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第5話『ふたり』

時刻は昼過ぎになっていた。既に高等部も中等部も初日の行事はすべて終了し、生徒は全員下校している。
この街の駅前に一軒のクレープ屋がある。あまり大きな店ではない。十五人も入ればいっぱいになるぐらいのスケールだ。フクムラミズキは、この店がお気に入りであった。

私服で店にやってきたミズキは、いつものように店の一番右のテーブルに座る。ここはミズキの『指定席』だ。
別にそう宣言しているわけではないが、店に来た時に他の人が座っているのを見ると、ミズキはなぜか不機嫌になってしまう。

席につくとミズキはメニューも見ずに注文を決めた。モモとパインと生クリームが入ったクレープと、アイスティーを注文する。
この店のクレープで、ミズキが一番好きなものであった。