戸叶和男『日本奇習紀行』

 いつの時代も男と女というものは、お互いの欲望のままに相手を欲するもので、そうした人々が持つ情念にも似た強い想いは、時として実におかしな行為を生み出すものである。

「そう、あそこの山のところに、集落が見えるだろ。あそことここいらとはね、昔から仲が悪くてね。今でも道ですれ違ったって、挨拶すらしやしないぐらい。昔はもっとひどいもんだからね、それはもう、大変だったんだよ」

 近くにある集落との長い敵対状態についてそう語るのは、自身が生まれ育った中国地方のとある地域で今なお暮らす農業・井上道夫さん(仮名。81)。井上さんの話によれば、彼らの住むその集落・Aと、ちょうど隣り合うように位置する別の集落・Bとの間では、農業用水の利用を巡る形で争いが起き、それ以来、数百年にも渡って、険悪な状態が続いているのだという。しかし、そうは言ってもあくまでそれは「村単位」でのこと。個人レベルで考えれば、表向きは敵対しつつも、その実、水面下で愛情を育んでいた男女も少なからずいたという。

「そうね、一応はそういう関係なものだから、あそこの連中とこっちの連中でくっつくなんていうことは絶対に認められないのよ。けれども、田舎なもんで、学校やなんかは同じところに通うものだからね、どうしても顔を合わせていくうちに、惹かれあっちまうだなんていうことはあるわけ。でも、大っぴらに会うことなんてできやしないもんだから、みんな闇夜に紛れてこっそりと逢引きしたもんさ」

 敵対する村に住む者同士でありながらも、惹かれあう男と女。そんな彼らは、表向きは敵対しているかのように装いつつも、ほかの村人たちの目を盗んでは、互いの村の境界付近にある雑木林で密会し、逢瀬を重ねていたという。無論、それが露見すれば、お互いに制裁を食らうこととなるが、その実、井上さんの話によると、こうした逢引きについては、たとえ気づいていたとしても、黙認していたというのが実情なのだという。

「そりゃあね、建前としては敵味方の関係であってもだよ、人を好くことを止めるなんざ無粋だしね。それに第一、そういう連中が逢引きする場所もわかってるわけだから、こっそり覗いたりっていう楽しみもあるわけでね(苦笑)」

 ロミオとジュリエットよろしく、敵対関係にありながらも惹かれあう男女の情事を、「覗き見できる」というメリットからなのか、黙認していたという両村の人々。スマホやSNSで何でもすぐに筒抜けになり、無関係な人々まで巻き込む形で大騒動となりがちな現代に比べると、ある意味、牧歌的な良さが感じられるともいえそうだ。

以下ソース
https://tocana.jp/2019/09/post_112927_entry.html

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