>>478
「こんばんは」
いつもの夜のあいさつだった。エリナはこのメッセンジャーの中で『たな』と名乗っている。自分の名字と名前から一文字ずつ取って、それをハンドルネームにしたのである。

返信はすぐにやって来た。
「あれ?たな?どしたぁ?寝てるかと思った」
『M』が女性であること、エリナ…もとい、『たな』が男性であることはお互い知っている。知ってはいるが、二人はお互いの本名も知らないし、もちろん顔を合わせたこともない。
だから、お互いどんな人間であるかをほとんど知らない。もっとも、だからといって何か困ることがあるわけではないのだが…

はっきり言えば、『たな』が『M』にコンタクトを取る理由はただ一つ、自らの自慰行為の"おかず"を求めているからに過ぎない。
『M』とのエロティックな会話、そして…『たな』のリクエストで、時々送ってもらえる『M』の下着姿の写真―もちろん顔は明らかにされないが―によって、
自らの性的欲望を満たすこと。『たな』の目的はそれしかないのである。