強い風が吹き、凍えるように寒い夜。
 仕事が終わらず、気分転換に夜の拠点を散歩していると、ぼうっと立ち尽くしているシオンを見つけた。
「……あ、団長……。どうかなさいましたか? こんな時間に、こんな場所へ……」
 そっちこそどうしたのだろう、と聞き返す。こんなところにいたら、身体を冷やしてしまう。
「いいんです、冷え切ってしまうくらいで。今の私には、それが必要ですから……」
 その発言に、ますます放っておけなくなる。
 意地でも事情を聞き出さねば、という態度を見せると、シオンは悲しげに微笑んだ。
「実は、ワスレナグサと喧嘩をしてしまいまして……。己を省みていたのです。
冷えた風に当たれば、頭も冷静になるかと思いまして……」
 シオンはいつでも、友人であるワスレナグサを気にかけている。
 それがどうして喧嘩など……そう聞くと、彼女は首を横に振った。
「気にかけすぎてしまったことが、問題だったのかもしれません。
ワスレナグサがあまりにも辛そうだったから……過去のことを忘れてほしいと、彼女に言ってしまったんです。
彼女は、忘れたくないんです。大切な思い出を、そのぬくもりを。けれど……それらは悲しい出来事で閉ざされました。
楽しかった日々を思い出すたびに、辛い感情も呼び起こしてしまう」