>>473
時計の針は、五時半を少し過ぎたところを指していた。ヤスダが二人の前に現れた。
「おう、お疲れさん。今日はもう二人とも帰っていいぞ。疲れたろう。早く帰ってゆっくり休め」
サキとサヤカの表情が少し緩んだ。
「お先に失礼します!」
二人が住む場所は、会社が独身寮代わりに借りてくれたアパートだった。サキとサヤカは隣同士の部屋で新生活を始めたばかりである。
慣れない仕事に初めての一人暮らし。まだ、二人にその生活を楽しむ余裕は持てないようだ。

サキとサヤカがいなくなり、ヤスダは再び自分の仕事に戻った。抱えている商談の進捗状況をまとめていると、隣に一人の女性社員が座った。