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お菓子ど真ん中21
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0136実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/11/19(火) 15:25:05.310
「……アベ君、」
「なんだよ」
 相変わらず黒いジャケットと黒いスリムすぎるジーンズと、銀色のウォレッ
トチェーンだけをきらめかせている黒尽くめの男が、唇の片方だけ持ち上げて
目を細める。おれを、見る。
「月、取って」
「お前、相変わらずとんでもねえ我儘言うのな」
 いくらオレでも届くはずないだろう、と呆れた顔は、だけどすぐに笑顔に変
わる。うん、とオレは頷く。届かないでいて。本当は、そんなものになんか手
を届かせないで、ずっと、ここに、居て。
「なに、そんな顔して」
「そ、そんな、顔?」
「淋しそうな顔」
「して、ねえよ」
「自分の顔なんか見れてねえだろ、強がんな」
 伸ばされた腕はまっすぐおれに向かってくる。
 肩に触れたかと思えば、すぐに引き寄せられて。
 おれの顔はアベ君の胸に押し当てられる。冷たい風に当たっていたジャケッ
トの、ひんやりとした感触。よく知っている、アベ君の匂い。
 アベ君の。
 匂い、が。
 おれはそろそろと手を伸ばして、背の高い、相変わらず細くてこの人は飯食
ってんのかな、と心配になるような腰に抱きつく。アベ君の胸に鼻をこすりつ
けて、マーキングするみたいに頬も寄せて、おれは目を閉じた。
 アベ君の腕はおれを抱きしめてもまだ余るから、その余った分で頭を撫でて
くれる。冷たい風はもうどこにも入る隙間がない。なにもかも、邪魔をするも
のが入り込む余地はない。それくらい、ぴったりとくっついて。
0137実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/11/19(火) 20:42:19.650
「……おっさんふたりがなに抱き合ってんの」
 降ってくるアベ君の声は、抱きしめられている腕に邪魔をされているからク
リアには響かない。だけど胸が微かに動く。だから、おれは彼の胸に耳を当て
て、直接聞いている気になる。
「アベ君は、お、おっさんじゃ、ないよ」
「チバもな、お前なんかいつまでも可愛いまんまだな」
「かっ! 可愛くなんかっ、」
「可愛い可愛い、そういうすぐにムキになるところとか、否定するところとか」
「可愛くっ、」
「可愛い」
 隙間なく抱きしめられていたのに、腕に更なる力を込められておれはもっと
もっとアベ君の胸に押し付けられる。むぐぐ、と声が出て、そして笑った。ア
ベ君の胸で溶けた顔の筋肉が、ゆるんで自然と微笑んでしまう。
 微笑んでしまう、のに。
 どこかまだ、淋しいのはどうしてだろう。
 溶けて混ざり合えないもどかしさが。
 多分、そんなものが。
「聴こえてる」
「……うん?」
「チバの、歌う声」
「うそ、」
「届いてる、お前の声。すぐ分かるし」
0138実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/11/19(火) 21:12:03.830
 オレのギターを捧げる声。
 アベ君がそう言った気がした。気のせいでも、おれはそれが嬉しくて、尻尾
振る犬みたいにアベ君アベ君って思った。 
「アベ君、」
「なんだよ」
「……う、」
「なんだよ、う、って」
 キスしたい。
 キスしたい、って。
 言えなくて。
抱きしめられたままもそもそと動くと、アベ君がくすぐったがって離れよう
とする。それが嫌で、ぎゅっと相手の上着を掴んだ。離れないで、なんて、女々
しいことを口に出しそうになる、離れないで、ここにいて、ずっとくっついて
いて、どこにも行かないで。
 どこにも、行かないで。
「……泣きそうな顔して」
 額に唇は落とされた。
 それから頭を抱えるようにして抱きしめ直されて、もう一度離れて、少しだ
け屈んだアベ君が顔を寄せてきた。
 触れる唇が、冷たい。
 でも、そこに確実にある感触。
 忍び込んできた舌先の熱。
0139実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/11/20(水) 08:59:33.470
 おれは目を閉じて、アベ君の服を掴んだままでいる。漏れている息は白いだ
ろうか。白いだろう。だけどもうどこも寒くない。それはきっと、心の奥の方
から、じんわりとあたたかいから。

 声が、もっと。
 冷たい空気の中で吐く息のように、白く目に見えるものならいいのに。
 そうしたら、相手にきちんと届いているのかが、もっと分かりやすいのに。
 この声が届いていると。
 でも、きっとそれが分かってしまったのなら、恥ずかしくて愛の言葉なんて
叫べないのかもしれない。
 届かなくてもいい、むしろ届かないで欲しい、でも気付いて欲しいと、こっ
そり相手の背中に向かって小さくつぶやく、そういう言葉だってあるはずで。
 けれどそれでもし、相手が振り返ってくれたのなら。
 気付いてくれたのなら。
 それは、きっと。
 きっと。

「……ほら、心配してんだからキュウ達んとこ戻るぞ」
 最終電車の時間が決まっているように、離れなきゃならないときは確実にや
ってくる。でもおれは首を横に振って、やだ、とだけ返す。
「やだ、って言うな、おいこら」
「アベ君と、いる」
「風邪引かれたらこっちが困るんだって」
「な、なんで、」
「お前の声が好きなの、知ってんだろ?」
「誰、が、」
「お前ね。全国のファンの皆さんが、とかって今ここでオレが言うと思ってん
のか?」
 思ってない、と言ったらアベ君がまたおれの髪を撫でた。
 ごしごしとアベ君の胸に顔をこすりつけて、こすりつけて、まだこすりつけ
て、頬が摩擦でぼんやりとするまでそうして、おれはやっと顔を上げた。
 青い大きな月が光をたっぷりとこぼしている、夜は群青色をしている。
0140実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/11/20(水) 09:26:22.670
「赤くなってんぞ、顔」
 頬を撫でてもらって。
 ゆっくりとまばたきをしてから、おれは視線を追って目を合わせる。
「……お前、可愛がってもらってんな」
「……うん、」
「オレもお前が可愛いよ」
「じゃ、じゃあ、」
 ずっとそばにいて。
 喉の奥で詰まる言葉を、どうにかして表に出したいともがくけれどそれは声
にならない。
「会いにくるから」
「……本当、に?」
「その場しのぎの嘘なんか言ったって、お前どうせ見破って泣くだろ」
「な、泣かな、」
 もういい年して、泣かない。言い切れなかったのは、アベ君が言った通りき
っと泣くからだ。鼻がつままれて、お前の鼻ってつまみやすいよな、と感心し
たように言われる。
「持つ、とこじゃ、ねえよっ」
「ははははは、よしよし、さ、そこまで手、つないでやるから」
 寒いんだから本当に風邪引くなよ。
 言われて額にキスされて、見上げるとやさしい光の目がおれを見ていた。今
夜の月と同じ輝き。静かで。やわらかくて。そして、青い。
 そっと目を細めて、アベ君が顔を近付ける。
 おれは黙って、でもほんの少しだけ背伸びをして、それを待つ。待つ、つも
りだったけど、我慢なんてできなくて、結局腕を伸ばした。抱きついて、滅茶
苦茶に力を入れて、抱きしめて、歯がぶつかる勢いでぐちゃぐちゃにキスをし
た、嵐みたいなくちづけを。魂を交換するような、キスを。
 今ここで混ざり合えないなら世界はなんて淋しい塊なんだろうと思った、好
きだと途切れる声で、息で、何度も繰り返した、アベ君はおれを抱く腕に力を
込めて、知ってる、分かってる、オレも好きだ、とそのたびに返してくれた。
 自分が泣いているのかそうでないのか分からないまま、おれはアベ君と唇を
離して手を引かれて、屋上から階下へ繋がる階段のところまで連れて行かれた。
 やだ、って最後にもう一度言ったら、つないだ手を強く強く握られた。
0141実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/11/20(水) 14:48:59.950
 アベ君の言葉はなかったけど、おれはそれで、また会えるんだと強く強く思
った。それは強がりではなく、本当の気持ちで。
「――わっ、チバ! なに、さすがに寒くなった?」
 すりガラスの小さな窓の向こうに人影が、と思ったら、重たい鉄の扉が開か
れて、ハンチング帽をかぶったキュウがひょこりと顔を出した。おれは驚いて
アベ君とつないでいた手を離そうとして、その感触がなくなっているのに気付
く。
「冷えたんでしょ、まだあっち盛り上がってるから、寒いとこいて酔い覚めた
んじゃん?」
 うん、と返事をしながら、おれは振り返る。錆びた鉄柵の向こうの、ネオン
の星を従えた青く大きな月。確かに握り締めていたはずの大きな手。いつ。い
つ、指先はほどけたのか。
 頭を抱えたくなる、泣きそうになる、でもその前にキュウが口を開いた。
「あれチバ、マフラーなんかしてた?」
「えっ、」
 首元に触れてみれば、そこにやわらかな感触。
 慌てて引き上げて、鼻を覆えば。そこに残る、よく知った愛しい匂い。赤い
パッケージのタバコと、アルコールと、そして懐かしい肌の。
 もらった、と小さな小さな声で返すと、聞きそびれたらしいキュウが聞き直
してくる。
「……なんでも、ない」
「なんだよ、もう。……そんなん持ってたっけ、でもなんかどっかで見た気も、」
「よく、あ、あるやつ、なんだろ、」
 ジーンズのポケットに手を突っ込んで、戻る、とだけ言うとキュウがほっと
したような顔を見せた。心配かけんな、と笑ったようなアベ君の声が耳奥で響
く。
0142実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/11/20(水) 15:26:22.810
 もう一度だけ振り返って見た月は、なんだかさっきまでよりずっと近くにあ
る気がした。
 ふと思って、ポケットから右手だけ出して自分の鼻先に触れてみる。冷たく
冷え切っていると思っていたそこは、さっきまでアベ君がつまんでいたせいか
思っていたよりも体温が残っていた。それでおれは少しだけ笑って、またね、
と唇だけでなぞって、キュウの小さな背中をそのまま追って行った。
 またね。
 またね。
 きっと、会いにきて、またね。世界で今でも一番、愛してる人。
 また、ね。
―――――――――――――――――――――――――――――――
長々とすみませんでした、お粗末さまでした。
0156実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/04(水) 23:53:23.580
ツアー中でもおかまいなしにストコの夢の中でお菓子まくるアベ

寝ながら喘いじゃうストコ



チバさん…まさか1人で…∬;´ー`∬←隣室
0159実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/07(土) 10:42:31.820
>>157さらにそんなハルチバを隣室で聞いてフジケンが悶々する流れなのか参戦するのかどっちなんですか

ストコはフジフジにすごく懐いてそうだなぁ可愛い
ハルキはストコからちょっかい出してアハハウフフだろうなぁ和む
0161実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/07(土) 22:10:41.090
そこは見せつけるためにあえてドアを少し開けたままコトにおよぶハルキ➡︎目撃しちゃうフジフジ➡︎翌日平然としてるフジフジに悶々とするストコ・・・だと禿げ萌え
0163実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/08(日) 02:20:37.180
新曲の中ジャケって日食のデザインなんだね…
真っ黒な満月てそういうことなのかな
ますますアベくんのこと思わずにはいられない曲になっちゃったんですけどスットコさん
0170実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/08(日) 17:05:19.820
アベの淫夢見てたら突然ハルキが壁破ってきてストコ大混乱
「ひとりでなにしてたんですか」
「な、なにもしてねえよ」
で襲われるストコ

だめだ、壁を破ってきたらどうにもギャグにしかならんw
0177実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/09(月) 19:20:24.330
∬`ー´∬ちばさん!! ドゴォッ  ミ`<_´;彡 うおおっ!?!?!?!?

\川´_J`川ノ ちばくーん! ドカァンッ ミ`<_´彡 何?

(#・ω・`)
0178実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/09(月) 21:24:31.35i
ミセル時代にホテルのバスタブで味噌汁作ったり、ベット立て掛けたり、お店破壊したりしてるから、意外と壁の一枚や二枚なんてことなかったりしてねw
0179実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/10(火) 09:47:00.370
だって、ミッシェル時代は悪いこと教えてくれる
広島ツインタワーの鬼い様達がいましたもの。
・・・鬼い様・・・? 限定されてしまったw
0183実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/11(水) 12:55:03.34O
ハルキにめちゃくちゃにされて泣く(鳴く?)ストコさんを、また夢の中で鬼い様が慰める(鳴かす?)んですね、分かります
0184実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/11(水) 15:33:27.80i
183とはいい酒が飲めそうだ

夢でも現でも鳴かされて色気ムンムンなストコがあのエロエロなレッドアイパフォーマンスでフジケンを誘惑するとなお良い
0185実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/11(水) 20:31:57.850
184様とは涙目で悶えるストコさんをつまみに酒を飲みたいものです

ああもう、エロすぎなレッドアイパフォ! しらっとした顔のフジケンも
思わず挑発されて誘惑されて、「そ、そんなつもりじゃ、つか、身体、
持たねえ・・・」ってヤられちゃうストコさん、萌え
あ、するとその声を聞きつけてまたハルキが・・・
0187実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/12(木) 00:48:46.220
>>185
それたまらん

イヤイヤしながらもフジケンの広島弁にアベを重ねて乱れちゃったり。
フジケンも実は分かっててわざと・・・

ハルキ嫉妬の嵐
無限ループですなw
0189実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/12(木) 11:54:50.970
すごくイイ。すごくイイんだが、やっぱり壁を突き破ってくるとギャグにしかならん…


……い、いや…それでもイイ……ハァハァ
0197実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/12(木) 17:43:43.46i
アベくんに開発されまくってもはや一人じゃ満足できない・・・でも心はアベくんだけのモノ、な一途ビッチストコもやぶさかではない。むしろ大好物。
0202実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/12(木) 20:24:42.730
 違う。
 あの上機嫌な猫の目を持つ長身のあの人は、もっと、違う触れ方をした。
 指の腹で、焦らすように。
 気持ちいいところをわざと、外すように。
 そして焦れて焦れて喘ぎの形に口を開くおれに、唇を落とした。
 触れて。
 離れて。
 また触れて、そして舌を深く、差し込んで。
 明け方近くに黒いシルエットの、長い指を持つ男の夢を見た。
 思わず喘いだおれの、あまりにもの声を心配して駆けつけてくれた
ギタリストとベーシストが、なぜか今、おれの身体を撫で回している。
 でも。
 違う。
 触れ方が。
(アベ、君……)
 違う。
 もどかしさだけが、背中を這い上がっていく。

 みたいな感じですか?
0205202続き2013/12/13(金) 09:29:09.860
ハルキもケンジ君も書いたことないんで、変だったらごめんなさい。
ただのアベ好きで本当に申し訳ない…ですが、続き書かせていただきます。
―――――――――――――――――――――――――――――――――
 明け方の夢は生々しくて、触れられた指の痕、その感触がまだ残っているよ
うだった。何度もイかされて達した、長い指で、薄い唇で、熱い口内で。放っ
ても放っても足りなかった、もっと混ざり合うために空っぽになりたかったか
ら。注ぎ込まれて満たされたかった、抱きしめられて腕の中で形を変えたかっ
た、どうしようもなく溶けてひとつになりたかった。
 多分おれは、夢の中で泣いていたんだと思う。
 噛み付くようなくちづけを交わして、痛いくらいに舌を絡めて。
 痛みだけが真実だと知っていた、だから噛んで欲しいと懇願した。
 肌の、どこでも。
 身体の、どこでも。
 余すとこなく痛みを残して欲しいと、それしか信じられるものはないのだと。
 消えない傷が欲しかった。
 視界に入るたび、抱かれたのだと確信できる傷を。
 愛されたのだと、錯覚できる痕を。
 夢だと知っていた、分かっていた、だってあの男は、おれの胸に今でも住み
着いて離れることのけしてないあの男は、夢の中にしか出てきてくれない。
 何度も、叫んだ。
 喉が千切れるくらいに。
 叫んで、叫んで、夢の殻が割れてしまうくらいに叫んだ、もっと、と。
 溶けて混ざり合いたい、深く沈むように、もっと、もっと、と。
0206202続き2013/12/13(金) 14:59:54.220
 その声は、まだ群青色の明け方に思ったより響いてしまっていたらしい。ホ
テルのドアを乱暴に叩かれて、チバさん、チバ君、と呼びかけられる声で不意
に覚醒した。
 背中に熱い汗をびっしょりとかいていて、なのにそれは空気に触れてすぐに
冷えた。身震いするくらいに。
 びしょ濡れのまま、まだ半分夢の中にいる足取りでドアを開けると、左右の
部屋にいるはずのケンジ君とハルキがいて。なに、と聞けば、こっちのセリフ
です、とハルキにまず怖い顔をされた。
「なに叫んでんですか、なにがあったんですか!」
「な、なにっ、て……」
 アベ君が。
 夢の、中で。
 口ごもるおれの目の前に、腕が伸びる。思わずびくついて目を閉じかけると、
ケンジ君が指先で濡れて額に張り付いていたらしい前髪をそっと払った。
 あ、と。
 驚くほど甘やかな声が出てしまって、自分が一番動揺したと思う、でもびっ
くりしたように目を丸くしたのはケンジ君もハルキも同じだった。ただ、ハル
キの方が細い目をますます細くして、唇の端で笑って。
「いやらしい夢でも、見たんですか」
「なっ……、」
「なんだ」
 よく見れば、とケンジ君の指が離れた代わりに、ハルキの白い手が伸びた。
 頬に触れてくる。
 おれは少し逃げるように顔を逸らそうとしたのに。
「顔、赤いですよ」
「あか、く、なんて、」
0207202続き2013/12/13(金) 21:53:38.020
「チバさん」
 低い声でやわらかに呼ばれる。びくんと身体が跳ねてしまったのは、夢の中
で似たような呼び方をされていたからかもしれない。
 ゆっくりとまばたきをして、恐る恐る上目使いになりながら相手を見て。
「シャツ、汗で濡れてんでしょう?」
 着替えないと。
 ハルキが当たり前のようにおれの肩を押して、部屋の中へと入る。ケンジ君
が戸惑ったような顔をしながらも、チバ君、と小さな声でおれの名前を口にし
た。
 あの細く静かな男には足りない身長の、けれど時折どこか同じ言葉が混じる
彼に、あんな夢を見た後のおれが影を重ねないままでいられるわけがなくて。

 脱がされたシャツはどこに放られたのか分からない。
 ベッドサイドの、淡いオレンジ色をしたライトだけが点けられていた。厚い
灰色のカーテンは昨夜しっかりと閉めなかったらしい、隙間からまだ群青色の、
けれど少しずつ白っぽく変化しつつある朝が空気を染めているのが見える。
 ハルキのやわらかな髪がおれの顔をくすぐる。
 若い肌の匂いがする。
 二の腕を掴まれて、引き寄せられるようにして唇は重ねられてた。ケンジ君
はまだ戸惑った色のオーラを全身から発しながらも、ベッドのふちに腰掛けて
いる。
0209202続き2013/12/13(金) 22:09:46.860
 呼吸のためにわずかな隙間をあけた唇の、隙を狙ってハルキの舌はもぐり込
んできた。静かに探られて、頬の内側を舐められる。舌を絡められて、甘い声
を引き出される。
「ん、う……、」
「いやらしくて淋しい夢だったんですか」
「な、に……、」
「だってチバさん、淋しいときのが色っぽい顔するんですもん」
 罪な顔ですよ。ハルキが一度目を伏せて、次のまばたきで視線を合わせてく
る。前髪で隠されている細い目が、強い光を宿しておれを射抜く。静かに自分
のシャツを脱ぎ捨てて、胸を合わせるようにして抱きしめられた。汗で冷えて
いたおれの身体に、体温はじんわりと移る。
 でも。
 違う。
 おれの肌が馴染んでいる体温とは違う温度。
 拒否するわけではない、でも。でも、覚える違和感。それは頭の片隅に引っ
掛かって、ここにいない人物の存在をむしろ濃く感じてしまう。
 首に回された腕。
 肩口に落とされた唇。
「淋しい顔、してんですもん……」
 くぐもった声を皮膚で聞く。
 うん、とおれは声に出さないまま頷く代わりに目を閉じる。
 不意に後ろから違う手が伸びて、おれの頭をくしゃりと撫でた。ケンジ君だ
と分かっていたのに、違う名前を呼びそうになった。一瞬。だから、慌ててハ
ルキの首元に唇を押し当てた。声が漏れてしまわないように。
0210202続き2013/12/13(金) 22:23:06.580
「……ハルキ、もうやめとけ」
 ケンジ君の声がする。髪をかき混ぜる手は伸びたまま。触れられたまま。
 ハルキは答えもせず、おれの背中に腕を回してそっとてのひらで撫でた。
 アベ君なら。
 呼吸が止まるくらいに強く抱きしめるだろう。ぎゅうぎゅうと、おれが息も
絶え絶えに離して欲しいと懇願してもまだ力を込めて。そしてある瞬間ふと力
を抜く。くつくつと喉の奥で笑いながら。あの細い身体のどこに、こんなにも
の力があるんだろうと思わせられるような強さで抱いておいて、本当に不意に、
突き放すみたいに手を離すから。
 おれはいきなり不安になって、あんなに離して欲しいと苦しがっていた腕の
中へ自分の身体を押し込んで、首にかじりつくようにして抱きついてしまう。
 そんな、やり方で。
 アベ君は、いつだっておれを簡単に手に入れた。
 ハルキとはまったく違う体温で。
 肌の匂いで。
 手の、感触で。
 ハルキの手はやさしい。強引な顔をして部屋に押し入ってきたって、そんな
のは少しも強引なうちに入らない。ケンジ君はもっとやさしい。耳馴染みのあ
るイントネーションが時折混じる。ケンジ君の言葉に、おれは時折違う人を見
る。
 本当は。
 いけないことなのだと、分かっていても。
0214202続き2013/12/14(土) 17:59:28.460
「ふたり、まとめて、くれば?」
 おれは喉の奥で笑ってみる。どうせどんな手がおれを抱こうと、触れようと、
撫でようと、アベ君の感触は消えない。むしろ生々しく思い出されて肌に残る
だけで。違う、違うと首を横に振りながら、猫みたいに腰を振る。あの男じゃ
ないと、そう思いながらも他の男の熱い塊だって結局飲み込む。
「ハルキ、」
 おれを滅茶苦茶に、して?
 疑問形の跳ね上がる語尾、でもそれは挑発。
 跳ねるようにして一度離れたハルキが、おれの唇を奪いに顔を寄せる。髪を
撫でている手に、自分の手を重ねて、おれはケンジ君の手首を探って掴む。引
いて。きてよ、とハルキの唇を受け止める一瞬の隙間でささやく。
「チバ君……、」
 ケンジ君の声が、耳元に落ちる。ぎしり、とベッドが軋む音が。シーツの上
に手をついて、こちらに近付いたのだと分からせる。空気が揺れる。
「なにを、」
 忘れたいことがあるの、と小さく聞かれて、おれはハルキから下唇を吸われ
てうっとりと閉じていたまぶたを押し上げる。後ろから伸びた手が、おれの目
を覆う。耳の裏にくちづけられて。そのまま、舐められる、ぱくりと齧られる。
「あっ……、」
 ハルキの指が首筋を撫でおろして、鎖骨を撫でる。てのひらで輪郭を確かめ
るように触れられて。
「忘れたいことが、あるんですか」
 ハルキにまで聞かれた。ねえよ、とおれは深く考えることもなく即答する。
 ない。
 忘れたいことなんて、なにも。
0215202続き2013/12/14(土) 21:00:28.260
 視界は覆われて暗い。手の大きさは、でも、少し。違う。
 ああ、違うことだらけだ。
 違うものを並べて違う違うと比べて、そしてますますあの男を自分に刻みつ
けて。
 きっと死ぬまでおれはあいつのものなんだろう。
 あいつの、もの、なんだろう。

 胸をすべる指先が使い道のない突起をこすり上げる。
 首をひねるようにして後ろを向かされ、ケンジ君と唇が重ねられる。
 まわされた腕がへその辺りに巻きついて、おれの腰を引き寄せて。そうすれ
ば、ハルキが取り戻すようにおれの首へと歯を立てる。
 もっと。
 振りだけじゃなくて、噛んでいいのに。
 歯形を、残せばいいのに。おれが涙をにじませて、痛いからもう、と懇願す
るくらいに力を込めればいいのに。痛いからもう離せ、と。
「チバ君……?」
 くちづけの途中で笑ったのが気になったらしい、ケンジ君が不思議そうな声
で聞く。なんでもない、と答えて。
 こんなに胸が痛むからもう離せ、と懇願しても、あの黒く細長い男はにやり
と笑うだけで今でもけして離してくれないんだな、と思って。
 きっと今夜も、おれはアベ君の夢を見る。
 まだ夜の明け切らないうちから、それは確信としてある。
 今夜も、アベ君は夢でおれを鳴かすだろう。
 それはもう、間違えようのない確信として。おれは知っている。
0216202続き2013/12/14(土) 21:51:55.630
 誰にも真似できないやり方で、誰にも似てないやり方で、おれの肌に刻まれ
るアベ君の影を。死ぬまでそれを引きずっていくだろう、自分を。
「――早く、滅茶苦茶に、しろよ」
 滅茶苦茶にして、夢の中に沈めて。夢の中で、アベ君が目を細めて笑うよう
に。ほら、オレ以外の男じゃダメなんだろう、と言ってくれるように。
「早、く……、」
 ケンジ君の手が移動しておれの肩から包み込むようにして抱きしめた。ハル
キが唇を奪い返すためにおれの顎に指を沿わせる。そっと、顔を向けさせられ
て。
 おれは再び瞼を閉じる。
 ここにない手を、指を、体温を、肌を、匂いを、そのすべてを強く思いなが
ら。目の前の男ふたりよりも、もっともっとその影を濃く感じながら。唇だけ
で形作る愛しい人の名は、どこにも届かないまま、明けはじめる朝へと、溶け
る。
――――――――――――――――――――――――――――――――
お、お粗末さまでした、エロくもなく壁も突き破らず、本当に
申し訳ないです・・・お目汚し、失礼いたしました・・・
0224実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/25(水) 23:35:58.280
|彡oО(ひ、久々すぎてどうしていいかわかんなくてとりあえず隠れたはいいけど、ク、クリスマス終わっちゃうじゃん)


|彡oО(…アベくん)


|ア、アベくん!≡ミ;*ノ`_ゝ´彡ノ);゚皿゚)ノうおっ!?
0225実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/26(木) 00:54:12.210
サンタクロースが死んだとか言ってるわりに、クリスマス好きだよねスットコ
イベント好きの彼女持つと大変だねアベくん
0226実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2013/12/26(木) 03:11:29.17O
イベント好きでお揃い好きでプレゼント好きなミ`_ゝ´彡


性なる夜の妄想が止まらないよ…
さくやはおたのしみでしたね
0227実況しちゃダメ流浪の民@ピンキー2014/01/01(水) 05:33:05.40I
らすへぶ密着みたら、チバがアベのギター使うしマイク使うしでハゲ萌えた。
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