第2話『新入生』
「あ…靴下に、穴開いてる…」
イシダアユミは家を出る前からいきなりブルーな気分になった。せっかくの入学式なのに、手持ちの中から選んだ『一番高級そうな』靴下に穴が開いていたのである。
アユミは慌てて部屋に戻ると、靴下を物色した。しかし、出てくる靴下はどれもボロボロになったものばかりである。
物持ちがいいと言えば聞こえはいいが、言い換えれば貧乏臭いとも言える。
「えーと、確か…校則に…」
彼女は入学前にもらった校則を読み返した。『靴下の色は原則として白色とする』と確かに書かれている。
「どうしよう…靴下がない…」
初日からこんな事態に遭遇するとは思わなかった。仕方なく、アユミは穴の開いていない白靴下の中で、なるだけ『普通そうに見える』ものを選んで履くことにした。
『原則』なのだから、別に他の色でもいいのではないかと思うのだが、アユミはバカ正直…もとい、真面目に規則を解釈し、白い靴下を履き直した。
「じゃあ、行ってきます」
意気揚々と行くはずだった入学式なのに、いきなり出鼻を挫かれた格好になって、アユミの声のトーンは下がり気味になった。