>>429
「もういいわ。しょうがないから、ミズキが許してあげる」
「ありがと、お嬢様。大好きだよ」
少年の言葉に、ミズキは頬を緩めた。冗談半分とはいえ、こんなことを言われて正直、悪い気はしない。

そこへ、ミズキの注文したクレープとアイスティーが運ばれてきた。アイスティーのグラスにシロップを少し入れながら、ミズキは少年に訊ねた。
「ねえ、これ食べたら、どこ行く?」
「ミズキは…どこ行きたいの?」
少年はあまり自分からは決めようとしない風だった。大抵はまずミズキに話を振って、ミズキの好きなところを選ばせる。ミズキは彼のそんなところが気に入っていた。
「今日は…二人きりになれるところに行きたい気分かも」
「二人きり?いいけど…どこだろ?」
少し視線を宙に浮かせて、少年はあれこれ思案しているようだった。ミズキは彼の次の言葉を待った。彼がミズキの方を見て口を開いた。