「それは無理よ。美術部のスガヤさんも言ってたわ。『春のコンクールがあるから今は忙しい』って」
美術部のスガヤさん、というのはアイリの親友である美術部副部長のスガヤリサコのことである。リサコがこの手の"めんどくさいこと"を
嫌う性格であるということをアイリはよく知っていた。副部長が嫌がれば、当然部員たちも首を縦に振ることはあるまい。
これでユカにカウンターパンチを決められる…アイリはそう思っていた。ところが…
「そうでしょうか?美術部部長のワダさんが『もしチャンスがあるなら、是非やりたい』と言ってきているんですが…」
ユカはアイリのカウンターに対して、その上を行くカウンターアタックを仕掛けてきた。美術部の部長、ワダアヤカの名前を使ってきたのである。
アイリはこの展開までは予想できなかった。そもそも、アヤカとユカに交友関係があっただなんて、今になって初めて知ったことである。