「…ホテル、とか?」
ミズキは飲んでいたアイスティーを噴き出しそうになった。考えた末の結論がそれか、と言いたくもなった。
「バカッ!…もう…」
言いたいことはあれこれあったのに、いざ顔を赤らめながら口を開くとそれだけしか言葉が出てこない。ミズキは恥ずかしさの方が先に立ってしまったのである。
「ごめん…つい…」
「ダメよ。そんなところに行ったってバレたら…怒られちゃうわ…」
「そうだよね…ごめんね。変なこと言って」
少年も下を向いてしまった。
「大丈夫…アカリちゃんの気持ちは…分かってるよ…今度、ね?ミズキの部屋か…アカリちゃんの部屋か…どっちでもいいから…」
ミズキがそう言うと、『アカリちゃん』と呼ばれた少年は、下を向いたまま小さく頷いた。
間の悪いことに、そのタイミングで彼の注文したクレープとアイスミルクが運ばれてきた。ミズキはこの会話が店員に聴かれていなかったか、少し不安になった。