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 アメンホテプ4世は、古代エジプト第18王朝のファラオである。それまで行なわれていたアメン=ラーを中心に据えた多神教信仰を、唯一神アトン(アテン) を信仰する世界初と言われる一神教へ移行するという宗教の大改革を実施したことで知られ、「異端の王」の異名も持つ。妻は古代エジプト三大美女の一人であるネフェルティティであり、またツタンカーメンの父親とは彼のことである。名称については「アクエンアテン」「イクナートン」などとも表記される。

 彼の実施した宗教改革は、芸術面にも大きな影響と与えた。「 アマルナ美術」と呼ばれるこの様式は、その彼の時代の前後にあった伝統的な美術様式の時代からは例外的な期間と言われるほどに特徴的であったと言われており、我々が目にする「ネフェルティティの胸像」や「ツタンカーメンの黄金のマスク」はこのアマルナ美術の代表作として残っている。しかしながら、彼の宗教改革はあまりに急激であったために反発が大きく、彼亡き後は元の伝統的なエジプトの信仰や文化に戻されてしまい、改革は失敗に終わってしまった。

 古代エジプトの中でも特殊な存在感を放つアメンホテプ4世であるが、ある説によると、現在に残る肖像画や彫像あるいは壁画から見て彼の身体には奇妙な 特徴が見られるという。その姿は、顎が非常にとがっていて顔が細長く見え、指や後頭部も異様に長く伸びており、また腰と腹部そして胸部の隆起といった女性の特徴を捉えたような特異的な脂肪の付き方をしている。

 こうした、肉体造形の異質さから「アメンホテプ4世は両性具有だったのではないか」という説や、 あるいはその特徴的な頭部や手指から「異星人だったのではないか」といった説も飛び出した。

 こうした奇妙な身体として描かれている由来については一つに疾病・疾患説があげられた。この説は、遺伝性疾患によってこのような肉体になったというものである。これについては、ツタンカーメンがホルモン異常による「女体化」 に悩まされていたのではないかという史料研究が存在しており、 祖先の何人かもこの症状に苦しみ、またツタンカーメン自身が生涯杖をついていたほどの怪我を足に負 ったのも、この先天的な病気による可能性があるというのだ。彼の父親であるアメンホテプ4世も同様の症状であったことが、ここから考えられるというのである。

 一方、これとは別に宗教的価値観からきているものであるという推測もな されている。前述したように、彼は一神教という新しい信仰形態を創り出し、またそれによって自身の権威を共に強めようとしていた。史料において彼の体が男性でも女性でもないような姿にされたのは、創造神アテンになぞらえようとしたものでありそれは彼が「 アテンに愛される者」を意味するアクエンアテンという名に改名した事情からもその意図 が読み取れるという。自身が神のように崇められることを望んだために、そうした特異的な姿で描かれたのではないかという説は、充分に考えうることである。

 現に、アメンホテプ4世の遺体を医療用スキャナーで分析したという報告によれば、疾患らしき異常は見受けられなかったというのだ。ただし、彼のミイラが納められていた棺は発見時すでに破壊されており、その影響でミイラの保存状態は悪かったようである。そのせいもあり、アメンホテプ4世は30歳余りという若さで亡くなっているが正確な死因についても今はまだ謎となっている。

【文 ナオキ・コムロ】

以下ソース
https://tocana.jp/2024/02/post_261482_entry.html