から聞けばヤベェ奴だけど、勝手知っての居酒屋に長い付き合いの俺、他の客はまぁ見えるがこっちを気にしてる様子はない

10年?15年?もう少し前に聞いた、その言葉。

俺はあの時、何て言った?
覚えてる、覚えてるけど思い出したくない、胸元で鼻をすする音、もう聞きたくない

黒くてノッポのアイツに押し付けちまった感情てやつを、アイツは受け入れた感情を、もう排水溝をぐるぐる回してるだけの感情を俺は、

「…もう置いてかねぇよ」
「顔上げろ、俺の高い革ジャンでいいなら鼻拭え、もう本当にほっとけない奴だよチバは、あー学生からそうだよお前は」

胸元から引き離し、革ジャンの袖を眼前に出すと本当に鼻を付けやがった
指で目尻を拭って、頭をぐわんぐわん回してやる
チバはいたいいたいいいながら、少し笑った。

「俺はもう置いてかねぇよ、チバが向いた方向に向いてやる…要領いい俺でもやっぱ…遅れちゃうんだなぁ」

「コウジくんて、しっぱいしたパーマかけてたよね、いんもーみたいの」
「うっさいわ!」

ゲラゲラ笑って
お前も俺もこうしてマジマジ見ると歳を取ったよ