「例えば…記念演奏会を開催してはどうでしょうか」
ユカは淡々とそう答える。アイリの心中が穏やかではないことぐらい、彼女も分かっている。分かってはいるが、ここで引き下がりたくはない。
本来、自分こそが生徒会長にふさわしいと思っているのだから。『この学校を動かしているのは自分だ』と、ユカは思っていたいのである。
「今更そんなこと言うの?もう時間がないわ。記念式典は来月よ?人を呼ぶんだったらお金もかかるし…」
アイリの声が大きくなった。ユカは淡々と答弁を続ける。
「吹奏楽部に演奏してもらえばお金はかかりません。それに、来賓の集まる場で演奏できる機会があれば、吹奏楽部の部員も喜ぶはずです」
ユカの答弁が続く。
「記念に美術部に壁画を描いてもらうというのはどうでしょうか」
その言葉を聞いて、アイリは内心ほくそ笑んだ。美術部には自分の親友がいる。部の内情を知ることなど、彼女にはたやすいことだった。