「あいつらはただの怪物だぞ。不思議な姿をしているが、ただの怪物だ」


 朝食の支度をしながら、男はそう言った。
一口食べただけで箸を下ろす杏寿郎に、男は、もっと食べるようにと勧める。
杏寿郎が頭を振ると、それ以上杏寿郎に構うことなく、黙々と自分の分を平らげていった。
 食卓に乗せられた焼き魚に吐き気が込み上げたが、男の話に興味が湧いた杏寿郎は、吐き気をぐっと堪えて、食卓に居座り続ける。

 杏寿郎は運がよかったんだ。
普通は全滅する。
そう言う男の言葉に、背筋が冷えた。そのくせ昨夜の話を詳しく尋ねることは止めない。
 気の毒だが、海に引きずり込まれた人は、全員が失踪として処理され、特に政府が捜索に乗り出すようなこともないらしい。
人魚関連の事件には、いっさい手を出さないのだと言う。

「杏寿郎もわかるだろ。昨日、ああなるのを見たんだから。政府も手が出せない。杏寿郎は、自分が生き残ったことだけで満足しろ」