「部長、お疲れ様です。コーヒー入れときましたよ」
声の主はキッカワユウという女だった。彼女はこの会社に勤めて二年目になる社員だ。ヤスダの直属の部下という立場になる。
「おう、ありがとう。キッカも大分オレの好みが分かるようになったみたいだな」
ヤスダはコーヒーに砂糖とクリームを入れない主義の男であった。
キッカワユウ…キッカはそれを覚えられず何度も間違えては、その度にヤスダに呆れられたものだが、最近は何も言われなくてもブラックコーヒーをちゃんと出せるようになった。
「ねえ…あの二人、どうですか?やっていけそう?」
あの二人とは、サキとサヤカのことである。キッカはまだ二人と長い時間話す時間が持てていないので、二人がどんな人間かあまり知らないままであった。