図書室の窓から差し込む午後の光が、埃の粒を金色に染めていた。
琴未は静かに本を閉じ、こちらを見上げた。
「……ねえ、こんなときでも、本って落ち着くね」
その声はかすかに震えていたけれど、笑顔は崩れていなかった。
彼女の隣に腰を下ろすと、ふわりと柔らかな香りがした。
緊張と不安が渦巻く校舎の中で、彼女だけがまるで別の時間を生きているようだった。
「私……怖いけど、でも……あなたがいてくれるなら、きっと大丈夫って思えるの」
その言葉に、胸の奥がじんと熱くなる。
守りたい、と思った。
この静かな強さを、この優しさを、絶対に壊させたくないと。