ウクライナを侵略し、民間人の殺害や凌辱など残虐行為を繰り返すロシア。もはやプーチン大統領の「戦争犯罪」は、法で裁かなければ収まりがつかない状態だ。

ウクライナと西側諸国は足並みをそろえ、ロシアのスパイ網を分断して諜報能力を奪い、国内の不満分子を動かしてプーチン氏の身柄を拘束したうえ、特別法廷に引きずり出すシナリオを練っている。

ウクライナの首都キーウ(キエフ)近郊のブチャで、民間人とみられる400人以上の遺体が見つかったほか、東部マリウポリなど各地で虐殺が起きている。住民の避難場所となっていた劇場や赤十字マークを掲げた病院も、ミサイル攻撃などで甚大な被害を受けており、こうした行為はいずれも戦争犯罪に当たる。

ほかにも各地で大量の民間人が殺害されているため、ジェノサイド(民族大量虐殺)に認定されることも考えられる。そもそも他国を武力で侵略すること自体が犯罪で、ロシアの最高指導者として旗を振ったプーチン氏が、容疑者となる可能性は極めて高い。

ロシアの戦争犯罪については、オランダのハーグにある国際刑事裁判所(ICC)が捜査を開始した。ICCの検察官がプーチン氏やロシア軍幹部らの逮捕状を請求し、起訴することも可能だが、量刑には死刑がなく最高刑は終身刑だ。

だが、ロシアはICCに加盟しておらず、現状では逮捕状を持ってロシアに乗り込むことはできない。

「プーチン氏がICC加盟国を訪問した際に、身柄を確保するというのも現実味に乏しく、プーチン体制が盤石である限り、逮捕は難しいのが実情です」(安全保障アナリスト)

つまり、法の裁きを受けさせるにはプーチン体制を内部崩壊させ、プーチン氏の身柄を引き渡すように仕向ける必要があるということだが、ここで気になる動きがある。ウクライナ軍情報部は3月28日、ツイッターで「欧州での犯罪活動に関与したFSB(ロシア連邦保安庁)職員リスト」を公表した。

FSBは、対外的な諜報活動を行う組織で、旧ソ連時代のKGB(国家保安委員会)の流れを汲んでおり、世界各国にスパイ網を張り巡らせ、現地で協力者を仕立て上げて情報を引き出してきた。ウクライナ侵攻でも情報収集のほか、戦闘活動にも参加して、市民に対する残虐行為を主導しているとの指摘もある。

ウクライナ軍がインターネット上に公開したリストには、ロシアのエージェント620人の名前、生年月日、電話番号、パスポート番号などが掲載されている。エージェントのリスト流出といえば、スパイ映画の『007』シリーズや『ミッション:インポッシブル』シリーズでもおなじみだが、これだけ具体的な情報がさらされたことは、ロシアのスパイ活動にとって致命傷に等しい。

欧州各国は早々に動きを見せており、スパイリストが公表された翌日の3月29日には、ベルギーがブリュッセルのロシア大使館とアントワープの総領事館の職員計21人に、2週間以内の出国を要請した。続いてオランダも、スパイ活動への関与が疑われるロシア人外交官17人を追放すると発表。さらにはアイルランドが4人、チェコも1人の外交官をそれぞれ国外追放としている。

4月に入るとイタリアが30人、ドイツが40人、フランスが35人の追放を決定。デンマークとスウェーデン、スペインも追放を決めた。リストの公表に先行してエストニア、ラトビア、リトアニアのバルト3国やブルガリア、スロバキアも追放しており、約150人のロシア人外交官が赴任先を追われることになった。

スパイが外交官の立場で各国に入り込んでいるのは、公然の事実。日本でも2020年、ソフトバンクの機密情報を元社員が不正に漏洩させた事件で、警視庁は事件後に帰国した在日ロシア通商代表部の元代表代理を書類送検している。この元代表代理はFSBとは別のスパイ組織、ロシア対外情報庁(SVR)に所属しているとみられる。

続く

以下ソース
https://weekly-jitsuwa.jp/archives/58187

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