>>472
かくして、ナカジマサキは最後の最後のチャンスを射止め、この会社に採用されることになった。もう一人採用されたのがキタハラサヤカである。
彼女はサキが採用されるよりも前に、採用されることが決まっていた。やはり、最終面接ではヤスダから同じ質問がぶつけられた。
「君は他人を蹴落としてでも、我が社に入社したいかね?」
サヤカは心の中で少し葛藤があったが、それでもヤスダの目をしっかりと見据えて答えた。
「はい。私は御社に入りたいです。そのためなら…少しぐらい…痛い思いをしてでも…」
ヤスダはサヤカの目を見た。まだまだあどけない高校生の顔立ちだが、その目は自分をしっかりと見据えている、凛とした、決然たる表情であった。
「この女は意志が固いようだな…仕事の何たるかをしっかり教え込めば…オレの手足になってくれそうだ」
年がら年中、様々な人の相手をする商売である。未熟な高校生の心の中や性格を読み取ることなど、ヤスダには造作もないことであった。
こうして、サヤカもまた、この会社に採用されたのである。