「じゃあ、今から新入生の受付準備がありますから、ミチシゲ先生はそちらを手伝ってください」
先輩教師に言われるがまま、サユミは最初の仕事をすることになった。やって来る新入生の名前と名簿を確認し、入学式で胸に着けるリボンを渡す仕事だ。
「これから私の教師生活が始まるんだ…」
サユミはリボンの入った大きなダンボール箱を運びながら、少しの不安と、大きな期待を胸に抱いていた。講師の立場だから、担任になれるわけでもなければ、
来年も雇ってもらえるかの保証もない。それでも、ここで頑張れば、またどこか別の学校に拾ってもらえるかもしれない…
いずれにせよ、サユミはこの学校に長くとどまろうという気はなかった。いや、とどまれないことを知っていた、と言うのが正しいか。
「じゃあ、ここで新入生に名前を訊いて、名簿のチェックをして、リボンを渡してください」
サユミは椅子に座って新入生を待った。部屋の外には沢山の新入生たちが待っている。サユミの前に最初の新入生が現れた。
「入学おめでとう。お名前は?」
「アユミ…イシダ、アユミです」
(つづく)