第11話『夜明け』
夜が明けて、朝になった。
入学式と始業式の間に挟まれた一日。しかし、中には何もないこの日にも学校にやってくる生徒たちがいる。
例えば、高等部の野球部員たち。彼らは休みの日も学校に来て、グラウンドで練習に励んでいる。もっとも、練習したところで成績がついてくるというものでもないのだが…
「ほらー!もっとしっかり!」
ノックを受ける部員たちを、メガホン越しの声で激励するジャージ姿の少女がいた。名前をオカイチサトという。彼女は野球部のマネージャーであった。
夜が明けたか明けないかぐらいの時間に目を覚ましては人より早く家を出て、誰よりも先に部室にやって来る。
そして彼女が部室で最初にすることは、部室の掃除である。この日の朝もそうだった…