杏寿郎を寝つかせて、そっと家を抜け出した猗窩座は、暗闇の中で静かに狩りの準備をした。
今日の狩りには、多くの武器などは必要ない。
猗窩座は、斧と分厚いベニヤ板、それにバケツを揃える。
最後に、昼間に殺した幼い人魚の死体を船に積んだ。
人魚の匂いを追って、通常の狩猟地より、さらに深い海の奥へと船を走らせる。
当たりをつけたところで船を止め、いつもとは違い、なにも待つことなく、すぐに行動を開始した。
今日は人魚の接近を待つ必要がない。
人魚たちは、いつものように船の周りを旋回して、機会を窺っているのだろう。
暗闇の中でも、無数の視線が感じられる。
幸いなことに、今夜は月も明るく、海中が明るかった。
観客が十分に揃った頃、猗窩座は、船に積んでいた人魚の死体をデッキの中央に引きずり出す。
分厚いベニヤ板の上に乗せた死体からは、すでに腐った魚の臭いが充満していた。
血抜き溝にバケツを置いた後、船室から斧を取ってくる。
そして、死体めがけて、斧を振り下ろした。
ドン――鈍い衝撃音と共に、人魚の片腕が跳ねる。
冷えた返り血が、猗窩座の顔に飛び散った。
しかし猗窩座は、気にすることもなく、切断した腕を海に放り投げた。
もう一度振り下ろされた斧に、今度は残りの腕が切り落とされる。
それも海に投げ捨てた。