第3話『一目惚れ』
「今年もいっぱい来るんじゃね…うちはどうしようかなぁ…」
少女は体育館の光景を見ながら、呟いていた。そんな彼女の制服は高校の新入生たちとは―形は似通っているが―色が違う。
高校の制服は菫色のブレザーだが、彼女が着ているブレザーはそれよりも少し赤みのかった紫色のブレザーであった。
それは、この学校の『中等部』…つまりは中学校の制服である。そう、彼女はこの学校の中等部に通う中学生であった。
「うちも受けた方がいいんかなぁ…でもあんまり高い学費はよう払わんよ…きっと」
彼女のしゃべりには特徴があった。それは広島弁が強いということである。中等部に入学してからしばらく経っているが、彼女は未だに広島弁が抜けずにいた。
「リホちゃーん!」
後ろから声がした。リホ、と呼ばれた少女が振り返ると、そこに一人の少女が立っていた。