天皇の前で万歳する安倍首相(写真/dpa=時事)
天皇の即位は日本国民だけの行事、という時代は終わった。今回の即位の礼には世界各国のメディアから取材が殺到し、インターネットで生中継されるなど、世界的な一大イベントへと様変わりしたのだ。では、海外ではどのように伝えられたのか──。
10月22日に執り行なわれた「即位礼正殿の儀(即位の礼)」には、イギリスのチャールズ皇太子やミャンマーのアウン・サン・スー・チー国家最高顧問をはじめ、191の国と国際機関などの代表らが参列した。
その様子は、世界中のメディアで一斉に報じられた。英BBCは「日本の天皇が古式ゆかしく即位を宣言」と電子版のトップニュースで伝え、米CNNも「各国からの賓客が参列」と特集した。
仏紙フィガロは、天皇を前に安倍首相の音頭で行なわれた万歳三唱について、「“万歳”とは1万年を意味し、天皇の健康長寿を願うものだ」と説明。英紙ガーディアンは「徳仁天皇の即位は、令和(美しい調和)という彼の治世が皇室を穏やかな近代化の時代に導くものとして期待されている。オックスフォード大学で2年間過ごし、テムズ川の古代海上輸送を研究した君主は、皇室を一般の人々に近づけるために尽力した明仁天皇の努力を継続すると示唆していた」とした。欧米メディアは、天皇即位について歓迎ムード一色だった。
ドイツ出身のコラムニスト、サンドラ・ヘフェリン氏は、即位の礼についてこう感想を述べた。
「今は王族のいないドイツでも、国民は長い歴史を持つ王室に憧れがあり、日本の皇室にも敬意を抱いています。今回の儀式は、日本国内だけではなく、世界各国にも日本の伝統文化が長い歴史に支えられているものだと印象付けた。
一方で、昭和、平成、令和と時代を経るごとに絵天皇のお言葉がだんだんと国民の言葉遣いに近いものに変わってきているのは、ヨーロッパでもスペインやオランダの王室が国民との距離を近づけようとさまざまな取り組みをしているのに似たものを感じます」
この4月30日に上皇・上皇后が退位して以降、海外メディアで改めてその長年の取り組みを評価する記事が相次いだ。英BBC(4月30日)はこう伝えている。
「戦後日本の国際社会における評価を再度高めることに努めてきたのが明仁天皇である。それまでの天皇は大衆と触れ合うことは稀であった。しかし、明仁天皇は天皇の役割を再定義し、国民への同情や慈しみの心で知られるようになった。皇位継承から2年後の1991年には、それまでの規範を破り、長崎の噴火被災者たちに跪いて話しかけられた。また明仁天皇は非公式の大使として海外へも幅広く訪問し続けた」
米NBC(4月30日)も以下のように伝えた。
「30年にわたる明仁天皇の在位中、日本の戦後の発展は継続し、2020年の五輪開催国にも選ばれた。しかし、1990年代には金融危機や重大な自然災害など苦難にも見舞われた。明仁天皇は皇室と国民の距離を縮め、日本が抱える戦後の傷を癒すことに尽力したことで尊敬を集めている。今年1月に皇居で行なわれた新年一般参賀に平成最多の参賀者が集まったことも、人気の表われだ」
オーストラリアのテレビ局・ABC(4月30日)は、「明仁天皇は、民間から初めて天皇家に嫁ぎ、60年共に歩んだ美智子皇后と共に、和解と平和、民主主義の象徴として積極的な役割を果たした」と功績を称えている。
アメリカにおける近現代天皇制研究の第一人者で、『国民の天皇』『天皇論「日米激突」』(共著)などの著書がある米ポートランド州立大学教授のケネス・ルオフ氏は、今回の退位によって、世界の天皇に対する見方が変化したと指摘する。
「海外の人々は常に日本に興味をもっているわけではなく、たまに報じられる日本のニュースを見て、情報をアップデートする程度です。そのため海外では依然として“第二次大戦中の天皇”だった昭和天皇にまつわる負のイメージが根強かった。
続く
以下ソース
https://www.news-postseven.com/archives/20191028_1475880.html
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