「こっちに並んでー!」
体育館の前では、名簿をチェックしリボンを渡す係から、新入生を整列させる係に回されたサユミが汗をかきながら列を整理しているところであった。
「いきなりこれかよぉ…化粧が落ちそうなんだけど」
サユミは心の中で泣き言を言っていた。しかし、それを表には出せない。初日から心が折れていたのでは、教師など務まるはずもないからである。
汗をかきながら必死に列を並べている最中であった。ふとさゆみが視線を上げた先に、一人の少女が立っていた。
その少女と目が合った…ような気がした。
そして、その少女は微笑みを浮かべた…ような気がした。
そのまま少女は踵を返して、後ろにいた二人の少女と向こうへ歩いて行った。
「何、あの子!…可愛い…」
サユミは心を掴まれたような衝撃を受けていた。凛とした立ち姿と優しい微笑みがサユミの印象に強く刻まれた。