目を丸くする杏寿郎に、ホテルマンは穏やかな微笑を浮かべたまま口を開いた。
「素山様よりお預かりしております。あと伝言も」
「へ?」
「『鍵を部屋に置き忘れるくらいはいいですが、約束の時間は忘れないように』とのことです」
「はは・・・」
伯治からの伝言に決まり悪げに頭を掻く杏寿郎にキーを渡すと、ホテルマンはすっと流れるような動作で杏寿郎に名刺を差し出してきた。
「当ホテルのコンシェルジュ、産屋敷と申します」
優しい面立ちをした男はそう自己紹介をして杏寿郎ににこりと笑いかけてきた。
「素山様の滞在中、お世話を任されている者です。何か有れば、私の方に申しつけくださいませ」
「あ、俺は煉獄です。一週間ぐらいここにいる予定なので、よろしくお願いします」
軽く会釈をする産屋敷につられるように慌てて杏寿郎が頭を下げれば、産屋敷は苦笑しながら「こちらこそ」と優しい口調で言った。
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