「人魚を見てみたい」

常日頃からそう思い続けていた杏寿郎は、ある日、友人から人魚狩りに行かないかと誘われる。
人魚狩りの参加者がみな、高額な宝石『人魚の涙』が目当てである一方、ただ一人違う目的を持つ杏寿郎。
同行者たちと向かった人魚の群生地――人魚の棲む絶海の孤島で、杏寿郎は、ひとりの孤独な狩人と出会う。

人魚の涙は、非常に貴重な宝石で、高値で取引される。
死んだ化石の産物ではない、いまも生きている生物からのみ採取できる宝石なので、なかなか市場にも出回らない人魚の涙は、どんなに金を積んでも、たやすく手に入るものではなかった。

 人魚の涙を欲しがる富裕層は多い。
そして、その金にまみれた欲望を満たすべく、命懸けで人魚の涙を採取する人々もいた。
彼らは、自分たちだけが知っている人魚の群生地に赴き、狩猟した人魚から涙を手に入れ、一攫千金を手にするというが、それは、だれにでもできることではない。
人魚の狩猟は、本当に危険な、それこそ命懸けの行為として広く知られていたからだ。