「ね、これ早く食べて。もう出よ?その後は…アカリちゃんが行きたいところでいいから…ホテル以外、なら」
ミズキがそう言うと、アカリも頷いた。そして彼は、ハイペースでクレープを平らげ、アイスミルクを飲み干すのである。
店を出た二人はどちらからともなく手をつないで歩きだした。お代はミズキが全部払っていたが、アカリはそれに内心申し訳なさを感じていた。
「ちょっと手が汗かいてるね…どうかした?」
アカリの気持ちを掌の様子で察したか、ミズキがそんなことを言った。
「いや…何でもないよ」
アカリはそう言ったが、ミズキはそれがウソであることをすぐ見抜いてしまった。
「ふふっ…アカリちゃん、強がり言ってる…」
そう言われたアカリが恥ずかしそうに頭をかいた。ミズキは手を強く握り直した。そして、アカリの方に体を寄せた。
二人はそこで立ち止まって、しばらくの間、抱き合った。
ミズキはアカリの耳元で何事か囁いた。
アカリもミズキの耳元で何事か囁く。
二人だけの時間がそこにあった。