アニメ・マンガ 2018/1/3
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『エロマンガ表現史』(稀見理都/太田出版)


 近年盛んになってきたマンガ研究の流れの中で、エアポケットのように取り残されてきたのが「エロマンガ研究」だ。エロマンガ批評家・永山薫の
『エロマンガ・スタディーズ 「快楽装置」としての漫画入門』(2006年、イースト・プレス)、元コミケ代表にして美少女コミック創成期を盛り上げた立役者でもある米澤嘉博の『戦後エロマンガ史』
(2010年、青林工藝舎)など先行研究もあったが、この2冊を除けば在野の研究者が同人誌として発表する程度。浮世絵の時代から続く「エロ表現」についての研究は、長らく停滞を続けていたと言っていいだろう。

 そんな中、やはり同人活動としてエロマンガ研究、エロマンガ家へのインタビューを精力的に続けてきたのが『エロマンガ表現史』(太田出版)の著者・稀見理都だ。
2016年には評論同人から商業出版へと『エロマンガノゲンバ』(三才ブックス)で進出、そして商業出版第二弾となるのが『エロマンガ表現史』である。
一般的なマンガ表現技法からすれば突然変異、ガラパゴス的な進化を遂げた表現の数々にスポットを当てる、意欲的な一冊だ。

 第1章「おっぱい表現の変遷史」では、それ自体ならありふれたものである「おっぱい」の描かれ方について、幼年誌、少年誌での扱われ方から
ロリコンブームでの貧乳表現、そして巨乳、爆乳の誕生と、「マンガ史におけるおっぱいの歴史」を網羅的に解説。そして、そのおっぱい表現でも
エポックメイキングな発明となる、揺れる乳首がヘッドライトの光跡のように弧を描く表現「乳首残像」については第2章を使い丹念に解説していく。

 第3章ではSF・ファンタジー系の定番表現となった「触手」による攻めの誕生秘話を、“テンタクル・マスター”こと『うろつき童子』
作者・前田俊夫へのインタビューを交えて掘り下げるし、第5章、第6章ではギャグの文脈で広まっていった「アヘ顔」(絶頂時に見せる異相)、「くぱぁ」(女性器を広げる擬態語)、
「らめぇ」(絶頂を表す舌足らずなセリフ回し)について、いかに生まれ広まっていったのかを一般マンガやゲーム分野まで含めて考察している。

     ===== 後略 =====
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