「ケンちゃん、今年もお仕事お疲れさま。もうお風呂も沸かしてるよ」
主婦の不在に我が物顔の美紀は普段から姉を随分と下に見ている。2人を観察していると子供の頃からそうだったのだろう。嫁は学業優秀であったろうし、美紀は決してそうではなかった。就職した仕事も随分と違う。
ただ一つ、嫁に比べて美紀は圧倒的に男好きのする容姿と気性の激しさを持っていた。何かにつけて援助を受ける立場にもかかわらず、美紀は常に姉に対してマウントを取っていたし、嫁もそれが当然といった様子だったのだ。
家族のような3人の夕食が済んだ。おれは覚悟を決めかねていた。美紀は簡単に堕ちるだろう。姪を絡めての娯しみは現実的ではないが、美紀だけでもおれにとっては至福の時間だ。
しかし一度道を踏み外せば確実におれの家庭は崩壊するだろう。美紀は一夜の関係を楽しむ相手ではないのだ。美紀には明確な目的がある。
おれは覚悟を決められず、2人を残して食卓を立った。
「風呂入ってくるよ」
美紀が姪に顔を向けた。
「姪ちゃん、ケンちゃんにお風呂入れてもらったら?」