた。
杏寿郎とじゃれて遊んでいたアリエルだが、猗窩座が皿を床に下ろすと、杏寿郎には目もくれずに鶏肉にがぶりつく。
「こいつ、俺たちよりも食ってるんじゃないか? 鶏五羽が三日も保たないんだが」
「当たり前だろ。お腹の中に何匹も赤ちゃんがいるんだから」
「子猫が生まれたら、きっとそいつらも滅茶苦茶食べるよな? 懐が寒いんだが」
大袈裟に泣き言を言う猗窩座に、杏寿郎が大きく笑った。
君、自分は金持ちだって見栄張ってたくせに。
猗窩座は、熱り立って叫ぶ。
見栄じゃなくて事実だ!
それで猗窩座は、猫の餌について、もう二度と文句を言わないことにした。
老人の家主がヨーロッパから帰ってくると、契約は順調に進んでいった。
有名な『人魚狩りの青年』が買い主であることに、老人はかなり満足しているらしい。 「おまえさんになら、心おきなく任せられるわ」
ひとりで暮らすのかと訊かれて、杏寿郎と一緒に暮らすつもりだと答えると、老人は、さらに満足げに笑う。
「親友同士で暮らすんか。ええことやな。この家はなァ、子供たちを東京の大学に行かせた後、ばあさんと二人で暮らそうと建てた家なんや。
二人で余生楽しく暮らそう思てたら、ばあさんが十年も生きずに死んでしもて、長い間、こないに広い家でな、わし一人で暮らしてきたねん。
二人で暮らすんやったら、ちょうどええなァ。
そのうち一人ずつお嬢さん連れてきて、一人は一階で、一人は二階で暮らしたらぴったりや」
二人の人生設計まで立てながら嬉しがる老人に、二人は、ただ笑ってみせるだけだった。
老人の言ったようにではないが、とにかく二人は、幸せに末永く暮らしていくつもりなので、要旨は合っていると言えるだろう。
契約書を作成し、契約金を支払った後、猗窩座は杏寿郎と家具屋に寄った。
新しく買ったばかりのベッドとソファーを除いては、島の家から持って来れそうな家具は一つもないと言って、猗窩座は、新しい家具を見回る。
ひとりで暮らしていたときは、安物のベニヤ板で作ったタンスや事務デスクで構わなかったが、新しい住まいでは、きちんとした家具を揃えたかったのだ。
カタログを出した店員がコーヒーを淹れに席を外した隙に、杏寿郎は、俺たち、まるで新居の準備をしてるみたいな、と囁きながら笑った。
せっかくだし結婚式でも挙げようか? 猗窩座がそう続け、小さく笑い合っていた二人だが、コーヒーを持った店員が戻ってきたので、多少の無理を含む冗談はそこで途切れる。
新生活の準備は、予想以上に煩雑だった。
新しい壁紙を選び、家具を揃え、ついでにさつまいも用の冷蔵庫も買いたい。
あれこれと指折る猗窩座に、杏寿郎は、ゆっくりやっていこうと苦笑する。
「ほんで、引っ越しの準備は順調か?」
「ああ、まあ、特に問題はないな……あれこれ買うのも楽しいもんだ」
猗窩座は、前田の家で、まさこ母娘と買い物に行った杏寿郎を待っていた。
買い物に行くまさこが、それはもうしつこくねだり続けて、ついに杏寿郎を連れ出すことに成功したのである。
これからご近所さんになったら、もっと連れ回してやるんだから、と釘を刺すことも忘れない。
前田は、猗窩座が引っ越しをすると聞いて、あれこれと心配していたらしい。
猗窩座自身、自分が実の息子のように思われていることはわかっていたので、前田の干渉は、少し煩わしいながらも、ありがたいことだった。
「ちと金がかかるやろな」
「これまで本当に使い道がなかっただろ? それって、このときのためだったようだ」
「ぎょーさん使えよ。金を使こて、足りない分を満たすために稼ぐ。それが人生やろ。
とにかく、本土に戻る決心して、ホンマによかったわ。
ほな、狩りはここで続けんのか? せっかくやし、わいらのチームに復帰したらどや」
「いや……止めようかと思っている」
「なんでや」
「実は、最近人魚が怖いんだ。もう潮時かなと」
「おまえも人魚を怖がったりすんのか?」
「死ぬかもしれないだろ。死ぬかもしれないから怖い」
実際の雄同士はこんな感じやで
11 名前:禁断の名無しさん[sage] 投稿日:2021/02/03(水) 17:00:46.14 ID:d046Z6sx
アニキィ語録
「アニキィおれのケツマンコにザーメン味わわせてくれよお」
「モーニングセックスいかがっすかあ?」
「締まってるすかあ?締めてますよお」
「アニキィ 気持ちいいっすかぁ?」
「アニキィ 下から突き上げてくれヨオ」
「うおっ、クセェ〜!ザーメンの臭いたまんねぇヨォ〜」
「オレのケツ、ザーメン臭くて嫌がられるんすけど兄貴ありがとう」
「中でイッてくれよォ」
「いいよォ〜、いいよォ〜」
「中でイッちゃったっすか?ありがとう、ありがとう」
「チンポが大きくなるおまじないですよお」
「ちょいとばかり大きいんだけどョ」
「Veroで大人気なんだよぉ〜」
「イッてもいいよぉ?」
「ガバガバオマンコに入ってるゥ」
「(掘られ雄演技の声で)おおーっ、マンコ壊れちゃうヨ、もっと突いてくれヨォ、
(地のオバさんダミ声で)…ゴムはずしたらァ? ナマのほうがキモチイイわよォ?」
「ああー俺のマンコにザーメンドクドク入ってくるヨォ」 前田は、予想外の答えを聞いて、驚いたように目を見開いた。
次いで、表情が柔らかくなり、口元に笑みが浮かぶ。
「杏寿郎が狩りに来よったところを、おまえが救ったんやよな?」
「そうだ」
「ホンマ、大事な人やな。大事な人や、おまえにとって」
本土に引っ越してからも杏寿郎と暮らすと言う猗窩座に、前田もなにか察するところがあった。
詳しいことはわからないが、猗窩座にとっての杏寿郎は、本当に大事な縁のように思える。
結婚する気がないのなら、気の合う友人と暮らすのもいいだろう。
猗窩座の傍に誰かがいなければ、と思い続けてきた前田だが、やっと肩の荷を降ろすことができそうだ。
「もう親御はんのことは思い出さへんのか?」
「思い出さないわけがないだろ」
「せやのに狩り止めてええんかいな」
「もう十分かなと思った」
猗窩座は、笑顔とも泣き顔ともつかない複雑な表情を浮かべて、視線を伏せた。
「正直、俺の復讐は、家族を拐った人魚を殺し尽くしたところで終わってたんだ。
なのに、その後も人魚狩りを止めなかったのは……止める理由がなかったからだ」
「ほんで?」
「いまは止める理由ができた」
「せや、せや。ホンマに頑張ったな。
あないに頑張ったんや、もう休んでええとも。
親御はんや兄さんらも、もう十分にありがたく思てるはずやで。ホンマ頑張ったわ、猗窩座」
そう繰り返して、猗窩座の肩を叩く前田の目には、うっすらと涙が浮かんでいる。
どうして前田が泣くんだ。
そう言って笑う猗窩座に、慌てて涙を拭きながら、涙じゃなくて汗だと見え透いた言い訳をした。
「引っ越しはいつ頃や?」
「来月の中旬だ。残代金の支払いは今月末だな」
「おお、まだちと間があるな。おまえらがこっちに引っ越す前に、わいもいっぺん島に行ってみよか思てるわ」
「別もなにもないが?」
「なにもないことあるかいな。あそこの景色は絶景やろ。でも、おまえがいなくなったら、あそこはホンマもんの無人島になるわけや」 夜風は、いつの間にか冷たくなっている。
二人は、頻繁に島を歩き回った。
いざ島を去るとなると、すべてが名残惜しくなる。
あまり良い思い出のない場所にも関わらず、猗窩座は、切なげな瞳で島の景色を見渡していた。
杏寿郎も、島での暮らしを振り返る。
死んでも構わないという苦い覚悟でやって来た島で、思いも寄らぬ人と出会い、思いも寄らぬ出来事を体験した。東京にいた頃は、想像もできなかったことばかりである。
伝説の存在を見に来たときから、今に至るまでに経験したすべて。それは、その形が美しかれおぞましかれ、浪漫だった。
どこに行っても、どんなに時間が経っても、この島だけは決して忘れないだろう。
杏寿郎の味わった最高の浪漫だった。
猗窩座にとっても、この島に纏わる痛みと悲しみが、長い時間を経た、いつかの遠い未来では、浪漫として残れたらいいのに。
杏寿郎は、そう願う。
その晩、アリエルの出産が始まった。
床に羊水を流して後ろ足をばたつかせるアリエルが、前もって用意しておいた産箱の中に入る。
陣痛が始まった。
猗窩座と杏寿郎は、その様をじっと見つめて、静かに待つ。
猗窩座も杏寿郎も、緊張しきっていた。
アリエルが苦痛に鳴き、あちこちに身を捩ったが、人間にできることはなにもなかった。
三十分ほどの陣痛が続いた後、ついに一匹目の頭が見え始める。
「出てきたぞ!」
猗窩座は、自分も知らないうちに歓声を上げていた。
透明な膜に覆われた子猫が、ゆっくりと産道から姿を現す。
一分が千年にも思える瞬間の後、完全に子猫が生まれ落ちると、アリエルは、慣れたように子猫を包む膜を噛み破り、濡れた毛並みを舐めてやった。
子猫の毛皮がある程度乾いた頃、杏寿郎が注意深く臍の緒を切る。
子猫はアリエルに近づいて乳を呑み、アリエルは再び出産を始めた。
その日、アリエルは、全部で四匹の子猫を産んだ。
最後に臍の緒を切ってやった子猫が、身じろぎながら母乳を吸う姿を見て、ようやく二人は一息つく。
「よかった。頑張ったな」
「明日はお赤飯にしないと」
杏寿郎は、一匹の子猫をそっと手のひらに乗せた。
手のひらの半分の大きさもない子猫は、いまにも壊れそうに柔らかくて脆弱だった。
「すごく可愛い」
子猫から目が離せないでいた猗窩座が、絞りだすように呟く。
しかし翌朝、猗窩座は、冷たい死体になっているアリエルを見つけ、慌てて杏寿郎を起こした。
アリエルの産道に、子猫が半分ほど引っかかっていた。
足から出てきた子猫が、結局生まれることができずに詰まってしまったのである。
血だらけになった布の上で、親を失った子猫たちだけが、ぴいぴいと鳴いていた。
その子猫すらも、一匹が死んでいる。
その光景を呆然と見下ろし、絶句する猗窩座を急かしたのは、杏寿郎だった。
早く船で子猫用のミルクを買ってこいと家の外に押し出す。
昨夜、アリエルから目を離してはいけなかった。
母親と兄弟を失った三匹の子猫たちが、杏寿郎の手に頭を擦りつけてくる。
小さく柔らかい口が、乳を探して指を吸う感覚に、杏寿郎は、少し泣いてしまった。
猗窩座が、ミルクを買って、戻ってくる。
病院で教わったとおりに作ったミルクを哺乳瓶に入れ、小さな口にくわえさせると、子猫たちは、それを少しずつ吸っていった。
「三時間ごとにあげないといけないそうだ。あとで排泄もさせないといけない」
「大丈夫だろうか。こんなに小さいのに……」
「でも、やれるところまではやらないと」
結構な時間をかけて、ミルクを飲ませる。
腹の膨れた子猫たちを、清潔なタオルを敷いた寝床に入れた後になって、ようやく二人は、アリエルを弔う余裕ができた。
猗窩座が、タオルを持ってきて、アリエルと子猫の死体を包み込む。
浜辺のさらに向こう、海水の入らない松林の奥で死体を埋める間、二人は、ずっと無言のままだった。
「病院で言われたんだが、本当は猫が出産する前にレントゲンみたいなのを撮るそうだ。前もって子猫が何匹生まれるのか確認しておく。俺たちも何匹なのかわかってたら、全部生まれるまで待ってたのに……」
「そうだったのか……」
「すまん。子猫は俺たちがちゃんと育てるからな」
猗窩座が軽く目元を拭った。
杏寿郎は、その肩を優しく叩く。
家路に就く間、杏寿郎は、ぼんやりとした瞳で、遠くを見つめていた。かつて失った妻と子供を偲んでいるようで、猗窩座は、敢えて話しかけないことにする。
昔の古傷を抉ってしまったようで、申し訳なくなった。
しかし、家に戻って子猫の世話をする杏寿郎は、限りなく優しい微笑を浮かべていた。
不幸と幸福が半々ずつならば、その人生は、それほど過不足なものではないのだと猗窩座は思う。
どうしようもなく膨れ上がる不幸の重さを、杏寿郎も猗窩座も、よく知っているからだ。
人魚が異常な行動を取り始めたのは、残代金の支払日を数日前に控えた夜のことだった。
その夜、いつものように杏寿郎とDVDを観ていたのだが、かなり近くから、いくつもの歌声が聞こえてくる。家の前にある海岸に人魚が集まっているようだった。
猗窩座は、瞬時に神経を張り詰めさせる。
世界でもっとも美しい声で人魚が歌っていた。
こんなことは、島に住み始めて、初めてのことである。
獲物を直接攻撃できない位置で、成体の人魚が歌うことはない。
人魚は、必ず人間を見て歌を歌い出すはずなのに。
その歌声に惹かれたのは、杏寿郎だった。
ふらふらと立ち上がって、窓の方に近づいていく。
あの歌声をもっと近くで聞きたかった。
猗窩座が、杏寿郎の腕を強く引き留める。
その手を振り払おうとする杏寿郎だったが、猗窩座は、彼を放すことなく、ぎゅっと抱き締めて寝室に連れていった。
部屋にドアをかけて窓を閉め切っても、人魚の歌声は生々しく聞こえてくるばかり。
「気違いども」
猗窩座は、そう呟いて、腕の中にいる杏寿郎の耳を両手で塞いだ。
暖かい手が耳を包むと、杏寿郎の耳に真空が訪れる。
猗窩座の手の中で、波の音が聞こえてきた。雨が降る日の海の音だ。
薄暗い空から吹いてくる湿った風、その下で荒れ狂う海。
真空に包まれて、焦点を失っていた杏寿郎の瞳に生気が戻る。
杏寿郎が正気に戻り、人魚の歌声が止んでも、猗窩座は、しばらくの間、杏寿郎を強く抱き締め続けていた。
どうやら予定より早くこの島を離れなければならなさそうだ。
杏寿郎だけでも。
家を買うのは猗窩座だったが、その課程を処理したのは杏寿郎だった。
大学を中退し、島で狩りばかりしてきた猗窩座は、どうしても社会の仕事を処理するには疎いところがある。
銀行の業務も不動産の業務も、杏寿郎の方がずっと手慣れていた。
最近、杏寿郎と自分を比べて、年齢以上の経験値の差を感じることがある。
杏寿郎を見て、猗窩座は、自分の取り戻していくべき部分を考えた。
世間に戻るべき時間が来たからだ。
住宅資金貸出の件で、本土に行った二人は、銀行の業務を終えて、前田の家に寄った。
猗窩座が昨夜の人魚の行動を説明すると、前田も首を捻る。
そのような人魚は、自分も見たことがないと。
とにかく危なさそうだから、引っ越しの日まで、杏寿郎だけでも前田の家に置いてくれないかという猗窩座の頼みに、前田は快く頷いた。
猗窩座も一緒に荷物をまとめて、明日にでも泊まりに来いと促す。
前田の妻が、遅めの昼食を準備してくれた。
しかし、家に置いたきた子猫が気にかかる杏寿郎は、食事中も心ここにあらずといった様子である。
ミルクの時間があるからだ。
子猫たちは、すくすくと育っていたが、まだ目も開いておらず、もぞもぞと動いてミルクを待つだけの状態である。
杏寿郎は、夜中にアラームを設定してまで、定期的にミルクをやった。
つられて寝不足になった猗窩座は、眠い目を擦りながら子猫の前にしゃがみ込み、お願いだから早く大きくなってくれ、と話しかけたりもする。 用事を終えて、島に戻ろうとしたとき、少しトラブルが起きた。
船のエンジンに不作用が生じたのである。
船にも詳しい前田が様子を見ては、簡単な修理で済むと診断してくれた。
しかし、前田の診断に問題があったのか、この近辺でもっとも船に詳しい男が来て修理を始めたものの、修理にはかなりの時間がかかった。
太陽が黄色く染まり始めると、杏寿郎の顔に、目で見てわかるほど、焦燥の色が滲んでいく。
「ミルクあげないといけないのに」
「大丈夫だ、杏寿郎。まだそんなに時間も経ってないし、これくらいは堪えられるだろう」
「でも、まだ赤ちゃんだ」
修理が終わる頃には、すでに太陽が沈み始めていた。
なにも知らない前田は、このまま泊まっていけと言うが、杏寿郎は気が乗らない様子だった。
杏寿郎の顔色に気づいた猗窩座は、大丈夫だと断って立ち上がる。
「特に心配しなくても大丈夫だ。島まで、たったの三十分だからな。
まだ完全に日が沈んだわけでもないし、帰り道は人魚が出没するところでもない」
「まあ、そうなんやけどな……たかが猫やろ、なにがそんなに大事で大騒ぎなんや」
「尊い命を見殺すわけにはいかない。もう行く。
明日、すぐに荷物をまとめて来るから。大丈夫だよな?」
「大丈夫や言うたやろ。なに遠慮しとんねん。
そういうとこ見ると、おまえもけったいな東京人やな。はよ行け。遅うなったわ」
いつもより速力を上げて船を走らせると、なんとか太陽が沈み切る前に、視野に島を映すことができた。
見慣れた海岸が見え、猗窩座が安堵の息を吐いたとき、前触れもなく船のエンジンが止まる。
船は、慣性と波の動きによって、ゆっくりと海岸に流されていった。
猗窩座は何度もエンジンを回すものの、船は微動だにしない。
少し困ったことになったが、備え付けの小さなボートもあるし、明日それで移動して、本土から引用船を呼んでこよう。
そう思いながら、猗窩座は、船室の外に出る。
そこには、驚愕的な風景が広がっていた。
夕日の落ちていく海岸を人魚の群れが白く覆っている。
ざっと目算するだけでも、七、八十匹はいた。
こんなことは初めてである。
昨夜の異常行動は、このことの予兆だったのだろうか。
しかし、考え込んでいる暇はない。
いま重要なのは、目の前にいる数十匹の人魚が、自分たちを狙っているということだ。
猗窩座は、もう一度船室に戻り、船のエンジンをかける。
動かない。
次に、前田と連絡を取ろうと無線を入れるものの、無線も正常に作動しなかった。
単なる故障なのか、それとも人魚の影響なのか、定かではない。
孤立したという判断を素早く下した後、人魚の動きを注視しながら、猗窩座は、沈着に頭を回転させる。
船室には、水中銃と大銛が二十本余り、そして刈払機があった。
これで持ちこたえられるだろうか。
杏寿郎を船室に入れて、その前を守りながら、近づいてくる人魚を刺殺する。 言うほど簡単ではないだろう。
しかし、このまま何もせずにいるわけにはいかなかった。
猗窩座は、これまでの狩りを思い出す。
もっとも多くの人魚を殺したときは、一度で二十二匹を殺したことがある。素人の狩人たちがやって来たときだった。
そのときの、たった四倍なだけだ。
そう考えて、覚悟を決める。
全部を殺す必要はない。
適度に活路を開いた後、一気に海岸に飛び込んで、島の内側に逃げ込めばいい。
できれば取りたくない方法だが。
いろいろな考えを巡らせながら、猗窩座は、船室のドアを開けて武器を取り出し、まず水中銃を手に取った。
「ここでじっとしてろ、杏寿郎。俺が出るから、お前はここにいてくれ」
「猗窩座」
「俺の言うとおりにしろ。絶対に出て来るな」
「いやだ、猗窩座。行かないでくれ」
「行かなかったら二人とも死ぬんだ」
「じゃあ俺も戦う」
「杏寿郎にはできない。言うとおりにしろ。俺は大丈夫だから」
「猗窩座、お願いだ」
「絶対に出て来るな。出て来たら、俺も死ぬし、お前も死ぬことになる。俺の言うとおりにしろ。ここでエンジンを試し続けてくれ」
猗窩座の意志は、頑固で翻らない。
杏寿郎は仕方なしに頷いた。
猗窩座は、デッキに出て、船室のドアを閉める。
人魚たちが少しずつ船に向かって移動してきた。
海岸にいた人魚は、船に向かって這い始め、海中にいた人魚たちは、ゆっくりと泳ぎ出す。
猗窩座は、群がってくる人魚めがけて水中銃を構えた。
人魚たちは、じっと猗窩座を睨んでいる。
沈黙の中で、ぴんと張りつめた糸のような対峙が続いた。 どちらも気安く動くことができない。
沈黙が壊れたのは一瞬だった。
もっとも船の近くにいた人魚が飛びかかる。
同時に、猗窩座が引き金を引いた。
銛に撃たれた人魚は、虚空で大きくばたつきながら海に落ちる。
水面が大きく波打ち、海水が血に染まった。
人魚たちが息を呑む。
再び訪れた沈黙の中で、先に動いたのは猗窩座だった。
猗窩座は、一匹ずつ人魚を撃ち落としていく。
猗窩座が引き金を引く度に、人魚たちが倒れていった。
人魚たちは、浮き足だって後退するかのように思えたが、すぐさま体制を取り直して船に接近してくる。
猗窩座の射撃にも怖気づかない。
死んだ人魚より生きている人魚の方が何倍も多く、それを迎え撃つ人間は、たったの一人だった。
ついに一匹の人魚が船体に張りつく。
水中銃を構えたまま、猗窩座は、刈払機の位置を確かめた。
船体に腕をかけた人魚は、すぐさま銛に撃たれて絶命したが、それが始まりだった。
人魚たちが一斉に襲いかかってくる。銛を手当たり次第に投擲しながら、猗窩座は、船室の前に陣取って、刈払機のスイッチを入れた。
杏寿郎が船室のドアを叩く音が聞こえたが、ドアを開けてやるつもりはない。
人魚が狂ったように押し寄せ始める。
猗窩座の振り回す刈払機に、人魚の四肢がぼとぼとと切り落とされ、鮮血が飛び散ったが、まだ息のある人魚たちは、血塗れになりながらも猗窩座に腕を伸ばすのを止めなかった。
猗窩座は嵐のように刈払機を振るう。人魚の死体の重さで、船が危うげに揺れた。
あと少し、もう少しだけ。
内心そう叫びながら歯を食いしばる。同族の死体を乗り越えて、絶えず押し寄せてくる人魚の数が、少しは減ったかのように見えたときだった。
一匹の人魚が、猗窩座の腕を掴んでぶら下がる。
振り払おうとするが、がっちりと両手を組み合わせていて、離れやしない。猗窩座は、腕を捩りながら、人魚の首を切り落とした。
しかし、組み合わさった人魚の手は、首を失った死体になりながらも、猗窩座の腕にぶら下がったままである。
さらに他の人魚が猗窩座に掴みかかった。
その瞬間、猗窩座は、バランスを崩して転倒し、刈払機を取り落とした。 刈払機は、人魚に払い退けられて、船の端で虚しく空回りする。
体勢を崩した猗窩座に、人魚が一斉に群がって、全身でのし掛かりながら彼を押さえつけた。
猗窩座は、懐からナイフを抜いて、手当たり次第に突き刺しながら抵抗するものの、端から相手にならない数の差である。
次第に体力も潰えていった。
猗窩座を身動きできないように取り押さえる一方で、ほかの人魚たちが船室の窓を叩き壊し始める。
猗窩座は驚愕した。
人魚が船室のドアまで壊しにかかるとは思っていなかったのだ。
いったい何が彼女たちをこんなにも狂わせているのか。
人魚は、これほどまでに好戦的な生き物ではなかったはずだ。
しかし、いま分厚いガラス窓を叩いている人魚たちは、拳に滴る鮮血にも気づいていない様子だった。
人魚たちの目は、ただ船室内の杏寿郎にのみ向けられている。
拳で、体で、頭でガラスを叩き割ろうとする姿は、まるで意志のない屍のようで、おぞましかった。
相次ぐ衝撃に、ついにガラス窓が割れる。
その途端、肉が裂けて血塗れになった無数の白い腕が、ガラスの割れ目を広げて、船室の中に押し入り始めた。猗窩座は叫ぶ。
「止めろ! 止めろ!」
しかし、その叫びは、聞き届けられなかった。
人魚の手が、抵抗する杏寿郎を無慈悲に引き摺り出す。
杏寿郎は、身を捩って振り払おうとするものの、人魚の力には勝てない。
デッキに引きずり出される際に、割れたガラスを潜り抜けたせいで、杏寿郎は小さく呻いていた。
瞬く間に血に染まった杏寿郎の体がデッキに落ちると、人魚たちが一斉に群がり始める。
「止めろ、放せ。お願いだ、止めてくれ。俺を殺せ! 猗窩座は、いつの間にか泣いていた。喉を嗄らして泣き叫んだ。
手を出すなと、杏寿郎を放せと。
「俺を殺せばいいだろ。俺を連れて行け。俺を殺せと言っているだろ!」
どんなに泣き叫んで足掻いても、デッキに押さえつけられた体は、指一本も動かせない。
唯一自由な瞳に、人魚に拐われていく杏寿郎の姿が映った。
目が合う。
瞳に涙を溜めたまま、杏寿郎が言った。
その声は人魚の鳴き声に埋もれて聞こえなかったが、口の形ははっきりと見て取れた。
まるで耳元で囁かれたかのように、彼の声がまざまざと再生される。
――猗窩座、すまない。
人魚が欄干を越えて、杏寿郎を連れ去った。
それと同時に、猗窩座を押さえつけていた人魚たちも、すべて撤退して海の中に消える。
喧しい水音の後、一瞬のうちに沈黙が訪れた。
細切れの人魚の死体から吹き出した血と体液で、デッキがずぶ濡れになっている。
生臭い血溜まりの中で、猗窩座は、呆然と仰向けに倒れていた。
波が船を柔らかく揺らす。
不幸なことに、猗窩座は、平穏な海と同じだけ無傷だった。
「売女ども。俺のことは殺しもしないで」
人魚たちの目的は、猗窩座ではなかった。
最初から杏寿郎だけを狙っていたのである。
どこからか女王の哄笑が聞こえてきた。
幻聴だろうか。
猗窩座は、自分の神経が過敏になっていることを自覚する。
ぼやける視界に広がる夜空から星が流れ落ちた。
全身が重い。
このまま空が崩れ落ちたら。
陸が打ち砕かれたら。
世界が消え失せればいいのに。
猗窩座は、杏寿郎は自分のせいで死んだのだと思った。
世界が崩落して自分を押し潰してくれることを切に願ったが、夜空は変わることなく美しいばかりだった。
猗窩座は、ただ人魚を殺すためだけに毎日を生きる。
人魚の現れない夜は、耐えられないほど退屈だった。
明るい昼間は、何度も銛を研ぎ澄まして時間を過ごす。
日が沈むと同時に胸が高鳴った。
どくどくと高鳴る心音を聞きながら、夜の海に船を走らせる。
人魚の生臭い匂いを嗅ぎつけたときには、快感すら感じた。
殺せる対象だからである。
今や、人魚を間合いに引き入れて、直接刺し殺すことに、こだわりもしなくなった。
できるだけ多くの人魚を素早く大量に殺すことだけが猗窩座の目標だった。
水中銃を改造して、さらに多くの銛を装填できるようにした。
水中銃を構えてデッキに立ち、四方を見渡す猗窩座は、目に付くがままに人魚を撃ち殺す。
ときどき船に這い上がってくる人魚は、鉄踵で腹を破裂させて、もっともおぞましく悲惨な姿にしてやった。
船の周りで無数の死体がぷかぷかと浮かぶ様に、猗窩座は満足を感じた。
そして、ときには、電動ノコギリで細切れにした死体を海に撒き散らした。ばらばらになった人魚の死体は、人魚には最悪の恐怖に、魚にはありがたい食料になるだろう。
>>559
猗窩座は、家に戻った。家は暗く寒かった。
がらんとしたリビングに、小さな鳴き声が響いている。
子猫の寝床を見てみると、一匹だけが弱々しく動いており、ほかの二匹はすでに死んでいた。
猗窩座は、三匹とも鷲掴んで、海に向かう。
すべて海に投げ捨てるつもりだった。小さな死体を未練なく海に投げ捨て、残りの一匹も投げ捨てようとした瞬間、振り上げた腕が止まる。
生き残った子猫が、掌から手首へとよじ上りながら、もぞついていた。
結局、猗窩座は、子猫をそのまま家に連れ帰った。
ミルクを作り、哺乳瓶に入れて差し出すと、待ちかねていたようにごくごくと飲み始める。
何度も握り潰してしまいたい衝動に駆られて、
手がぶるぶると震えていた。
猫にミルクを飲ませる猗窩座の目から、大粒の涙が流れ落ちる。
しばらくの間、ただ涙を流していた猗窩座は、死んだように眠りについた。
目が覚めると、すでに日が昇って明るかった。
鈍い頭のまま、猗窩座は、まず猫にミルクを飲ませてやる。
そして、よろめきながら立ち上がり、海岸に出て船に乗った。
デッキには、人魚の死体が滅茶苦茶に散乱している。
船の死体を浜辺に投げ下ろすだけでも、かなりの時間がかかった。
死体に火をつけた後、猗窩座は船を掃除した。
一日がかりで船を綺麗に磨き上げる。
家に戻ると、水平線の向こうに沈んでいく夕日が窓から差し込んで、リビングを黄色く染め上げていた。
家は静かだった。
だれもいない。
機械的に猫にミルクを飲ませる。
ミルクを飲みきった子猫は、すぐに目を閉じて寝息を立て始めた。
家は、どこまでも静かだった。
杏寿郎がいない。
食いしばった歯の間から嗚咽が漏れる。
紐で絞められているかのように苦しい喉から、苦痛と嗚咽が同時に押し寄せた。
熱い涙が目に沁みる。
涙がぼたぼたと床に落ち、啜り泣くようだった泣き声は、すぐさま慟哭に変わった。
「杏寿郎、杏寿郎。杏寿郎、杏寿郎。杏寿郎!!」
喉が嗄れるまで杏寿郎の名前を叫びながら、猗窩座は泣き続ける。 何度も拳で床を打った。
心は張り裂けそうなのに、心臓の内側に凝ったものは、どんどん大きくなり、胸に詰まって痛い。
その凝りを吐き出そうと、猗窩座は、狂ったように泣き、何度も床に拳を打ちつける。
拳が割れて血が出ても、胸の内に凝ったものは吐き出せなかった。
いっそのこと、だれかがナイフでこの心臓を裂き、中に詰まったものを抉り出してくれたらと思う。
嗚咽で息ができない。
喉が嗄れて、息が詰る。
血の滲む拳で、今度は胸を打ち始めた。
胸骨の下にドンドンと音が響くほど、何度も拳で胸を打った。
胸が青黒く痣になり、息ができないほど胸を打っても、胸の凝りは出て来やしない。
だれか、この体を引き裂いてくれたら。
体を真っ二つに引き裂いて、喉を詰まらせて胸を締めつける、この熱くて悲しい空気のようなものを抉り取ってくれたら。
猗窩座は、澱んだ目で、箱ごと買い置きしていた焼酎を倉庫から持ってきた。
浴びるように酒を飲んで寝る。
目を覚ますと、真夜中だった。
猗窩座は、猫にミルクを飲ませ、また酒を飲んで眠る。
猗窩座の体は、疲れることもなく、何度も目を覚ました。
ずっと寝ていたいのに、この体は懲りることもなく何度も覚醒する。
目を覚ますと、頭が割れそうに痛くて、吐き気がして……そして、思い出すのだ。
どうして自分が酒を飲んでいるのかを思い出す。
その理由を忘れてしまいたくて、猗窩座は、また酒を飲んで眠った。
昼夜の区別もつかないまま、幾日かが流れた。
目を覚ますと、いまが朝なのか、真昼間なのか。
それとも夜なのか、夜中なのかもわからない。
適当に目を覚ましたときにミルクをやっているだけなのに、猫は、死にもせずに、図太く生き延びていた。
泥のような眠りから覚めると、猗窩座は、ふらつく足取りでリビングに行き、機械的に猫にミルクを飲ませ、ときどき杏寿郎がしていたように排泄をさせる。
それだけが、猗窩座が目的をもって行う唯一のことだった。
ある日、猗窩座は、目を覚ました途端に押し寄せる吐き気に耐えられず、トイレに駆け込んで嘔吐した。
酸い臭いがする透明な胃液に、血が混じっている。
蛇口を捻って口を濯ぎ、顔を上げて鏡を見た。
目が落ち窪んで血走っている。
伸び放題の髭が夜叉のようだ。
鏡に映る醜い姿を見ながら、不意に猗窩座は、まだ杏寿郎を弔っていないことに気づいた。
猗窩座は、そのまま服を脱ぎ、シャワーを浴びる。
髭を剃り、リビングに戻ってテレビを点けた。
朝の情報番組の片隅に、今日の日付が記されている。
あの日から一週間が経っていた。
日にちを確認した後、米を炊く。
米が炊き上がるのを待つ間、子猫にミルクをやり、炊き上がった米をゆっくりと食べた。
胃が爛れて食道が沁みるのを感じながら、丁寧に米粒を噛み砕いて飲み込む。
>>562に続く 人魚たちは、相変わらず猗窩座を恐れていた。
あの日の襲撃は、狂気の生み出した一瞬の催眠だった。
二度も同じ手にやられるつもりはない。
猗窩座は、夥しい数の人魚を殺した。
へとへとになるまで人魚を狩り、ただの一日も狩りを欠かすことはなかった。
それは、もはや狩りではなく殺戮だった。
猗窩座は、自分が狂っていると思った。
そして、狂っていてよかったとも思う。
自分の終わりのない狂気が人魚を絶滅させるまで続くことを切実に願った。
そして猗窩座は、人魚を追撃し始める。
同族の死体に怯えて逃げ出す人魚の青白い体を追って船を走らせた。
人魚の姿を見失うと、猗窩座は、人魚の棲処を探して、近辺の海を狂ったように走り回る。
必ず人魚の巣を探し出してやるつもりだった。
そして、実際のところ、猗窩座がもっとも切実に願っているのは、人魚を殺すことよりも、人魚の巣を探し出すことだったのである。
憎悪よりも、その心の方が、さらに重かったのだ。
しかし、人魚の巣を探し出すことなど、到底不可能なことのように思えた。
猗窩座は、人魚を追跡する途中、どうしようもない絶望感に駆られて涙を流すこともあった。
ある日、女王が悲しげな表情で現れた。
もはや二人は、挨拶を交わすこともしない。
繰り返される復讐の応酬は、二人の間にあった奇妙な友情までをも引き裂いていた。
瞳に青白い炎を灯して見下ろす猗窩座に、先に女王が口を開く。
「いつまでわたしたちを殺し続けるつもり?」
「あんたらが全部消え去るまで」
猗窩座の返事を、すでに女王は予想していただろう。
女王は、猗窩座をよく知っていた。
この復讐の連鎖について、だれよりもよく知っている。
そのため、猗窩座の望みが何なのかも当然知っていた。
彼女は、あの日の襲撃を後悔していない。
しかし、この連鎖は断ち切りたかった。
「あなたの望みは、もっとほかにあるでしょう」
女王の言葉に、猗窩座は、迷いなく答える。
「杏寿郎を返せ」
「杏寿郎を返したら、わたしになにをしてくれる?」
「これ以上、あんたの娘たちを殺さない。そして、俺を食わせてやる」
直接的で簡潔な取引はすぐに成立した。
「次の満月の夜に、ここへいらっしゃい」
猗窩座は頷く。女王は海の中に消えた。
子猫は、いつのまにか乳離れして、ドライフードを食べ始めていた。
小さな体で一生懸命に走り回っている。
母猫とそっくりの三毛猫だった。
猗窩座は、猫に名前をつけなかった。
名前を呼ばないといけないときは、ただ猫と呼ぶ。
猗窩座は、やはり猫が憎かった。
しかし、猫がじゃれ遊ぶ姿に、ときどき笑みを零すこともあった。
猗窩座は、稀に猫を見て笑い、猫に話しかける。
おまえのせいだ。
恨み言を言っても、猫には理解できない。
ただ無邪気な顔で、猗窩座の脚に顔を擦りつけてくる。
猗窩座は、いよいよ自分が狂い始めていると嗤った。
満月までの退屈な日々を、猗窩座は、DVDを観たり、猫と遊んだりすることで過ごした。
一晩中、部屋の電気を消すことも、テレビの電源を消すこともしない。
沈黙は猗窩座を狂わせた。
絶えず光と音が必要だった。
猗窩座は、いつもファイナル・デスティネーションを流しておく。
血と死と悲鳴が乱舞する映画を観ながら、猗窩座は薄く笑った。
この映画を観て怖がりながら自分の帰りを待っていた杏寿郎を想って笑った。
笑っては泣いた。
泣きながら眠った。
満月だった。
一際大きく明るい月が、いつよりも海に近いところで浮かんでいる。
月明かりで、夜の海が青く輝いていた。
手を伸ばせば掴み取れそうな月の下で、猗窩座は、ロープと鋭く研いだナイフを船に積み、約束の場所へと向かう。
先に女王が現れて、猗窩座の到着を待っていた。
猗窩座と視線を合わせた後、付いて来いと目配せする。
同時に十数匹の人魚が現れて、女王を先頭に列を作り、猗窩座の船を導きながら海を泳いでいった。
月明かりを受けた青い海に浮かぶ人魚の白い肌が眩しい。
尾鰭が水中で翻るたびに、鱗が水面を掠って煌めく。
ときどき水の跳ねる波音が沈黙を破った。
人魚たちは、水深の浅いところで踊るように泳ぎながら、猗窩座の船を導いていく。
そして、かなり長い時間が経った後、猗窩座の視界に、とある島が映り始めた。
これまで一度も見たことのない島だった。
月明かりに浴びた真っ白な岩壁が、暗闇の中でも威容を誇っている。
人魚たちは、島の岸壁に猗窩座の船を導いた。
岸壁の一部分が、大きなアーチ型に切り抜かれていて、島への入り口になっている。
猗窩座は、船の速度を落とした。島の内側に続く洞窟は、柱型やアーチ型の自然岩で支えられている。
内部の岩壁も、すべてが白い。
白い岩に反射する月明かりで、洞窟の内部は明るく、島の奥に続く水路も青かった。
しかし、その月明かりも、洞窟の内部に入るにつれて、徐々に弱くなっていく。
同時に、洞窟の岩壁も白から青に、そして紺色へと変わっていった。
船のモーター音が岩壁に反響して木霊する。
人の手が入っていない島へ押し入る船の暴虐に、洞窟中が振動した。
天井から落ちる水滴が小さな音を立てるものの、船の騒音に掻き消される。 これ以上は船で進めないほどに道が狭くなった。
女王は、猗窩座に船から降りることを促す。
猗窩座は、ロープとナイフを持って船から降り、暗い水路を泳ぐ人魚に従って、洞窟の脇道をゆっくりと歩いていった。
闇がかなり深まった頃、人魚たちが小さな洞穴の中へと入っていく。
猗窩座も身を屈めて、洞窟の最深部に足を踏み入れた。
洞穴の中は、光源もないはずなのに明るかった。
青い水晶のような壁が、まるで内側に光を灯しているように、明るく輝いている。
洞穴の中では、数百匹の人魚たちが、各々の場所で思いのままに座っていた。
突然の人間の侵入に、洞穴の人魚たちは、それぞれ不安そうな顔で猗窩座を見つめていたが、どの人魚にも迎え討つ様子はない。
そして数秒後、人魚たちが一斉に、一ヶ所へと視線を向ける。
猗窩座は、彼女たちの視線を追って顔を上げた。
その視線の先では、大きく腹の膨れた青い尾の人魚が、怯えきった顔をして、ガタガタと震えながら猗窩座を見下ろしていた。
猗窩座は、彼女に向かって歩いていく。
恐怖に凍りついた人魚は、身動きすらできなかった。
例え、彼女が逃げ出そうとしても、ほかの人魚たちが彼女を取り押さえて、猗窩座の前に引き摺り出していただろう。
だから猗窩座は急がなかった。
ゆっくりと青い尾の人魚に近づき、ロープで固く両手を縛り上げる。
人魚が身を捩って暴れ出すが、だれも猗窩座を止めなかった。
一纏めに括った手首を掴んだ猗窩座は、人魚を引きずり下ろし、これまで来た道を引き返していく。
沈黙が支配する水晶窟の中で、猗窩座に引きずられる人魚が尾をばたつかせて水面を打つ音だけが響いた。
猗窩座は、人魚を引きずって長い道を歩き、洞窟の中に停めていた船に戻る。
船に人魚を引き上げた後、猗窩座は、船を動かして洞窟の外に出た。
まだ月は明るく、視界は明瞭だった。洞窟を抜けたところで船を止め、猗窩座は、船室からデッキに出た。
月明かりに猗窩座の影が大きく落ちる。
人魚が啜り泣きながら哀願の視線を向けたが、猗窩座は、黙々と人魚の全身を縛り付け、デッキに仰向けの姿勢で固定させた。
人魚は必死に暴れるものの、固い縄目は緩みやしない。
猗窩座が、人魚の脇に片膝をついた。
首を足で押さえつけて、しっかりと固定した後、ナイフでゆっくりと腹を裂き始める。
涙がころころと転がり落ちる音がデッキに響いた。
膨れた人魚の腹から溢れ出す血で、デッキがじっとりと濡れていく。
半分ほど腹を裂くと、猗窩座は、その中に迷いなく手を突っ込んだ。
熱い腹の中を掻き回して、なにかを探す。
猗窩座の指先に、なにかが触れた。
猗窩座は、注意深い手つきで、それを抉り出す。
小さい鰓と尾まで見分けがつく人魚の胎児だった。
血塊のようなそれを、両手で大事そうに抱いた猗窩座の目から、涙が止めどなく溢れ出す。
「杏寿郎」
そっと血塊を抱き、何度も口づけながら、猗窩座は杏寿郎の名を呼んだ。
呼びながら泣き続ける。
そして、血塊の頭に歯を立てた。
柔らかく小さな血塊を食べ始める。
その様を驚愕の表情で見ていた人魚は、いくつもの涙を落としながら絶命した。
口に広がる生臭い味に何度も嘔吐きながらも、猗窩座は、血塊を咀嚼し続けることを止めなかった。
長い時間をかけて、ゆっくりと最後までそれを食べきる。
肉と血、骨まで、すべてを。
静かな夜の海で、満月と女王だけが、彼を見つめていた。 猗窩座が人魚の死体を乗せて家に戻る頃には、すでにうっすらと夜が明け始めていた。
死体を家の庭にまで引きずって来た猗窩座は、ずっと前にしたことをもう一度繰り返す。
まず人魚の皮を剥ぎ、肉を捌いて、適度な大きさに切り分けた。
切り分けた肉は、ビニール袋に入れて、冷凍庫に保管する。
上体の皮は燃やし、尾の皮は天日に晒して乾かした。
尾の外皮は、二日も晒しておくと、かさかさに乾く。
猗窩座は、それをリビングに持っていき、以前に掛けておいた外皮の横に並べて飾った。
船を掃除すると、乾いてこびりついた血の中から無数の母の涙が出てきた。
猗窩座は、それを一つずつ数えながら歌うように呟く。
「母の涙。一粒で200万。一つ、二つ、三つ、四つ……二階建ての家を買うつもりだった。俺は金持ちだから。あの家で幸せに暮らせたんだ」
猗窩座は、毎日人魚の肉を食べた。
上体は豚肉のように料理し、尾は魚のように料理する。
相変わらず不味いだろうと予想していたが、数年前に食べた人魚よりは、脂肪が多くて柔らかく、ずっとマシな味だった。
味付けをして焼いてもいいし、鍋にしても以前よりは美味しい。
猗窩座がそれを食べていると、ときどき猫が寄ってきて、自分も食べたいとねだったりする。
しかし猗窩座は、一切れも分けてやることなく、欲張って自分だけで全部を食べきった。
人魚を食べ、それ以外の時間では文章を書いた。
人魚についての内容だ。
杏寿郎との出来事も書いておこうとしたのだが、結局は止めて、杏寿郎に出会った日と杏寿郎と別れた日だけを書き止めておくことにした。
肉も残り僅かになった頃、猗窩座は、久しぶりに本土に上がった。
前田の家を訪ねると、出迎えた前田が、どっと泣き出し始める。
「猗窩座、いまになっておまえ……死んだかと思ったやろ。ずっと連絡もせんと、冷たいやっちゃな。ホンマ、どないしたんかと……」
「はは、死ぬわけないだろ、前田。人魚狩りしないといけないのに」
猗窩座の笑顔に、前田は安堵したようだった。
前田と猗窩座は、久しぶりに酒を並べて座る。
刺身を買ってくると言う前田を、猗窩座は、慌てて手を振って引き止めた。前田、久しぶりなんだから、牛ロース食わせてくれ。
「俺、ここを離れることにした」
「ホンマか? どこに行くんや」
「沖縄に行こうと」
「なんで沖縄になんか」
「あそこも人魚が多いだろ」
「まあな。人魚なんぞ、海あるところにはどこにでもおるけど、あそこも特に多いなァ。ここみたいに」
「だろ。もうここにはいられなくてな。沖縄にでも行って人魚を狩ろうかと」 「そうか……寂しゅうなるな」
前田は、名残惜しさと痛ましさが入り混じった表情で猗窩座を見ている。
どうしてここを去ろうとするのか、十分に察しがつくだけに、とても引き止められない様子だった。
「せやな。新しいとこ行って、新しい人生始めや」
「ああ」
そう答えた猗窩座は、小さな布袋を取り出して、前田の前に置く。
「なんや、これ」
「これ、契約しようとしてた家の家主に渡してくれ。あのとき、急に契約を破棄することになっただろ。なのに、契約金を返してくれた。どんなに言っても受け取ってもらえなくてな」
人魚の涙が十粒入った布袋を家主の分として渡し、猗窩座は、それよりずっと重い布袋を前田に差し出した。
「これは、前田の分」
前田が袋を開けてみると、一握りもの母の涙が出てくる。
「貰ってくれ、前田」
「お、おい……こないに貴重なもん、なんでわいにやるんや。しかも、何なんや、この量は。
いったいなにして採ったねん。こんなんくれたらあかんわ。おまえ、沖縄行くんやから金も要るやろ」
「本当に貰ってくれ。俺には要らない」
「礼儀知らずなこと言いなや。もうええわ、片づけや。こいつ、大人に金やろうとしよって。どこの礼儀や、それは」
「前田、もう人魚狩りは止めろ。これだったらまさこが大学卒業するまで十分だろ」
前田が、ぽかんと口を開けた。猗窩座は言葉を続ける。
「まさこもいるし、まさろうもいるし、おばさんもいるじゃないか。もうこれ以上、危ない仕事はするな」
「猗窩座」
「前田、前に言ってたろ。俺たちは業の深い人生だって。その業、俺が全部返済してやる。全部清算して、これからは肩の荷下ろして暮らせ」
猗窩座は、前田の手を取って、布袋を強く握らせた。
「これまで世話になったことを思えば、これでも全然足りない。だから受け取ってくれ」
結局、前田は泣き出してしまった。
「わいがおまえになにしたって言うねん。猗窩座、わいはな、おまえがホンマにまさこと結婚して、うちの婿になってくれたら思てたわ。おまえみたいに誠実でええヤツ、ほかにおらへんやろ。おまえは絶対幸せにならなあかんのに、せやのに……」
前田の涙は止まることを知らず、ついには猗窩座の肩を掴んで、わあわあと号泣する始末。
結局、前田の妻とまさこが走ってきて、猗窩座から前田を引き剥がした。母娘に引きずられて行きながらも、前田は、何度も「猗窩座、幸せになり。絶対幸せになるんやで」と繰り返した。
猗窩座は、笑いながら頷く。
「もう、お父さんったら、ホンマ恥ずかしいんやから。お兄さんの前でなんやねん、あれ」
まさこが、ぶつぶつ文句を言いながらリビングのドアを閉める。
猗窩座が連れてきた猫が、まさこの脚に擦りついて、みいみいと鳴き声を上げた。
せっかくまさこと遊んでいたところを邪魔されて、ご立腹らしい。
「ところで猗窩座お兄さん、この猫の名前、なんて言うん?」
「名前? 名前……まだない」
「ええッ? 名前もつけずに飼ってたの?」
「ああ……」
まさこが、猗窩座の隣に座って、膝の上に猫を抱き上げる。
猗窩座は、猫の頭を撫でた。
「まさこ、お願い一つ聞いてくれるか」
「なに?」
「こいつに名前をつけてくれ。あと……その猫、ここに預けて行くから、ちゃんと育ててほしい」
まさこは、しばらく猗窩座を見上げた後、ふてくされたような表情をしてみせる。
「嫌やわ。わたしと結婚もしてくれへんくせに」
「本当に俺と結婚するつもりだったのか?」
「冗談だと思ってたん?」
「杏寿郎の方がいいって言ってただろう」
「それは、ただ猗窩座お兄さんを嫉妬させよう思って……それに杏寿郎お兄さんは……」 まさこの声は、どんどん小さくなっていき、やがて涙が滲み始めた。
猗窩座は、まさこの頭をゆっくりと撫でてやる。
「なんで泣く。泣くな」
「猗窩座お兄さん、沖縄に行ったら連絡もせえへんつもりやろ」
「そんなことはない。ちゃんと連絡する。向こうはネットも全部あるしな」
「嘘や。せえへんつもりのくせに」
「するって。ときどき、こっちにも顔を出すし、まさこも沖縄に遊びに来い。そんなに遠くもない」
しかし、結局まさこまで大粒の涙を零し始めた。
しゃくり上げるまさこの肩を叩きながら、猗窩座は困ったように笑う。
前田家全員を泣かす羽目になったと。
その翌朝。
朝から豪勢な食事で猗窩座をもてなした三人は、ぼろぼろと泣き続けながら猗窩座を見送った。
「もう泣くな」
「出てくるもんはしゃあないやろ」
「また来る。別に今生の別れではない」
「せやけど、もう寂しゅうてたまらんわ」
「泣くな。また会える」
まさこに抱かれている猫までもが、猗窩座に向かって、ぴいぴいと泣いている。
「おまえはなんで泣くんだ? ろくに世話もしてやらなかったのに」
そう言いながらも、猗窩座は、もう一度まさこに頼んだ。
猫に名前をつけて、大事に飼ってやってくれと。
まさこは頷く。
「じゃあな」
最後に猫に挨拶して、猗窩座は船に乗り込んだ。
島に戻る。
家は静かだった。
猗窩座は、本当にひとりになってしまったのだと実感する。
――別に、元通りになっただけだ。
しかし、猗窩座は、自分に起きた変化を否定することはできなかった。いまの自分は、まったく元通りではないのだから。
もっと幸せに生きられたらよかった。
もしあのとき、家族旅行がこの島じゃなかったら。
もしあのとき、杏寿郎と出会わなかったら。
しかし、女王の言ったとおり、すべては仕方のないことで、どうしようもないことだった。
女王に会うたびに、彼女の言葉を否定していた猗窩座だが、実はわかっていたのだ。
仕方のない運命に振り回されてきたことを。
それは、猗窩座の家族も、杏寿郎も、女王も、みんな同じだった。
仕方のない運命に蹂躙される、どこまでも哀れな弱者である。
しかし、もしそれが仕方のない運命ではなく、自分で選択できることだったら。
猗窩座は、仮想の選択権を仮定して、これまでの過去を振り返った。
自分で取捨選択して掴み取る幸せを想像する。
しかし、結局のところ、杏寿郎と出会ったことだけは、決して変えないと思う。
その結果、いまのような悲劇が繰り返されたとしても……何度だって杏寿郎との出会いを選ぶはずだ。
杏寿郎の名前を想うだけで涙が溢れたが、それでも猗窩座は、いまの自分は幸せだと思っていた。
例え終わりが悲劇だったとしても、何度だって必ず杏寿郎に出会うという自分の意志が存在するからだ。
その意志だけが、これまで自分を追いやってきた運命に勝つ、たった一つの武器だった。
猗窩座は軽く笑う。
杏寿郎は、焔火の顔が思い出せなかったと泣いていた。
しかし猗窩座は、いまでも杏寿郎の顔をまざまざと思い出すことができる。わざわざ目を閉じたりしなくても、晴れやかに笑う彼の顔は、まるで目の前にいるかのように、はっきりと目に浮かんだ。
愛する俺の杏寿郎。
俺の杏寿郎……会いたい。 残りの肉は、あと二日分だった。
家の掃除と持ち物の整理などで、あっと言う間に二日が経つ。
綺麗に手入れした武器を庭の隅に立て掛け、火葬場の砂場も整えておいた。松林の中にあるアリエルの墓にも挨拶する。
花があればよかったのだが、あいにく冬なので花が咲いていない。
猗窩座は、リビングの壁に掛けていた二つの人魚の外皮を庭に持っていった。
火をつけると、すぐに焼き焦げて、ただ灰だけが残る。
猗窩座は、その前にしゃがみ込んだ。煙たい臭いが鼻先を掠める。
猗窩座は、その臭いを嗅ぎながら、両親と兄たち、そして杏寿郎の名前を呼んだ。
これまで頑張ってきたのだから、彼らに合わせる顔はできたと思う。
猗窩座は、風呂に入り、綺麗に髭を剃った後、新しい服に着替えた。
そして、最後に残った人魚の肉を咀嚼する。
浜辺で夕日を見ながら噛み締める肉は、無味乾燥な味だった。
義務的に咀嚼して、最後の一切れまで飲み込んだ後、猗窩座は立ち上がり、服についた砂を叩き落とす。
家に戻って手紙を書いた。主に前田宛である。
財産処理について簡単に書いた後、長い感謝の言葉を書き連ねた。
夜の海は暗かった。
朔なので月もない。
しかし、いまにも降ってきそうな星々が明るく輝いて、月が不在の夜を寂しくないように慰めていた。
猗窩座は、船に乗って、ゆっくりと夜の海に漕ぎ出す。
杏寿郎と一緒に星空を見上げた夜を想った。
あの瞬間が永遠のように感じられる。
女王が待っていた。
「久しぶりね」
「そうだな」
水面の上に姿を現した女王は、相変わらず漆黒の髪を背に流した優雅な姿である。
その白い顔には、喜びも悲しみもない。
どんなときでも変わらない彼女の存在に、なぜか猗窩座は奇妙な嬉しさを感じた。
「約束を果たしに来た」
「ええ、待っていたわ」
女王が船の近くに泳いでくる。
「あんたは俺からたくさんのものを奪っていった」
女王は、その言葉に暫し動きを止め、じっと猗窩座の顔を見上げた。
「だから……俺に同情しろ」
女王は、軽く頷いて、猗窩座に近づいた。
猗窩座は、デッキに片膝をつき、人魚と顔を見合わせる。
人魚の片腕が猗窩座の首に回り、もう片方が猗窩座の頬に触れた。
猗窩座もまた手を伸ばし、人魚の頬を撫でては髪を掻き上げる。
しばらくの間、そうして頬を撫でていた猗窩座が、柔らかく微笑んだ。
「会いたかった」
ざぶん――短い水音が響き、余韻もなく消える。
そして、海は静まり返った。 村田が前田の家に足を踏み入れた途端、何匹もの子猫たちが一斉に群がってきた。
足下の子猫を引き剥がすために、村田は玄関先で四苦八苦することになる。
「おい、おまえら、こっち来や。アカレ、なにしとんねん。子猫らがお客はんに迷惑かけとるやろ。母猫のくせにちゃんと躾んかい」
前田が、ちっちっと舌を鳴らして呼んだが、子猫たちは見知らぬ客に興味津々であり、日当たりのいい窓辺で横になっている母猫は動く気配もない。
「一、二、三、四……えらい多いな、五匹もおる。兄貴、猫の幼稚園でも構えるつもりでっか?」
「まったくやで。こまいやつらがちょこまかしよって、面倒くさくて叶わへんわ」
やっとのことで子猫たちを引き剥がした村田が、リビングのソファーに座る。
前田がコーヒーを淹れた。
「兄貴、最近はどう過ごしてはるんですか?」
「どうって、ずっと家におるわ。おまえの方こそ、仕事はどや?」
「まあ、ぼちぼちです。狩りやってた頃よりは大変ですけど、心は楽やから」
負傷を機に狩りを止めた村田は、妻と共に刺身屋を営んでいた。
「兄貴は暇やないんですか? 後藤さんが暇なら狩りにでも行こか言うてましたよ」
「暇なわけあるか。嫁はんと観光して回るだけでも精いっぱいやで。本も書いとるしな」
「本? 兄貴、本出しはるんですか?」
「せや、出すで」
村田がぷっと吹き出すと、前田が、なんや、わいが本出す言うたらおかしいか? と睨みつける。
村田は、慌てて頭を振った。
「なんの本ですか?」
「人魚の本や。わいの狩りの話とか人魚のこととか全部入れて書くつもりやねん。猗窩座が書いた分も入れてな」
「猗窩座? あいつ、本書いてたんですか?」
「猗窩座の遺品整理しとったときに見つけたんや。
ぎっしり書きよったノートが何冊もあってな。
上手く書いてあったで。それにわいが知ってること付け加えて、前田まさおと素山猗窩座の共同著書で出版することにしたわ。
あいつの名前、こないな形ででも残してやらな」
そう言う前田の声は、いつの間にか沈鬱なものになっている。
「ホンマ、可哀想なヤツや」
猗窩座の話になると、前田の涙腺が脆くなることを知っている村田は、すぐに話題を変えた。
またもや足下に群がり始める子猫を一匹、膝に乗せて撫でてやる。 えっまさか、これで終わりじゃないですよね?!続きますよね?!
杏寿郎助かりますよね?!
お願い助かって!! 「ホンマこまいなあ。子猫ってのは、全部可愛いもんですな」
「それ、全部まさこの猫やで。猗窩座が残していったもんでな、お兄さんが預けてくれた猫やからって、子供がぎょーさん生まれたんに、一匹も売らせないんや。
まあ、いつかわいが余所んちに売っちゃろう思てるがな」
「まさこは大丈夫ですか。猗窩座の葬式挙げるとき、あないに泣きよってからに」
「まさこはな、猗窩座が死んだって思ってへんのや。お兄さんは絶対どっかで生きとるってな」
二人は、暫し無言のままでコーヒーを啜った。
猗窩座を思い出してか、前田の目が見る見るうちに潤んでいく。
今日も兄貴の泣き顔見ることになりそうやな。
村田は、少し気が重くなった。
「あのとき、なんやおかしいわ思ったんや……挨拶するときの笑顔がそらもう寂しげでな。
あら沖縄に行く顔やないねん。それで何日か迷った後、島に行ったらな、姿は見えへんと、なんや手紙があんねん。
それ見つけたとき、どないに後悔したか……後で船乗って海に出たら、あいつの船が見つかったんや。
空っぽでな」
「やっぱり、あの人が死んでしもたから……」
「せやな。ノートにそいつの名前が書いてあったわ。
家族も全部失った後、せっかく気が合う友人ができたんに、それまで失ってしもて、もう耐えられへんかったんやろな。
平気そうな顔の下で、心が真っ黒に焦げついとったんに、なんで気づいてやれへんかったんか……」
「ほんで兄貴も狩りィ止めはったんで?」
「せや。猗窩座までああなって、もう狩りなんかでけへんくなったわ。人魚はもう懲り懲りやで」
前田が涙の滲んだ目元を拭う。
居たたまれなくなった村田は、猫とじゃれてみたりした。
そのとき、村田の携帯が鳴る。
電話を取って話を聞くうちに、村田の目が丸くなった。
電話を切った後、前田に向かって少し緊張した声で言う。
「兄貴、人魚が捕れたって……」
「人魚なんか毎日捕れとるやろ。今更なんや」
「それが、雄らしいんです」
「なんやて、雄?」
港の隅では、狩人たちが寄り集まって大騒ぎになっていた。
連絡を受けて駆けつけた前田に、後藤が大きく手招きする。 今日ちょいちょい休憩はさむやん
ダメやで?とっとと書き込まんと 「前田! 前田! はよぉ来い」
「おお、来たわ。ホンマに雄なんかいな」
「そらホンマに決まっとるやろ。こないな嘘ついてどないすんねん。ほれ、見ぃ。どうみても雄やろ」
ざわめく人間たちに囲まれて、まだ小さい人魚が網の中で身を捩っていた。
黒い尾の人魚は、まだ成体ではないらしい。
後藤が人魚を指さして、前田の注意を促す。
「な? 胸もあらへんし、あら男性器やろ」
「ホンマや、確かに雄やで……正真正銘の雄やないか」
呆然と呟く前田をうす桃色の睫毛に黄金色の鋭い目で睨みつける幼い人魚は、胸が平らで、生殖器の部分に尖った突起があった。
数十年間ひたすら狩りをしてきたものの、こんな姿の人魚は一度も見たことがない。
骨格はまだ幼かったが、その顔つきは紛れもなく少年のものである。
雄の人魚をじっと見ていた前田は嘆息した。
「終わりやな! 人魚狩りも、もうおしまいや!」
意味がわからない狩人たちが、怪訝そうな目で前田を見る。
「わからんのか。雄の人魚ができたんや、もう人間の男は要らへんやろ? そのうち全部、人間の手が届かへん場所に逃げてくわ」
「こいつだけの突然変異かも知れへんやろ。様子を見んと。雄でも種なしかも知れへんさかい」
「ちゃうな。これからは雄が生まれるんや。同族同士で番い始めるで」
「なんで言い切れんねん」
「わいの勘や」
これまでの経験では、人魚に関することで、前田の勘が外れたことはなかった。
後藤は、ひとまず頷いたものの、やはり納得がいかない様子である。
もし前田の言葉が正しければ、この雄の人魚は、狩人たちにとって、それほどありがたい存在ではない。
「どないする? 殺してまうか」
「なんで殺すんや。涙もろくに採れない幼体やで。さっさと逃がしてやり」
引退したものの、いまでもチームの隊長格である前田の言葉に、だれも異議を唱えられなかった。
釈然としない表情の後藤が網を解き始めると、幼い人魚は、それをじっと見つめていた。
網が完全に解けて活路が開いた瞬間、人魚は、電光石火のように身を投げて、海の中に飛び込む。
そして、あっと言う間に見えなくなった。
港から家までの道のりを、二人の男は、ゆっくりと歩いていった。
前田は、なにやら複雑そうな顔をしていた。
村田は、少し躊躇ったものの、先ほどからずっと気になっていたことを尋ねる。
「兄貴、さっきの人魚、なんで逃がしはったんですか」
「なんや、ダメか」
「いや、でも兄貴の言うとおりやったら、これから人魚は遠くに逃げることになりますやろ。そしたら狩りもでけへんし……」
「それが自然の摂理なら、そのとおりにすべきや。人間が邪魔してどないする」
村田は頷いた。しばらくの沈黙の後、前田が口を開く。
「おまえ、気づかへんかったか?」
「え?」
「さっきの人魚の顔や」
「顔がどうしはったんですか」
「猗窩座にそっくりやったやろ」
「……ああ! 確かに妙に見慣れた顔でしたわ! なんや見覚えあるな思てたら」
「やろ? あら百パーセント、猗窩座のやで」
「猗窩座を喰った人魚が雄を産んだっちゅうことでっか。こないなことってありはるんですな」
「あいつの意志やないか」
「意志……人魚が人間の元から去ることが猗窩座の望みやったんですか」
「さあなァ、それはわからへん……でもな、わいはこれが偶然とは思えへんのや。バカなこと言いなや言われそうで、後藤さんにはなんも言わへんかったけどな」
「俺も偶然には思えまへんわ」
「なんにせよ、なにかが変わってくやろ。
馬鹿馬鹿しいことやが、もしホンマに猗窩座の意志が働いとるんなら、あいつの思い通りになるやろて。
あいつは、ホンマに人魚を憎んどった。
その炎で命まで燃やし尽くすほどやったわ。あいつほど人魚を激しく憎んだ人間はおらへん。
この世のどこにもな」 黒い尾の雄は、無事に成長して雌と交接し、また別の雄を産んだ。
人魚同士での初めての生殖だった。
その間に生まれた雄も無事に成長し、ほかの人魚と交接して、また別の雄を産む。
雄は雄を産み、雄はまた別の雄を産んだ。
人魚同士の交接で産まれた人魚は、すべてが雄だった。
人魚たちがこの異常現象に気づいたのは、かなりの時間が経った後のことである。
すでに人魚たちは、人間のいる陸から遠ざかっており、自然に同族間の交接を行っていた。
雌の人魚たちは、陸に戻り、もう一度人間の男を拐ってくる。
しかし、一度雄と交接した人魚は、雄しか産めなくなっていた。
その胤が、同族のものであれ、人魚のものであれ。
次に、雄の人魚たちが、陸から人間の女を拐ってくる。
しかし、人間の女は、陸を離れた場所で、臨月まで生き延びることができなかった。
人間の女から人魚の子を産ませることは、人魚の力では不可能だったのである。
繁殖できる人魚の数は、どんどん減少していった。
そして、終いには、雄の人魚ばかりが残る。
そして、最後の雄が死んだ瞬間に、人魚は、この地上から姿を消した。
人魚の絶滅理由について、人々は、だれも明確な答えを挙げることができなかった。
汚染した地球環境の変化による突然変異では、などと、憶測に基づく根拠のない議論ばかりが交わされる。
そして、時間は流れ、人魚の存在を知る者より、知らない者の数の方が増えた。さらに年月が経つと、人々は人魚の存在を信じなくなった。
遥か昔に狩人たちが残した人魚の記録は、上手くできたフィクションとして、人々の娯楽になった。
その本を読んだ母親が、子供たちに人魚の伝説を語り聞かせる。
そうして人魚は、世間と人々の記憶から、虚像へと化したのである。
神秘的な黒い尾を持つ年老いた雌の人魚は、一際長い寿命を生きた。
自分の胤が種族繁殖の希望になったかと思いきや、呪いに転じるまでの長い時間、彼女はなにも言わずに沈黙を守っていた。
そして、生涯最後の日、彼女は、光が消えていく瞳で、遠い昔に出会い、呪わしい胤の父になった人間の男を思い出す。
そして、仕方のないことだと嗄れた声で呟き、やがて静かに目を閉じた。
完 荒らしさん身バレするかもしれんらしいな
せいぜい励むことだな >>586
長いけど面白いよ(まだ途中だけど)
次作も楽しみにしてます >>586
二人のハピエンにならないのは残念だったけど、これはこれでオリジナルの世界で読ませました
海でのキスシーンや二人だけで幸せを取り戻そうとする暮らし、切ない
完結する今日読めてよかった 渋に人魚姫?が出てくるあかれんストーリーがあると聞いてたけどこれは別?新作?このままスレ落ちとともに消えてしまうの惜しい
ぜひ渋にあげてください 前田と猗窩座でヤらせたらええんか?
俺がやってやろうか? 完結したらワラワラなんなん?
お前ら黙って読んでたんやん 別にここだけでやる分には良かっただろ
総受けにまで貼りに来たやつが氏ねや >>603
5ちゃんで読めるのええな
最近は渋ログインするのも面倒や >>606
重複カススレだから有効活用できて良かっただろwww >>608
まぁ楽よね
ただストーリーの順番ミスしてるからここもちと読みにくい
総受けにコピペしてたやつに正しい順番でコピペし直してほしい 長文婆さん、総受けスレにコピペし直してくれってよー 重複カススレ扱いしてる奴は荒らしだわ
男も女もどっちも不可侵で楽しんでる所に言うやつおらん いつからそんな話になったよ
いらんスレやからしりとりとかして消費してたんに
長文来たらいきなり発狂して
住民普通に女やったろ 保存した
漫画でもつまんなかったら10ページも読むとだるいのに、これだけ長文でも止まらず読めました
なんでこんな掃き溜めに落としたのかわからないけど >>624
誰も褒めてくれないから自分で言うしかない可哀想なやつなんやな 海のキスシーンは新海ばりの映像がイメージで見えたよ はふー >>622
ここしかなくない?
他の杏寿郎関連は正常に機能してるし総受けスレもうっさかったわ 本人じゃないというのは落とした本人しか分からんだろうけど面白かったで
ただ今度は最後まで書いてから一気に落として欲しい
乙 みんな読解力あるね
猗窩座が女王に会いたかったって言ったの最初なんで?って思っちゃった
杏寿郎が人魚見に来た理由思い出して理解できたら泣けたけど >>636
包容力強くてママみ炸裂してたのはエロかったで >>637
流し読みしたからなんで会いたかったのか全然分からん… 総受けスレで読みたい言うてるやん
次はあっちに書くといいで ドスケベなメス杏寿郎は宇煉に多いんだけど、でも宇相手だとどこかスポーツみたいなんだよね
猗窩座とは二人だけの純愛の中でメス墜ちする感じがこう…たまらんのよ 他人の家を土足で踏み荒らすような行為はでも良くないと思うんですよね けどここ、不要になって落ちるまで消費するためにしりとりしてた状態じゃん
空き地だからいいんじゃん >>645
そのしりとりで楽しんでた勢がいるやん?
完全なる空き地ではないやろ >>641
ええ…
人魚の顔は会いたい人の顔に見えるんや
最後猗窩座が見たのは杏寿郎の顔ってこと >>646
でも過疎ってたよ
やりたきゃ今から始めたらいい
まだ400弱レスできるんだから 重要なモブが前田まさおなんはなんでや?
文章は真面目なんに前田まさおと鬼舞辻無惨は意味わからんかったで >>645
それが荒らしていい理由にはならんで
お前は朝鮮人か? >>630
誰も読んでくれんから自分で自画自賛しとるな しりとりなんか真面目にやりたい20代30代がいるわけない
他人が注目集めるのが嫌ってだけでしょ
下品でつまらない尻取りより、夜の海のキスシーンがいいや
人魚の女王に会いたかったのは、ケリをつけたかったんじゃないの?
杏寿郎の顔に見えるのはすべての人魚でしょう? >>617
ここ女やったん!?ゲイ向けニーサン達だと思ってたが、ま? >>658
逆に聞くけどいい年して尻取りそんなにやりたいとしたら、おかしいよwww はーい 男のフリした女でーす
ギスギスしてるより平和にしりとりしてる方が楽しいやん >>659
しりとりおもんないなら来なければいいだけなのに
わざわざ何言ってんの? >>662
ここは杏寿郎のスケベ雑談(なんでもあり)=SSもありだから
そっちも字が読めなきゃスルーしたらいいだけ ケツ毛ボーボやもりもりウンこの話題出るからそっちかと思た
まあ性別なんてどちらでもええ驚いたが 今までスレの流れ無視ほぼ起きずに平和に来てたのに、
長文荒らしが来た途端しゃしゃり出て擁護してくるババアは何なの? 猗窩座が「会いたかった」は>>576ね
あぁこれはそうだね、杏寿郎の顔に見えたんだね
最後に疑似とはいえ杏寿郎に会えたのか >>656
いや最後は杏寿郎の顔に見えたんでしょ
でなきゃ柔らかく微笑むがおかしい
今までは精神力で幻覚は見なかったけど最後決壊したんだと思うけど >>671
670だけど、うん、これはそうだね
いつの間にか読解力おちてて恥ずいわ
でも原作設定でパロっても
性格やふるまいが二人らしくない二次もたくさんあるけど
これは全然違う世界なのになんだか二人らしい二次で私は良かったわ >>670
ここ泣くTT
>>675
なんかタイミング悪くてごめんね
この作品は猗窩座がかっこいいそして案外ウブでかわいい ふふふ完璧なデキね
土曜に落としてみたけど
総スカン >>670
なんでこんなド長文こんな掃き溜めに落としたの?
同人誌にして売れば好きな人に行き渡ってたろうに
長過ぎてほとんど誰も読んでないよ 煉獄キャラスレでは注意テンプレ作られてる煉獄アンチの義勇腐が煉獄受けスレにもここの長文コピペ連投荒らしやって暴れてる
マジキチすぎるな >>680
私はただの小説読み 小説大好き腐
ほんと渋に保存してほしいわ
私は自分でワードからPDF保存したわ 長文荒らしの手はいずれ疲れてやめるから放っとけ
埋められてもこっちは立てるだけ これきっついわ
兄さんも同じ事やったらこうなるで
101 名前:風吹けば名無し[sage] 投稿日:2021/04/25(日) 10:27:08.89 ID:MCPGBiFp0
>>41
ファンクラブにホモしかおらんくてファンクラブ閉じた俳優おったよな
106 名前:風吹けば名無し[] 投稿日:2021/04/25(日) 10:27:32.62 ID:V+UIh8Lg0
>>101
坂口憲二
135 名前:風吹けば名無し[sage] 投稿日:2021/04/25(日) 10:29:07.05 ID:MCPGBiFp0
>>106
そいつや
坂口憲二は女から見ても男前でモテるだろうし、GMPDでもホモでも無いのに可愛そうやね 最後杏寿郎の子の胎児人魚を食べたのや
杏寿郎を食べた人魚を食い尽くしたの
返す刀で自分の胤で人魚を滅ぼすの
猗窩座らしい激情エピソードだった
余韻にひたってるわ >>680
それは頭弱いからやろ
文章くらい読めるようになるとええな ハッテン銭湯では赤いタオルがホモの合図とか兄さんやばいな
164 名前:風吹けば名無し[] 投稿日:2021/04/25(日) 10:31:24.28 ID:55udt1gId
ワイも見た目こんな感じやからこの風潮勘弁してほしいわ
170 名前:風吹けば名無し[] 投稿日:2021/04/25(日) 10:31:47.79 ID:gZ1KQRTi0
>>164
わかる
ガチでホモ認定されかねんわ
188 名前:風吹けば名無し[] 投稿日:2021/04/25(日) 10:33:08.50 ID:wXpYvLML0
>>164
あと辺なホモルールな
近所の銭湯で赤いタオル使っとったらチンコ触られたわ 兄さん何も知らずにそこらの銭湯やサウナにふらふら入って
ホモの謎ルールに引っかかってしょっちゅう絡まれてそうや >>686
ここはR18は投下不可ですよね?
その場合はピンク難民になりますか? 現代兄さん
スーツでノースフェイスの四角いリュックだったら完全にNGやで >>696
ここはpinkだからR18オッケーだよ >>699
腕まくりの赤ネクタイとかホモルールに引っかかってそうや >>698
ここピンクなんですね
ありがとうございます
変な次スレできたようなので過疎るようでしたらお邪魔します >>702
どこかに寄生してねえで自分で立てたらいいんじゃね >>702
どうぞどうぞいくらでもお好きなだけ
長文投稿も歓迎です。人魚の話面白かったです 長文まんさん義勇の腐女子で荒らしやってるだけなのが笑える 荒らすと増えると言われてんのにまだ長文貼って荒らしとか
アホちゃうか ジャイアンリサイタルってつまりこんな感じなんやなぁ >>710
原作スレでよく叩かれてる冨岡腐BBAと同じ奴? いつものしりとりの人達の方がうまい
心より尊敬する! 来月はついにバースデーカード配布やん
どうしても脳裏に兄貴の全裸が思い浮かんでしまうで
全裸くるんやろか バースデーに全裸きたら前売り必須やないかパンクするで 全裸でうつ伏せで向こうの方へ頭を向け寝そべって
アンニュイな顔と尻をこちらに向けて欲しい 顔はてのひら煉獄さんみたいなのがええな
誘ってるやん >>734
あかちゃんみたくかあいいよぉ(;゚∀゚)=3ハァハァ >>734
こんなセックスなんて知らないみたいな顔してえっちなもん武装してんだからたまらん 元気にボリボリいくがいいか?
ソーセージだけ食わせて疲れてきた頃がベストかもしれん 食べ疲れることあるんか?あの大食兄さん
もう食べれない!ところまで限界食べさせてみたいが かまぼこ隊乗車させなければそこそこ行けたんちゃう? 周りの客がぽかんとしてたよなぁ良い意味で空気読まん兄さんやで >>749
最初はキツイと思ったが慣れて今ではクセになったな! 乗客200人分のザーメン飲むまで帰れない列車
胃袋でかい兄さん向けの任務や >>754
兄さんなら素早くさばいてくれるだろう体力おばけや 人魚投稿しました
ひっそりと晒したくてここに落としましたがSNSでこの話題しないでください
一部の人に楽しんでもらえたならと思っただけです
案外見てる人いるんですね
もう二度とやりません
余計なことしてごめんなさい >>759
お知らせして逆に不快にさせたら申し訳ないです 感動された方がいたみたいで、支部にあげてと呼びかけられてる?みたいなのを見かけたので 人魚話とても素敵でした >>760
いや私が悪いし勉強になりました
優しくしてくれてありがとうございます
楽しんでくれてありがとうございます >>761
もしまた気がむいたらひっそりと投稿していただけたら嬉しいです すごく素敵でした 清々しい程の自演
2ちゃん初期の頃にIDの意味わからず自演して赤っ恥かいたの思い出したw >>759
どこの住人かハッキリしたから次やったら覚えてろよ 純粋に疑問なんやが
なんでこんな掃き溜めに落としたりするん?
渋とかツイでやったらチヤホヤされるで >>759
ひっそり晒したい奴がこんなとこ落とすかよ
本当にそう思うならツイで鍵付けてやれカス
この自己顕示欲のかたまりが レス番飛んで見えねえわまたジャイマンリサイタルやってんのか
見たいのは兄さんのソロショーやで >>759
ここだけじゃなくどれだけ他の煉獄さん関連の腐スレに迷惑かけたか考えろ
pinkに二度とくんな 長文読めない奴はなんちゃらかんちゃら言うとらんかったか?
才能がある奴が、面白い奴が世の中勝ちとかふかしてたよな?
ひっそり晒したい気弱なキャラと一致しとらん 冨岡腐の荒らしに利用されるネタ提供してただけのバカ? 重複スレだから落としてよしも言ってたな初心者の無知バカとは思えん犯行 >>772
ジャイマン?
なにかのパロディかな?
続きヨロ 猗窩煉スレは汚したくないがこっちは構わねぇってか
根性腐ってんな
534 名前:やまなしおちなしいみななし [sage] :2021/06/25(金) 19:41:11.47 ID:???
>>532
ここで続けるのはアレすぎるのであっちでやります…
びっくりしてこっちで反応してごめんなさい
558 名前:やまなしおちなしいみななし [sage] :2021/06/25(金) 20:30:39.38 ID:???
>>534
もの凄く迷惑だったから二度とスケベスレに落とさないでね
581 名前:やまなしおちなしいみななし [sage] :2021/06/25(金) 21:30:52.26 ID:???
>>558
じゃあまたやります >>781
せっかく話終わってるのにわざわざ持ってくんなや
自演してんのお前だろ 長文書いて自分で褒めて他のスレにまで転載して
忘れられたらわざわざ蒸し返すレスして自演してそれをまた転載して
惨めな奴だなwwww うむ!脱糞の臭いはするだろう!
この話はこれでおしまいだな! 無さそうだな
排便中に便所開けられてもうむ!使用中だぞ!って笑顔で言いそう 見ている方が恥ずかしくなるのに!兄さんは恥じらわない 全裸で腕組んで大股開いてウンコしてるんやろな
ありありと目に浮かぶ クソしてる最中に戸を開けて便所紙を差し入れたらありがとう!と平気な顔で言うやろな 固ったいの出してる時はバイトリーダー絞めあげてる顔してるんやろな 兄さんを恥ずかしがらせた者に100万円をあげてくれ ええやん三日くらい代えてない褌クンカクンカしたいわ >>813
鬼に屁を嗅がせて感覚を鈍らせるんや
列車で芋とニンニクでも食ってれば負けなかったで 煉「失礼こかせていただくぞ!」
炭「さ…さすがです 煉獄さん…」 >>565のあと
前田は、久しぶりに顔を見せた猗窩座の姿を見て驚いた。
「なんや、猗窩座。どっか病気なんかいな。こないに痩せて、顔色も真っ黒やないか」
「前田、葬式の準備を頼む」
「は? 葬式って、だれの……」
「杏寿郎……だ。人魚が……」
「なんやて? お、おい……なんでそないなことに……どないしたら、どないしたらええねん……」
当惑したように同じ言葉を繰り返すばかりの前田の前で、猗窩座は静かに顔を伏せる。
死体のない葬式は、その日の晩、前田の家で静かに行われた。
「猗窩座、おまえ、杏寿郎の写真はあるかい。遺影立てなあかんのやけど」
「あ……写真か。どうしよう……写真がない。一枚もない」
猗窩座は、呆然と視線を彷徨わせる。その声色は、壊れた機械のように抑揚がなかった。
「写真一枚もないなんて……どうしよう、写真がない。写真が……」
うわ言のように繰り返す猗窩座に、前田は、大丈夫や、なくても構へん、と肩を叩く。
前田は、遺影の代わりに、杏寿郎の名前が刻まれた位牌を立てた。その前に座り込んだ猗窩座は、空っぽの瞳で猫にミルクを飲ませる。煙たい線香の匂いに、猫が小さくくしゃみをした。
>>562に続きます >>815
ふんどしええな
使用済みを譲って欲しい ぶらぶらすると気になるんやな
そういや褌ってちんポジ固定で気にせんでええな 兄さんなら稀血ならぬ稀屁かもしれんな
兄さんの屁に鬼が群がる 牛すき弁当をあれだけ食っていたら屁は分かるな?肉だぞ肉 あの爆風で屁を吹き飛ばされたか
2発目を食らわす屁が残ってなかったのが敗因や 逆にあのドーンに紛れてしれっと屁をこいた可能性はないんか? 排便は見られても恥ずかしくないのに屁は恥ずかしいんか?分からんのう >>830
うまく誤魔化せたって思ったやろなァ兄貴 この屁臭練り上げられている
柱だな?
(むぅ…うまく誤魔化せたと思ったのになぜ口にするのだ) 「俺と君では臭いの基準が違うようだ」とか
しれっと言い放つで 鬼の方が無臭じゃないか?
鬼になればその公害レベルの屁は出さずに済むのだぞ クソすることも屁をこくことも人間の美しさとか言うんやで 他の柱はすかしっ屁したり風下でこいたり工夫してるやろ 袋状になって中にクリームソースか何か仕込んでるのかと思ったら
名前だけ狙ってつけてる感しかないな あれコラボちゃうねん元々ある郷土料理名やてさノット兄さんの玉玉
紛らわしいな コラボすると金はらわなあかんから微妙にかすめてるが違うというやつや
わざとやってる臭いがプンプンするで なるほど匂わせか
まあサイゼは危機やし兄さんの名前パワーを借りても兄さんは全く怒らんやろ なんやサイゼ潰れそうなんか
メラミンピザ以降は行っとらんから知らんかったわ おうコロナで客を抑えられてからかなり危機
元から単価を安く設定しているからこのまま死ぬかもしれんな
最後は中国系に買われるだろう 都会はええな
イナカやからサイゼリヤとかないんや
兄さんのタマタマ食べたかった スパイシーチキンマックナゲットとも匂わせコラボやっとるし兄さんどんだけ股が緩いんや 兄さん匂わせコラボしとるのは過去不祥事起こしたとこばっかやんか 兄さんもっと本気汁で誘ってくれないと金は落とさんぞ >>868
マックの歯混入についてはおまけの陰謀話がついとったな
人肉云々とかきっしょい話や 歯は3回やらかして原因は分かりませんでしたはそらアカンわ
中小店なら即潰れてるでかいから流されただけで 人肉云々には更に話があって、エプ何とか島で強姦された挙げ句に
儀式殺人された子供の遺体をムニャムニャという話があるで
兄さんが変な筋に目をつけられて利用されそうやな
キリスト用語の煉獄とかついてるせいかも知れんけどな たぶん情報一致
ひき肉マシーンやから処理しやすい?なんつーてなキッショ 少年少女を散々変態行為でもてあそんだ後の後始末やからな
えぐい話や
そういう形で一般人に何も知らないまま喰わせるというのもある種の儀式やとかな
スケベ通り越してエログロの話やで 家畜に家畜食わせるのが好みなんやろ
すけべはハッピーに限るな 変態外人どもの考えはようわからんが、日本人のバーチャル生け贄の象徴として
兄さん使おうとか計画しとるんやろか
アメリカでもあれだけ興行収入あったからな
YMCAとかレインボーカラーとか三角形とか目の模様とか組み合わされたら要注意やで
きっしょいわ >>859
かわいいかよ
兄さんの玉2つ代わりに食べとくで こんなスレやから変態ばっかりかと思うたら、ニュースに詳しい社会派な人たちもおるんやな
不祥事のこととかなんも知らんわ >>880
うむ!君は騙されやすそうだから気を付けた方がいいな!! 兄さんは人間を疑う心が無さそうや
昏睡レイプには気をつけた方がええ 昏睡しても命の危機感じると首絞めてくるから基本猛者やで手順うまくやらんとな >>880
わらしも驚いた
気にせずマック食っとったで >>887
ちんちんやケツの穴を弄くるだけなら命の危険はないから
反応しない可能性あるで 弄くられてスケベな夢を堪能していたら起きないやろな うたた寝している間に夢精してしまうとは
よもやよもやだ 淫柱として不甲斐なし!! くっそエロい夢見せたならおそらく誰も起きなかったな
魘夢はDT臭いからあんなつまらん夢しか思いつかなかったんやろ みんなズボンに染みつくって寝こけて
車両が栗の花で充満やな >>898
それは言える
経験不足だから全身触手も使いこなせなかった ちゅーか犯されても気が付かんてどゆことなん?
アナルてそんな簡単なんか? 外国にも同じレベルのホモおったで
【ノルウェー】ネットで見つけた少年300人に性的暴行 男を訴追 [11/21]
http://egg.5ch.net/test/read.cgi/news5plus/1542785892/ >>904
>「男の犯行は酷いものでした。まず酒に睡眠薬を入れて男性を酩酊状態にさせ、男性の陰茎を咥えたり、
>自らの肛門に入れたり、その逆に相手の口や肛門に自らの陰茎を挿入した。
>そして、その様子を動画で撮影していたんです」(全国紙社会部記者)
全員のケツを掘った訳じゃなく、咥えるだけとか自分のケツに入れただけの場合は
ケツの痛みがないから被害者が気付かないケースもあるやろ >>906
そっかみんなが挿入されたわけじゃないのか うむ、やはりこれからはふんどしの時代だ!
【LGBTQIA+】男目線のセクシーなランジェリーは時代遅れ 米有名下着メーカーが改革 [かわる★]
http://asahi.5ch.net/test/read.cgi/newsplus/1625047804/ >>910
期待して画像漁ったが褌の写真なんてなかった 【東京】生徒にキスなど繰り返したとして区立中学校教諭(43)が懲戒免職
杏寿郎… 兄さんは逆に生徒に色々されとる方や
最初の頃はカンチョー被害に遭ってたやろな 兄さんは生徒からのじゃれつきが日常だからな騎馬戦ばっかりするからボディタッチが過剰に ドサクサ紛れにビーチクピンポンダッシュしてる奴おるやろ 触らない奴は偶然を装ってトイレに同時に入ってションベンしてる時に
横からちんちんを覗くとかな ホームルームの内容 人体の弱点に無闇に触る生徒は控えなさい 全校集会で他人の身体に触らないようにとか校長が言うんやろ
けど実際触られてるのは兄さんだけや 兄さん…
クラスだけやない学校全体で注意されるとかどないやねん 「おはようございまーす」とすれ違いざまにちんこ掴むとかやな 電車に乗れば痴漢にあい
出勤すれば同僚教師から尻をなでられ
廊下を歩けば生徒に抱きつかれ
歴史準備室って原作のどこで描写でてきたっけ?
そんなの杏寿郎をレイプするための部屋じゃんね
生徒にレイプされた話を同僚教師に相談したらその場でまたレイプされてしまう 今の時代ならyoutuberでもやればええ
下着試着動画でも上げればそれなりに再生数稼げるやろ
固定ファンがホモだらけかもしれへんけどな リアルストーカー被害で辞めたYouTuberいなかったっけか
兄さん何もできんやん 24時間警備員常駐のセキュリティガチガチのマンションにでも引っ越すしかないな 今はストレートの相手に堂々とホモ行為要求してもええと思っとる
勘違いホモが湧く社会やからな
案外まんさんだらけの場所なら安全かもしれん 兄さんならファンに家凸されてもニコニコ応対するし握手もしてくれるぞ 甥っ子が可哀想だと思うから可哀想なんだよ楽しいと思えば楽しいよとサイコパスみてぇねことを言っていた
煉獄さんも参考にしてくれ 兄さんは教師なんてやってられない説おもしろいじゃないか >>949
あんなおっぱい星人ミツリになびかなかったんだからゲイだろ 長文荒らしまーんがこっちが埋まってないうちから次スレ荒らしとるわ >>955
自分で長文書いといて相手にされなかったからってここにまで宣伝しにくるな糞が まーんはこうやってマッチポンプしてるんか?
956 名前:やまなしおちなしいみななし[sage] 投稿日:2021/07/04(日) 22:29:52.46 ID:???
>>955
自分で長文書いといて相手にされなかったからってここにまで宣伝しにくるな糞が マッパで大の字になって寝ていてちんこを蚊に刺されたりしてそうや もあをやっと引き取って来たけど邪心が祓われるね
守りたいこの兄さんのねんね顔 褌一丁で外にいたらこうなってしまった!と言って尻にはTバックの日焼け後 あの寝顔はまだあどけない少年のような顔と言っていいか? 寝返りもうたないで静かに寝とるんやろな
大の字で寝る時もあるくせに 【悲報】兄さんも包茎の可能性
一方で日本人の場合、ほぼ100%包茎です。
いわゆる”ミエ剥き”をしても、余っているのですぐに分かります。
このような場合、申し訳ないとは思いながらお店の指示でゴム着用をお願いすることになります。
https://newstoday-bd.com/life/3559 >>971
うそん
彼氏みんなほうけいいなかったけど >>970
かわゆ
毎日はあれだからたまに見れるレアで 兄さんTENGAとコラボしてほしい
本人が動画で使用方法を実践してくれよな 兄さんのケツま◯こを限りなく忠実に再現してるんやろ? だとすると思ったよりちっちゃいよね
慎ましい兄さんのアナル 排便のたびに己のぶっといウンコに内側から蹂躙され続けた結果ガバガバちゃうか ワンチャンあるとしたら10年後にあのRさんが!?つう類似キャラで勝手に出る 目隠し線とボイスチェンジャーで匿名ということにして出てくるんや 事件とかの匿名インタビュー風でも誰だかわかるやろな ちげえねぇあそこの酒親父か?煉獄さんか?くらいの違いしかない 他の漫画から類似キャラが出るのも許せん兄さんの絶妙なバランスはもう生まれない R・Kさん(20)
※プライバシーのために音声は変えてあります 『うむ、俺が被害に遭ったんだなと後で気付いた!』
『全く気付かなかった』
 ̄ ̄ ̄ ̄丶 ⊂ヽ∧_∧ ∧_∧ / ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄
僕もさ > ヽ( ´∀`) (・∀・∩)< 1001さん大好き
____/ Y つと ノ \_______
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