2006年に起きた「秋田児童連続殺人事件」では、逮捕された畠山鈴香(逮捕時33)の”過去”についても取材が進められたことを、前回(第15回)取り上げた。
そこで彼女は20歳のときに、能代市内のラウンジでホステスとして働くも、複数の客と肉体関係を持ったことが店のママの耳に入り、途中で来なかった1カ月を含め、3〜4カ月で辞めることになったと記した。
じつは鈴香は後に、このラウンジ時代の同僚ホステスとの間で、盗難騒ぎを起こしていた。当事者の同僚ホステスは語る。
「鈴香が店を辞めてしばらく経ってから、突然うちに電話がかかってきて、『今日、遊びに行く』と言ってきたんですね。それでその日のうちに、まだ生まれて間もない娘を連れて、うちに来たんです」
この新生児の娘こそが、後に彼女が殺害することになる、ひとり娘の畠山愛梨ちゃん(仮名、死亡時9)である。
「そのとき、生まれたばかりの子供を連れてきてるわけだから、てっきり子供の話題になると思うじゃないですか、なのに鈴香はダンナの稼ぎが悪いという話と、金に困っているという話しかしないんです。おまけに赤ちゃんは“おくるみ(布)”もなく、汚れて伸びたような産着を着せられてました。オネショしてるのにオムツの替えも持ってきてないから、見かねた私がうちの子供のオムツを使って、取り替えてあげる始末でした」
わざわざ彼女の家を訪ねた鈴香だが、10〜15分くらいしか滞在はしなかったという。
「私がお茶を用意して居間に戻ってきたら、急に『帰る』って言い出して、帰っていったんです。なんか変だなと思って確認したら、うちの大事なものをしまっておく場所に置いていた3万円のうち、2万円くらいがなくなってるんですよ。もう、鈴香がやったとしか考えられないじゃないですか。だからすぐ彼女の実家に電話をかけると、鈴香本人が出たんですけど、絶対におカネを盗ったとは認めない。『盗ってないよ。盗るはずないじゃん』って。そこで私が『じつはうちには隠しカメラがあって、それに写ってるだよね』と言ったところ、『ああ、盗った』ってやっと認めたんです」
そこで彼女は、知人と一緒に鈴香の実家に出向くことになった。
「鈴香はお母さんと一緒に玄関先に出てきました。その場で彼女はまた『盗ってない』って言い出し始めたんです。なので私が、『さっき自分で盗ったって認めたでしょうが』と言ったところ、やっと諦めたのか、『ああ、はい』っておカネを返したんです。横のお母さんは黙ったままで、私に対する謝罪の言葉は一言もありませんでした」
この盗難事件を起こした時期、鈴香は生命保険会社でセールスレディーの仕事に就いていた。だが、そこでも問題を起こしている。保険会社の当時の同僚は言う。
「先輩のお客さんに対して、平気で体を張った“枕営業”をかけては客を奪っていたんです。それが問題となって、1年も経たないうちに辞めています」
続いて釣具店、パチンコ店などで働くようになり、やがて犯行に至ったというのが一連の流れである。
こうした鈴香についての取材活動は、07年9月に彼女の初公判が始まってからも続く。その際に出会ったのが、鈴香を昔から知るA氏という男性だった。彼は公判中の鈴香と面会しており、そのときの様子を聞けた。
「拘置所の鈴香と面会したのは08年2月の後半です。黒くなった髪を束ね、明るい色のトレーナーを着て面会室に入ってきた鈴香と目が合うと、笑顔はなく、ちょっと涙目になっているのがわかりました。そこで私が『元気か?』と尋ねると、『うん』とだけ答えてました」
続く
以下ソース
https://friday.kodansha.co.jp/article/57411
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