「もうすぐ森は抜けるだろう。私はムクの塔もできれば見たいと思っていたが残念ながらそれは叶わなかった」

「ヤンマ!  ヤンマヤンマ……」

「はは。元気を出せと言っているのかな。なんだ、お腹が空いたのか。仕方のないやつめ。まあ、もう日も暮れることだ。今日はここで野宿にするか」

「ヤンマ」

「一匹いないな。もう一匹は何処へ行った?」

 その時、すぐ近くに立つ少し低めの木の樹冠から何かが飛び出した。「ヤンマ! ヤン……」
すると木陰に隠れてキノコ獲りをしていたネコ童の一匹が宙に舞って樹冠に引き込まれていった。
激しい鳴き声はそれから三度目でぱたりとやんだ。しばらく音もなく、キノコだけがはらりと落ちてきた。

「また一匹やられた。弱い生きものだから仕方がないが、これでは古城に着く前に全滅してしまう」

 呟くと、樹冠の中で声がした。

「誰です?」人間の声、しかもおそらく年若い男の声だった。

「私はミジンコだ。かつてこの騎鈴州の騎士だったものだ。そなたこそ何者だ?  何ゆえ、私の下僕を襲ったのだ?」

「ごめんなさい!」樹冠から、ひとりの若者が飛び下りてきた。見ると簡素な鎧をまとっていた。
「ぼくここで生活してるんです!  ここの暮らしつらいです。……食べ物少なくて」手には、先のネコ童が串刺されすでにかじられていた。

「かまわぬ。一匹くらい……早くそれを下げてくれ。名は?」

https://kakuyomu.jp/works/4852201425154926828/episodes/1177354054880725758

ツイッターで主人公のモラハラ気質が、と言及されているのを見て思い出したが
率直に言うと作品から透けて見える書き手の人間性が恐ろしいし
かなりついていけないところがあるので距離を置きがちになるというのはある